【邦画】「福田村事件」

TSUTAYAでレンタルが始まった、森達也監督の「福田村事件」(2023年)。昨年、プチ・ヒットしたと思うが、やっと観れた。

大災害による不安や恐怖が起こす集団心理、人間が持つ負の側面の恐ろしさを描き、理不尽なことばかりが起こって、徹底的に暗い作品だ。

森監督らしく、ジャーナリズム(千葉日日新聞)の役割にも焦点が当てられるけど、期待したほどではなかった。

俺には、やっぱり原作の書籍の方が良かったね。森監督のイデオロギーみたいなものも感じてしまったし。森達也さんはこれまで素晴らしいドキュメンタリー・フィルムをたくさん創って来たと思うけど。

最後の虐殺のシーンは、さすがに衝撃的で、理不尽に殺される行商の日本人に同情し、自警団らに対して怒りが込み上げては来たけど、初監督作品だとしても、各プロットで描き方が足りないというか、もっと焦点を絞っても良かったのでは?とも思うね。関東大震災も、なんかちゃちいし。

森監督が描きたかったのは、弱者や異質な者に対する差別・偏見の連鎖ではないだろうか?森監督の創作だけど、ハンセン病のために、隠れて橋の下で生きる者たちに、行商人が騙して薬を売る。「ワシらみたいなもんは、もっと弱いもんから銭取り上げんと生きていけんのじゃ。悲しいの」と言うし。

被差別者が、さらに下の弱者に対して差別をする。差別・排外を行うことで、共同体の中にアイデンティティを見出すのだ。秩序を守る、村を守る、日本を守るという大義名分の下に。

福田村事件は100年も前の悲しい出来事であるが、今だに災害の度に「外国人の窃盗団が暗躍してる」などの流言飛語が、ネット上で飛び交う(しかも当事者ではない者から)から、遺伝子レベルで、そういう愉快犯の気質が残ってるのではないかと思ってしまうね。

人間誰しも、異質な者を受け入れ難い素質はあるもので、攻撃はダメでも、批判はしても良いと思うが、その前に、せめて相手を深く理解しようよ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。