【古典洋画】「赤と黒」

1954年の、スタンダール原作の文芸大作「赤と黒(Le Rouge et le Noir)」(仏・伊、クロード・オータン=ララ監督)。Amazonプライムにて。

3時間もの長丁場だけど、身分他、様々な障害をものともしない、当時のブルジョワ連中の実直な愛の強さを表した良い映画だった。

スタンダールの小説は若い頃に読んだと思うけど、全く覚えてないが、赤と黒は、コミュニストとアナキストではなくて(笑)、軍人と聖職者とも、愛と死ともいわれる。

ナポレオンを尊敬する、貧しい身分の美青年ジュリアン。
聖職者となるために、神学校で学んでる。
ある日、彼は町長レナール家の子供たちの家庭教師に雇われる。
ジュリアンは、美青年ゆえに、レナール家の夫人に好意を寄せられ、彼は世に出るために使えると算段するが、やがて、彼も真剣に夫人を愛するようになる。
夫が出かけた後に会って愛を交わす2人。
しかし、ジュリアンを好きになった召使いの女の嫉妬からの密告によって、2人の不倫は公になり、ジュリアンは神学校に戻されることに。
そして、校長によって、パリの大貴族、ラ・モール侯爵の秘書に推薦される。
ジュリアンは、ラ・モール家に滞在するが、そこの令嬢マチルダと激しい恋に落ちる。
2人の関係はラ・モール侯爵の知るところとなり、2人の結婚には身分が違うということで大反対される。
そんな折り、前のレナール夫人が、ジュリアンとの関係を反省して、教会の司祭に言われるままに、「ジュリアンは、良家の妻や娘を誘惑して、出世の踏み台としている」と手紙を書いてラ・モール侯爵に送る。
レナール夫人の裏切りに激怒したジュリアンは、故郷に帰って、教会でレナール夫人を射殺しようとするが失敗、捕えられて裁判にかけられ死刑を宣告される。
ジュリアンは死刑を運命として受け入れる…という話だ。

ひょんなことで、上流階級に出入りするようになったジュリアンだが、身分の違いと貴族への反発から、自分のスマートな容姿を使って、ブルジョワ女たちを誘惑する。誘惑といっても、自分は意識せずに女たちの注目を集めてしまうのだ。
そして、野心家の彼も愛に苦しみ、自分を見失うことになってしまう。

夫がいようが、恩師の娘だろうが躊躇なく好きになるのは、今と違って自分の感情に素直で正直だったからだろうね。倫理や道徳といった社会性も簡単にタガが外れるようだ。

結果、レナール夫人が好きだったことがわかって、彼女も夫と子供を捨てて彼の元へ来るが、彼女もジュリアンの決断を受け入れて、最期の日まで一緒に過ごす。愛の前には死の苦しみも大したことではないのだ。

激しい愛が醸し出す究極のロマンティシズム。ヴィスコンティのごとく華やかなブルジョワ貴族たちの様、気品ある言葉を使った駆け引き、紳士たちの礼節ある闘い、豪華絢爛な絵巻もののようだった。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。