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「ザ・バニシングー消失ー」
「ザ・バニシングー消失ー」(88年・オランダ・フランス合作、ジョルジュ・シュルイツァー監督)。
サイコ・サスペンスなのだが、さすがオランダで作品賞を貰っただけあって、なんとも不気味な映画だ。
休暇でフランスの別荘地に向かうオランダ人のレックスとサスキアの夫婦。途中、立ち寄ったドライブ・インでサスキアが突然、姿を消す。以来3年間も行方知れずで、新しい恋人を得ながらも、TV等に出演して彼女の行方を捜し続けるレックス。そのレックスにある日、犯人らしき人物から手紙が届く…。
何が不気味って、この映画は単に誘拐犯を追うようなものじゃなく、後半は視点が犯人に移って、犯人の思惑通りに被害者自ら睡眠薬を飲むように仕向けられてしまうという展開にある。せっかく出会えたのに、憎むべき誘拐犯の手法に乗ってしまうのだ。
また、犯人がレイモンという妻子持ちの大学教授(!)で、自ら、反社会性パーソナリティー障害と告白して、“自分は正しい人間”ということを証明したいが故に、“殺人以上の残酷な行為”を行うこととして、女性を誘拐するというシュミレーションを続けてきたというのだ。
家庭では良きパパを演じながら、暇をみて女性を誘拐する訓練とシュミレーションを続けるレイモン。いっぱい失敗を重ねながらも、偶然、出会ったサスキアの誘拐に成功する。この人間臭さが不気味さに拍車をかけている。
睡眠薬を飲んでしまったレックスがハッと気付けば、もう地中の棺桶の中。いくらもがこうとも、もう遅い。サスキアも同様に殺されたのでは?と予測できるが、結局、真相はわからずだ。
クルマの中で2人っきりになったレイモンとレックスが哲学問答のような会話をして、レイモンが自分の行為を正当化していく。レックスもオカシイと感じながらも、だんだんとレイモンの術中にハマっていくのだ。この人間の心理描写はトラウマになるほど興味深いものだ。
キューブリックが「最も恐ろしい映画」と絶賛したらしいが、レイモンは普通の自分に疑問を感じて好奇心から女性を誘拐するという犯罪を犯した。一方、レックスはレイモンを憎むより先に彼女はどうなったのか?という好奇心が勝ってしまい自ら身の破滅を迎える…。監督が考えた恐ろしいこのアイデア、さすがのキューブリックも脱帽だわな。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。