「オーウェル『1984』を漫画で読む」

若い頃に文庫で読んで、かなり衝撃を受けたジョージ・オーウェルの大傑作「1984」。

1949年に発表されたSF小説で、すでに1984年は遠い過去であるが、前に、灰色で重くて、メッチャ暗〜いイギリスの映画(1984年の公開!)も観たから、初の漫画化作品を。

マジでそのうちこんな世界が来るのだろうか?と思ったりもしたが、世界の所々で、この小説で予言したようなことがソフトに現実化してても、一応、資本主義がデストピアに勝っちゃってるね。

戦争は平和なり
自由は隷属なり
無知は力なり

漫画でも文字が多いから、簡略化した小説を読んでるようだったけど、若くして老けた様相となったウィンストン・スミスやジュリアの絵柄でもデストピアの雰囲気は伝わる。

面白い箇所はいっぱいあるが、辞書の編集で、言葉を限界まで切り詰めるってのはスゴい。単語の逆の意味しか持たない単語をなくしてしまうのだ。「良い」に対して「悪い」はいらない、「否良い」で事足りるってことだ。「良い」を強めたい場合は、「素晴らしい」「見事な」は無駄で、「加良い」「超倍良い」で済む。

主人公ウィンストンと、“ヘイト・ウィーク”で出会ったジュリアは、党に隠れて郊外で蜜月を重ねるが、「今や、純粋な愛情も純粋な性欲も、感じることなど誰にもできやしない。恐怖と憎悪が何にでも混ざり合う今、純粋な感情なんて何ひとつありはしない。ふたりの抱擁は戦いだった。絶頂は勝利だった。これは党に叩き込んだ一撃なのだ。これは政治的な行為なのだ」と悟る。

やはり、いくら管理・監視されようとも、人間の愛と欲だけはどこまでも自由を求めるということだろうか。

全体主義を支えるのは恐怖と怒り、憎しみと排外、不満と不安、とにかく人間の負の感情に悦楽を求めてしまう大衆なのだ。束ねられることを求める人間性なのだ。他人を憎むことで自らのアイデンティティを構築する愚かな人間なのだ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。