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ピアノの音と言語体系〜技は文化に行き着く〜

年に1〜2回程度、ピアノの調律をしてもらっています。

ウチでピアノを弾くのは主に末っ子。私は聴くの専門です笑

年1〜2回の調律ですが、音がどんどん変わっていく様子は、素人の私が側で聴いていても大変面白い。

以前、うちに来てくださっている調律師さんの話をしました。

今回は、各国の母音・子音の話を伺ったのですが、面白かったので紹介したいと思います。

音の性質と言語

調律の先生(仮にO先生としましょう)がよく話題にされるのは、日本とヨーロッパ(ここでは主にドイツ、フランス)での音の捉え方の違いです。

ヨーロッパでは音は天に向けて発せられ、放物線を描いていくのが好まれるそうです。日本では、逆。地面を向いて発せられ、弧を描いて上に上がっていく。

以前にあるピアニストからも、この話を聞いたことがありました。なぜそんな違いが出てくるかと言えば、「演奏する建物の構造の違いではないか」とその方はおっしゃっていました。

ヨーロッパでは、もともと教会のような天井の高いところで演奏されていたため、よく響くふくよかな音が好まれたと。

日本では、天井はそんなに高くない。むしろ地面に響くものが好まれるため、倍音を感じることはあまりない。

O先生曰く、「まぁそれもあるとは思いますが、大きな理由はその言語体系から来ているのでは」とのこと。

*ドイツ、フランス、英語はインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派、イタリア語は同語族イタリック語派に属するそうです(Wikipediaより)

発話の違い:母音と子音

例えば、日本語やイタリア語は母音をはっきり発話します。なので、日本人はイタリア歌曲とか、イタリアのピアノ(ファツィオリのような)が好きだと。

両者の違いは、日本人は下向き加減でボソボソ話すが、イタリア人は大きな口を開けてはっきりと話すというようなことらしいです。(気候や風土の違いでしょうか?)

それに対して、フランス語やドイツ語のようなゲルマン語派は子音が強い。子音を響かせることを大切にするから、倍音、響きを大切にする文化になったんだと。響きがわかりやすい、天井の高い建物はむしろそちらから来ているのかもしれません。

言語体系が、楽器作りから建物の造りにまで影響があるとは。

またその言語体系も、気候風土などに由来する、身体の捉え方といった感覚的なものが大きく影響しているものと思われます。

音は見える

「音のことなら大体のことはわかります。例えば、音がどう響き、どう共鳴しているかとか。音は見えますから」というO先生。

今回も、「一音だけ同じ部屋の中にあるドラムセットのシンバルに共鳴している」とおっしゃいまして。

確かに、その音だけ、音がシンバル側からしか聴こえないんです。

「なぜなのかはわからないんです。多分、湿気の具合なんかにもよるのでしょうね。季節が変われば、変わると思いますよ」とのこと。

技は文化に行き着く

ひとしきりお話を聞いた後に、「先生、お弟子さんは取らないんですか?」と聞いたら、「今はいませんが、過去にはいましたよ」とのこと。

そのお弟子さんは今はニューヨークのスタインウェイで勤務されているそううです。

むむ。やはりO先生、只者ではない...。

その道を極めている人は、例えばO先生なら調律を切り口とし、それを深めようとすればするほど、文化を深く探究せざるを得なくなるのだと思います。

技、技術は、人間から端を発しているわけですから、文化に行き着くのは当然なのかもしれませんが、極めた方の話は、説得力が違います。

普段の私たちの生活からは、空想もつかないようなエピソード。今回もいい勉強になりました。













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