「帝銀事件〜大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」

YouTube松竹公式チャンネルで公開中の、「帝銀事件〜大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」(1980)を鑑賞。

前に熊井啓監督の映画を観たが、コッチは、史実に沿ったドキュメンタリータッチの実録ドラマで、2時間以上の長丁場だけど、とても面白かった。

原作は松本清張(昔読んだ)で、監督は森崎東、脚本が新藤兼人だ。

毒物により行員ら12名を殺害した強盗殺人事件なのだが、真犯人は、確定死刑囚となった平沢貞通氏(1892〜1987)ではなくて、石井四郎中将率いる関東軍の731部隊に所属、タビナール中毒となって除隊した諏訪敬三郎軍医中佐ではないか、としている点は熊井啓監督の映画とほぼ一緒だ。

特捜として彼を追ってた刑事がいたが、道半ば、GHQの圧力で捜査を断念しているし。それで、被害者による面割り(被害者も最初は違うと言ってたが)と自供を柱に、平沢氏を犯人に仕立て上げていくのだ。

逮捕されて、最初は抵抗していたものの、徐々に狂気に陥って行く平沢氏を演じた仲谷昇の老け方と芝居は見所。多分、平沢氏本人も、犯人とされて、無理矢理、自供を作って行く理不尽さに狂気に陥るしか術はなかったのだろう。

熱演の田中邦衛の、思い込みと的を外した捜査、暴力的取り調べに冤罪の恐ろしさを感じる。

戦後の、まだ混乱が残る中で、アメリカに阿った国の利益のために、一個人の全てが犠牲になった典型的な例といえるだろう。

冤罪というのは、警察側のプライド、自尊心、矜持もあって、特に日本では覆すことが困難であるね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。