「闇に魅入られた科学者たち」

18世紀の、死体を切り刻むイギリスのドクターから、優生学を進めたナチスの科学者、ロボトミー手術にこだわったアメリカの医者、国家ぐるみでドーピングを行った東独の医師、史上最悪の心理学実験を行った社会心理学者まで。

肉体でも心理でも、医学に関わる者であれば、自分とは、人間とは何なのか?を知りたいのは理解できる。そこに、疾病の治療や医学的好奇心以外に、多大な名声や評価への欲が加わって、倫理や社会性が失われていくと、“悪魔の人体実験”に手を出すことになる。

最初は、患者のために、だったものが、一つの実験が奏功すると、周りの批判や検証が目に入らなくなり、自分を正しいと信じて、狂気と共にこだわることになっていくのだ。

多分、人間とは、おいそれと人間自身が、隅から隅まで全てを知ることができるような安易な存在ではないはずである。人間自体も時代と共に進化しているから、人間が存在する限り、未知の部分は永遠に残り続けるのではないだろうか。

人体実験に魅せられた人々は、(いわゆる神の領域である)人間そのものを支配したいという欲望からきているのではないかとも思う。

ケネディの妹ローズマリーも受けた、後遺症を無視したウォルター・フリーマンのロボトミー手術と、“人間の行動はそれぞれの性格や気質ではなく、その人が置かれた環境によって決まる”ことを実験したフィリップ・ジンバルドーの項が興味深く読めた。

特に、被験者だけではなく、実験者のジンバルドー自身が、気付かぬうちに環境に捕らわれるようになってるのは、人間はやはり社会的存在であるということを証明してるようで、いろいろと示唆に富むね。

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションに過ぎない」byアインシュタイン


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。