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イノベーションの土壌を育む、ハッカソン4つの要素

最近、人材開発やイノベーション人材育成の一貫として「ハッカソン」の企画運営をご依頼いただくケースが増えてきました。
今回はこの「ハッカソン」をイノベーションの観点から説明してみたいと思います。

2010年代以降、国内でも活発に行われるようになったハッカソン。
ひとことでハッカソンと言っても多種多様ですが、私が所属している一般社団法人MAでは、非日常性要素の強いプログラムで運用しております。

この非日常性は「遊び」とも通じるところがあり、イノベーションが生まれる風土作りにつながっていると考え本稿をまとめております。
※このブログではハッカソンを「遊び」と表現する機会がありますが、所謂ふざけ遊びを意図しておりません。あらかじめカッコつきの「遊び」と表現をすることでご了解くださいますようお願いいたします。

1. 「遊び」としてのハッカソン

まずはハッカソンの非日常性を「遊び」の観点から捉えるにあたり、2人の巨匠から引用いたします。

『フロー体験とグッドビジネス』 (チクセントミハイ)
遊びは「自己目的的な活動」つまり、内発的な動機(モチベーション)において行動し、内発的な報酬(経験そのものや、それによる学びなど)に価値を置くような行動である
『ホモ・ルーデンス』 (ホイジンガ)
遊びという概念は、それ以外のあらゆる思考形式とはつねに無関係である。
遊びは「遊び」そのものとして取り扱うことが必要で、そして他の概念や対象とは独立に考察する必要がある。

これらのよると、「遊び」は内発的動機づけによって行動し、日常の業務や人間関係、年齢の序列や自分の役割から開放される事を意味します。

我々が開催するハッカソンではこの要素を多分に盛り込み、日常性から切り離し「遊びの場」として設計をするようにしております。

以下より事例をもって説明いたします。

2. ケーススタディ「D&Sハッカソン」

2020年12月に第一生命情報システム株式会社とスミセイ情報システム株式会社の2社合同「D&Sハッカソン」の開催を支援させていただきました。
※こちらのハッカソンの内容は、当日技術サポートをいただいたObnizのレポートに詳しく書いていただきましたのでそちらを御覧ください。

このハッカソンの特徴と概要は以下の通りです。
・ 2社社員によるクローズドなハッカソン
・ 業務として平日業務時間に開催
・ 新しい技術へのチャレンジと交流を目的に企画
・ 約60名が参加し、14チームが結成
・ APIからハードまで、4社のテクニカルサポートを受けた

3. ハッカソンを「遊び場」とする4つの要素

このハッカソンで取り組んだ、「遊び場」を作るための4つの要素について実例をもって紹介をいたします。

①「遊べる」マインドセットづくり
まず、参加者に「遊べる」気持ちになっていただく必要があります。

D&Sハッカソンでは、事前に機会をいただき「非日常体験を楽しもう!ハッカソンのすすめ」と題したお話をしました。
この時に使用した資料の一部を共有します。


②「遊べる」環境づくり

企業での取り組みの場合、テーマや審査基準を、業務やビジネスに近い「課題解決度」「ビジネスモデル」などに置かれがちです。
今回は「遊び」の要素を味わっていただくためにも、日常性のある課題解決やビジネス要素を排除し、クリエイティビティと完成度を競っていただくようにしました。

テーマ「ニューノーマル」
課題解決やビジネス・サービスに限らず、自分自身のニューノーマルを大胆に表現することを期待します。
審査基準
アイデア:新規性・独創性・オリジナリティ
チャレンジ:技術へのチャレンジ・こだわり
完成度:プロトタイプの完成度・出来栄え


③「遊べる」仲間づくり

その場で自由にチームを結成いただくようなチームビルディングを実施し、一緒に「遊ぶ」仲間づくりも工夫しました。
このように、普段接しない人とのコラボレーションにより日常的な役割からも開放されるため、自由なクリエイティビティが発露されるきっかけとなります。

また、業務アサインと異なり、自分で獲得した「チームメンバー」という意識は内発的動機付の向上に作用し、「遊び」へのコミットメントが一層引き出されます。
参照:自己決定理論(Deci & Ryan, 1985, 2011; Ryan & Deci, 2000)

④「遊べる」アイデアづくり
せっかくの「遊び」の機会なので、クリエイティビティを開放できるような「ひらめき」を優先するアイデア発散手法を採用し、結果約60名から362のジャストアイデアが誕生しました。

具体的には要素と要素のランダムな組み合わせによる新結合を求める「形態分析法-Morphological Analysis-(Fritz Zwicky,1945)」と呼ばれる思考法を改良した強制発想法を使用。
実際のアイデア発想のステップと、使用したツールのサンプルを添付しますのでご参考ください。
(コピー・ダウンロードし実際に触ってみてください。)

アイデア発想までの4ステップ
ステップ0:技術のインプットをメモをする(各自)
ステップ1:テーマから発想されるキーワードを洗い出す(各自)
ステップ2:ステップ2のキーワードを別の人が変換・言い換えする(各自)
ステップ3:ステップ0とステップ2のキーワードをかけ合わせ、ジャストアイデアを量産する(各自)


4. 「遊び」としてのハッカソンとイノべーションの関係

事例をもって「遊ぶ場」作りについて解説してきましたが、「遊び」としてのハッカソンから得られる経験について整理します。

「遊び」としてのハッカソンで得られる経験

①日常的役割から開放され、自由なクリエイティビティが発露される
② ひらめき・非線形思考の訓練
③ 普段接しない人物とのコラボレーションによる、新しい視点の獲得


このように、「遊び」としてのハッカソンでは、日常とは異なる視点を得る機会や、自由なクリエイティビティを発揮する機会など、非連続なイノベーションに欠かせない非日常経験が多く得られます。
また、これらの経験が、業務上の新しい気付きやひらめき、学びや創作に対する個人の動機づけの向上につながっていくのです。

ハッカソンという取り組みがそのままイノベーションを生むわけではありませんが、このような非日常経験が、イノベーションを生むための人材づくりや、土壌づくりに貢献できると言えます。

「遊び」の活動がきっかけとなって、組織の中で蓋をされていた個人の内発的モチベーションが喚起され、衝動に基づくボトムアップ型の活動を誘発することができる
なぜイノベーションに「遊び心」が必要なのか?
安斎勇樹(ミミクリデザインCEO/DONGURI CCO/東京大学大学院情報学環特任助教)

5. 説明会参加者募集中

「ハッカソン」をイノベーションの観点から説明いたしましたが、私が所属している一般社団法人MAでは、このような非日常体験を生むハッカソンの運営をサポートしております。
もし、ご興味をお持ちいただけたら説明会を開催しておりますので、以下フォームもしくは、筆者のFacebookからお気軽にお問い合わせいただけると嬉しいです。



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