カナダ全国で合法化されている大麻について知っておきたい8つのポイント

今回は、2018年10月17日にカナダ全土で嗜好品としての使用が合法化された大麻（マリファナ）についてです。

日本で”大麻”というと、覚醒剤や麻薬と同じで、薬物乱用防止の対象として『絶対にダメ！』なものとして認識されています。
一方、カナダでは？というと、嗜好品としての大麻が合法化されてからは、タバコやアルコールと同じといったイメージを持っている気がします。

カナダは、日本からの留学先として人気であることから、日本の若者もカナダで大麻と出会うことがあることが想定されます。

そんな時、どのような作用があるのか？なぜ使用しない方が良いのか？どんなところに注意する必要があるのか？これらのことについて、しっかりと理解した上で向き合ってもらいたいと思います。
合法化されている国が少ないからこそ、これらの知識を正しく持つことは重要だと考えています。

１．大麻は英語で何という？

一般的には、”Marijuana”や"Cannnabis"と呼ばれ、大麻専門店などにはこれらの単語があるので、すぐに分かるはずです。
一方で、俗称で使われるのは、"Pot"や"Weed"という単語です。会話ではこちらの方がよく使われます。

以下の会話は、先日見た医療ドキュメンタリーの番組の、病院での初回カウンセリングでの一幕です。

医師：「Do you smoke?」（タバコは吸いますか？）
患者：「No」（いいえ）
医師：「Do you drink alcohol?」（お酒は飲みますか？）
患者：「No」（いいえ）
医師：「Do you smoke pot?」（大麻は吸いますか？）
患者：「Yes, but not as much as before」（はい、でも前ほどはやってないよ）

これが、欧米での日常的なカウンセリング現場なのかもしれません。
日本では、これで即通報⇒逮捕となりますが、こちらでは認識が違うことを理解しなければなりません。

日本では、医療・嗜好品共に大麻の使用・保持は違法で、認められていませんが、カナダでは医療大麻は2001年から、嗜好用大麻は2018年からカナダ全土で合法化されています。

２．そもそも、なぜ合法化したの？

・大麻への若者のアクセスを制限すること
・若者に大麻の使用を奨励するような宣伝の禁止
・大麻を違法に輸出入するものへの重大な刑事罰

理由は、上記のようなもので、すでに違法に出回っている違法薬物の規制をしっかりとするためにも、法律として区切りをつけるためと考えられます。

３．どのように売られているか？

大麻は、現在さまざまな形で専門店でのみ売られています。
また、大麻の売買、生産、研究には国の許可が必要です。

・Edible cannabis：食用大麻
⇒ブラウニーや飲料物などに、大麻抽出物を含んだ食品や飲み物
・Cannabis extracts：大麻抽出物
⇒オイル、固形物、ワックス、チンキ剤などの液体または個体の状態の濃縮物
・Cannabis topicals：大麻トピックス
⇒局所的な効果を目的とした、髪、皮膚、爪などに塗布することを目的とした大麻抽出物が含まれたローション、クリーム、オイルなどの製品

これらは専門店でのみ販売されており、法律のもとで定められた製品ラベルを貼ることが義務付けられています。
ただし、知らないうちに摂取しているということがないように、注意が必要です。見ず知らずの人から勧められたり、仲良くなった人でも少しでも怪しいと感じることがあれば、自ら「NO」と言いましょう。

４．誰でも買えるの？

いいえ。カナダの大麻法により、18歳未満の若者に大麻を販売または提供することが禁じられています。
しかし、カナダは、州によって様々な法律が変わるため、それぞれの州または準州の法律のもとで成人と定められる18歳または19歳以上のものが、定められた量を個人的な使用の目的のために所持できます。ただし、禁止事項に違反した場合は、罰金、懲役刑などにより厳しく罰せられます。

５．どのような作用があるの？

大麻には、主成分であるTetrahydrocannabinol（THC：テトラヒドロカンナビノール）やCannabichromene（CBC：カンナビクロメン）と呼ばれる成分などが含まれています。
CBCはTHCの影響の一部を軽減する可能性が示唆されていますが、これらは両成分とも脳に影響を与えることも知られています。

《THCの即時的な使用》により
①眠気、注意力の低下、身体の反応が遅くなる
②思考力・記憶力・集中力の低下、意思決定をする力の低下
③多幸感（ハイになる）、不安、パニック、まれに本当のことが分からない、妄想、思考の混乱、幻覚を見るなど
の症状が現れることがある。

《THCの長期的な使用》により
①肺を傷つけ、呼吸が困難になる（喫煙した場合、タバコの煙と同じ有害な化学物質が多く含まれる）
②メンタルヘルスに影響を与え、大麻依存症のリスクが高まる。
③不安神経障害や、うつ病を発症または悪化させるリスクが高まる。
の症状が現れることがある。

早くて摂取より2時間、完全に作用するには4時間、持続するのは長くて24時間までと言われています。日常的に吸い続けると、薬物依存や不安やうつ症状が顕著に現れ、それ以上吸い続けると、医師の診察が必要になる悪影響を示す可能性があり、もちろん、長期の使用は、大麻依存症や中毒となることがあります。

６．未成年者・若年者への影響は？

脳に影響を与えます。カナダ政府の公式のページでは、若年層への使用への注意喚起として以下の文を掲載しており、合法的に使用できる年齢であっても、使用しない方が良い事を示しています。

Cannabis affects the same biological system in the brain that is responsible for brain development.
（大麻は、脳の発達に関与するのと同じ生物学的システムに影響を与えます。）
Youth and young adults are more likely to experience harms from cannabis because their brains develop until about age 25. The earlier you start consuming cannabis, the more harm it can do.（脳は約25歳まで発達するため、青年および若年成人は大麻による害を受ける可能性が高くなります。大麻を若いうちから使用し始めると、大麻はより多くの害を及ぼす可能性があります。）

《引用：Chadwick B, Miller ML, Hurd YL. Cannabis use during adolescent development: Susceptibility to psychiatric illness. Front Psychiatry 2013 Oct 14;4:129.》

７．妊娠中や授乳中の使用は？

使用は避けるべき。大麻に含まれる成分は、母から子へ移行し、胎児や新生児に害を及ぼす可能性があります。

８．日本帰国時に持っていける？

いいえ。大麻および大麻を含む製品（CBCを含む製品）をカナダの国境を超えて輸送することは違法であす。
カナダの大麻法（The Cannabis Act）により、医療目的または科学目的以外の目的での大麻の輸出または輸入は完全に禁止されています。

医療大麻であっても、大麻が合法化されている国・地域からカナダへ持ちこむ場合も、必ずカナダ国境庁サービス（Canada Border Services Agency:CBSA）へ申告する義務がある。
また、世界中のほとんどの国は大麻の所持・使用は違法であるので、所持や使用は厳しく罰される可能性が高い。

《まとめ》

以上、カナダでの大麻事情についてでした。
私は3年前にカナダに留学していましたが、今回戻ってきて、大麻専門店が増えたことに衝撃を受けました。
将来、カナダで薬剤師として働く上で、きっと医療用大麻の処方を見ることもあるだろうし、患者さんに大麻のことを聞かれる、説明しなければいけない場面も出てくると思います。そんな時に知識として必要になってくるかと思います。常に知識はUp dateしていきたいものです。

引用：公式カナダ政府　大麻について（英語）
（2020.10時点）