【邦画】「雪国」

川端康成の代表作ともいえる「雪国」。1965(昭和40)年の、大庭秀雄監督、岩下志麻が駒子役の映画化作品。

若い頃に読んだ小説の細かい内容は忘れているが、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった…」で始まる、温泉地での、作家と芸者のロマンスだった。この映画では作家ではなく画家だね。そういや「伊豆の踊り子」も似たようなロマンスだね。

作家でも画家でも、川端自身がモデルとなっていると思うが、自分のことではないように、距離を保って、冷たく引き離すような視点は、変わらず川端康成だ。恋愛でも感情を決して表に出さない。

妻子のある画家の島村(木村功)が、越後湯沢の温泉宿で酌をする駒子に出会う。島村は、まだ16歳の純粋な駒子に惹かれる。半年に一度、休みの時に宿を訪れるうちに、駒子は自然と島村の部屋に来て深い関係になる。そして、駒子は人目をしのんで夜更けに帰って行く。芸者になった駒子は、踊りの師匠の息子が許嫁になっていた。しかし、駒子はそれを否定して、島村との逢瀬を楽しんでいた…。

結局、不倫の恋で、島村と駒子は別れることになるが、駒子は、島村が自分をただ芸者として遊んだだけのことと思い悔し涙を流す。島村は、駒子の心を知っていたが、どうしようもなかった。温泉地での熱情は温泉地だけで終わるのだ。島村は駒子に安らぎを求めて、駒子は島村に恋愛の情を求めたのだ。

揺れ動く駒子の心を写す川端文学の叙情的な世界。駒子を演じた岩下志麻はまだ24歳。カメラも彼女の美しさを執拗に追う。駒子が一際美しいからこそ、後の悲劇が成り立つ。島村という存在は、駒子のためにあるのだ。

深く余韻を残す文芸作品であった。脇役の、嫉妬する娘の加賀まりこも良い。

そういや、温泉地に来ているのに、温泉に入っているシーンがないなぁ。

脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。