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恋愛と性愛の混同に反対する理由――”見えない”ではなく”見られない”ロマンティック・アセクシャル

 日本SRGM連盟の代表をさせていただいている、アセクシャル当事者の日野です。

 かつて、日本SRGM連盟は「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である」という声明を出しました。

 この声明は一時期はWikipediaでも紹介されていましたが、今は削除されています。Wikipediaの「恋愛的指向」の記事のノート部分を見ると、次のような理由であるそうです。

恋愛的魅力を感じる性別を「性的指向」とする定義が多数意見、「恋愛的指向」とする定義が少数意見であるため、「恋愛的指向」を自明視する記述は中立性を欠く
「性的指向とは,人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念」(法務省[1])"Sexual orientation | An inherent or immutable enduring emotional, romantic or sexual attraction to other people" (Human Right Campaign[2]) "Sexual orientation refers to an enduring pattern of emotional, romantic and/or sexual attractions to men, women or both sexes" (American Psychological Association[3])(強調は引用者)とあり、著名な団体では恋愛的魅力を感じる性別を「性的指向」に含むと定義しています。

 要するに、「著名な団体」は性的指向に恋愛も含めている、それが「多数意見」である、「少数意見」をWikipediaに掲載するべきではない、という事だそうです。

 ここでわざわざ法務省の見解を出していることには、思わず笑ってしまいました。まさにその法務省の見解に問題があると日本SRGM連盟は訴えている訳ですから。

 これを読んで「あれ?性的指向と恋愛指向を区別している団体は海外には多数あるのに、なんで少数派扱いされているの?」と思いましたが、確かに日本では日本SRGM連盟以外に恋愛と性愛の区別を求めている団体は少ないようです。

 ちなみに、性的指向と恋愛指向とを区別している海外の団体の例を挙げておきます。

 AVENはアセクシャルのコミュニティでは世界最大の団体なのですが、これが「著名な団体」ではない、と言われてしまったら、アセクシャル当事者には実質的に発言権が無いことになってしまいます。

 一人のアセクシャル当事者として、このようなWikipediaのやり方には驚きましたが、これが彼らにとっての「客観的」な記述なのでしょう。マジョリティとマイノリティの間の権力差が如実に表れています。

 私はロマンティック・アセクシャルで、恋愛感情は抱いても性愛感情は抱きません。と言うよりも、単なる生理現象がどうして「愛」という精神的・スピリチュアル的な感情と結びつくのか、私には一ミリも理解できません。

 しかし、私は極端な例かも知れませんが、マジョリティの人も本当は性愛と恋愛とが全く異なる概念であることを知っているはずなのです。

 本当に恋愛と性愛が同じであれば、「セックスレスのカップルには愛情が無い」とか「風俗嬢はモテまくっている」とか「買春男には愛情がある」とかいう話になってしまいます。そんなバカなこと、ある訳がありません。

 これは「見えない」ことではなく「見られない」ことが問題なのです。

  かつて、私がアセクシャルだと知った方からこんなコメントが来たことがありました。

「まだ若いのにアセクシャルだと決めつけない方がいい。これから出会いがあるよ。」

 いやいやいや、私は恋人がいたこともあるし、若い健康な男子だし、「これから」っていつだよ、爺さんになった後で性行為をしたがるとか言うんじゃないだろうなぁ、とツッコみたくなったものです。

 無論、アセクシャルを「モテない男の言い訳」扱いしてくる方もいます。

 ええ、確かに、私はモテません。だけど、恋人がいたことはあるんですよね。

 もっと言うと、「モテない=童貞」と言う訳では無いんですよ。軽い女性も少なくないですし(逆に性行為を忌避するる女性がリベラル派からバッシングされる)、どんなに強引に性行為をしても任意同行レベルの「同意」で無罪になるし、風俗と言う合法的人権侵害施設まで整っているこの国は、誠に童貞卒業したい非モテには優しい国であります。

 結局、みんな性愛と恋愛の違いは判っているはずですし、ロマンティック・アセクシャルみたいな人がいることも本当は理解できるはずなんです。

 理解できるけど、しない、したくない、そんな意図を感じてしまうんですよね。

 いずれにせよ、恋人が出来ると気持ち悪い行為までしていて当然、みたいに思われるのは、心底不快です。

 私は恋人がいたこともありますが、童貞ですし、元カノも浮気していない限りは(多分していないので)別れた時点では処女です。そこら辺、元交際相手の名誉のために言っておきます。

 恋愛と性愛を混同する人は、ロマンティック・アセクシャル以外にも色々な人に人権侵害をしているのではないでしょうか?例えば、セックスレスのカップルにハラスメントをしたり、とか。

 そういうことにも繋がるので、恋愛と性愛には明確な区別が必要だと思う次第です。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。 拙い記事ではありますが、宜しければサポートをよろしくお願いします。 いただいたサポートは「日本SRGM連盟」「日本アニマルライツ連盟」の運営や「生命尊重の社会実現」のための活動費とさせていただきます。