「原発の教科書」

けっこう分厚い本だけど、論文を集めた硬い資料集みたいで面白くはなかった。

もう大地震によるフクイチの原発事故のことも、メディアが頻繁に報じなくなっているので、近い“過去”になりつつあるのはしょうがないとは思うけど、日本には54基もの原発があって、フクイチの事故以来、再稼働したのは、6発電所10基だが、現時点で稼働しているのは4基のみとなる。

一回作ってしまったものはしょうがない、という感じで、廃炉にするといっても、コストも大きく、何十年もかかるし、また、稼働させてないと維持コストだけで、年間1億もの金がかかるのだ。

推進派が宣伝するように、原発は決して低コストなんかではなく、維持費やメンテナンス、保安などを入れると、他の発電よりも高コストである。

そもそも、原発は、核分裂により発生する熱エネルギーで水を沸騰させて、その水蒸気でタービンを回して発電する仕組みだが、安定した電力が得られ、CO2を排出しないというメリットはあるものの、なんといっても、有害な放射性廃棄物を出すという大きなリスクを抱えるのだ。加えて、広範囲に甚大な被害をもたらすフクイチのような事故のリスクも。

廃棄物の再処理・サイクルといっても、放射能がゼロになるまでは何万年もかかるわけだから、地中に埋めたりしても、ドンドン溜まっていくだけである。原発は日本だけではないから、地球上は徐々に放射能だらけとなっていく。後は宇宙に捨てるしかないだろう。

つまり、原発は、高リスク・高コストであり、寿命は100年余りと長期的にも持続可能ではないのだ。

だったら、なぜ国も原発を推進しようとして来たのか。

やはりエネルギー資源が乏しい日本において、電力消費が上がっている環境で、電力供給の安定性と将来に備えるということだろうけど、それよりも、原子力というものに、人類の明るい未来を見てるんじゃないだろうか。破滅と裏腹であっても。

そこには、明るい未来という生産的な概念と共に、無意識的にでも、人間の根本的な破滅願望が表れているように、俺には思えてしまう。原子力は自然の贈与ではないし。

人類にとって最も大きい、神のような存在である太陽を、自分たちの手で作りコントロールして、人類は最終的に神となって滅亡するのだ。

この本に載ってる日本の核事業は、現実的な展望・将来が全く見えない絶望的なものばっかりだしね。

太陽によって生を受けた人類は、自分たちが作った太陽によって滅びていく運命にあるのだよ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。