読書メモ 「新装版 花田少年史 1」
「新装版 花田少年史 1」
一色まこと 著
講談社 2015年
ふだんあまりマンガを読まない私だが、そんな私でもお気に入りのマンガがいくつかある。なかでも『花田少年史』は私と、そして亡くなったダンナが大好きなマンガだ。
最初に見たのはアニメだった。ある晩、ダンナとテレビを見ていて始まったのが『花田少年史』だった。いや、ダンナが放映を先に知っていて、一緒に見ようと誘ってくれたのかもしれない。きっとそうだ。まだ子どもたちが生まれる前だったと思う。バックストリート・ボーイズによる主題歌がなぜか似合っていた。
いつもは一致しない意見が、めずらしく一致した。テレビの前で二人してボロボロ泣いた。原作のコミックスを買ったのはいつのことだったか…もう忘れてしまった。
読みなおして感じたのは、これは主人公花田一路と成仏できずにいる幽霊たちの物語であると同時に、実は「遺された者たち」の物語でもある、ということだ。吉川のバアちゃん、清司、ジロ、新ちゃんの両親、柳原タツ。そんな遺された者と死す者のはざまで奮闘するのが一路だ。
驚くなかれ。この一路坊、抗がん剤治療にむけ「決意表明」と頭を丸めたダンナにソックリなのだ。少年時代の悪ガキっぷり、そしてなにやら霊感があったらしいところも、なんだか似ている。今となってはこの作品になにか因縁めいたものを、私は感じるのだ。
令和のいま、忘れ去られつつある昭和の情景に懐かしくなる人も多いだろう。読めば笑いと涙がとめどなく溢れ出てくる名作だ。