見出し画像

怒りのお作法

こんにちは。ともかです。
組織分析のご依頼を受けて適材適所の人員配置をご提案したり、コミュニケーションの研修を担当したりしています。

さて、今回は、最近のTwitter投稿の中で好評だった
怒りのお作法
を加筆修正したものになります。

怒りや短気は、「三毒」のひとつで、貧乏の種まきと言われています。
三毒とは、愚痴、貪欲(どんよく)、瞋恚(しんに)のことです。瞋恚、とは、目をむいて怒り狂う意味の仏教用語です。
話は逸れましたが、短気は損気。 怒りの感情に支配されると理性的な判断ができません。 でも、カッとなった時はどうしようもありません。 腹を立てるな、と言われても、立つもんは立つわけですから。 そんな時、私がしていることは全部で10個あります。

  1. 「私は今腹を立てている」と自覚すること

  2. 怒りの感情がわくのは、何かの合図かもしれないと考えること

  3. なぜ怒っているのかを掘り下げること

  4. 掘り下げた感情を心を込めて「伝える」こと

  5. 解決策を提示すること

  6. 相手の言い分を聞くこと

  7. 解決策の折衝をすること

  8. 解決策の実行を見届けること

  9. 実行に対して感謝すること

  10. すべて忘れること

それでは、ひとつずつ見ていきましょう♪


1.「私は今腹を立てている」と自覚すること

自覚することで、頭の片隅に理性の入ることができるすき間ができます。
ニュースで、犯罪を起こして逮捕された人の言い訳に「カッとなってやった」が非常に多いことに驚かされます。
中には計画性がないことで悪質さを誤魔化そうと思っていて言っている人もいるかもしれませんが、怒りの感情がわいた時に起きる衝動は、理性を取り戻さないと、我を忘れて常識では思いもしないことをするくらいのエネルギーをはらんでいるのでしょう。


2.怒りの感情がわくのは、何かの合図かもしれないと考えること

ご覧いただいてなんとなくおわかりいただけると思いますが、私は個人的に哲学のジャンルとして仏教を勉強しています。
仏教では、人は、今起きた感情も行動も全て神様から「させられている」と考えます。ここは賛否両論あると思いますが、普段と違って感情が大きく動いたり、普段ならありえない行動をしたり誰かからされたりすることで、神様が我々に「合図」をかけている、と考え、一旦冷静になりましょう、とする考え方は、アリでしょ!と思って採用しています。
実際、本当に他にすべきことがある等忘れていたことを思い出せたりします。
怒り狂っている最中に「合図かも」と思いつくのは本当に本当に大変で、これは何度も何度も訓練しないと身につくものではありません。
ですが、身につくと怒りのコントロールが楽になります。
「怒りのピークは6秒なので、深呼吸して6秒待ちましょう」も試してみたことがあるのですが、私は深呼吸するよりも「何の合図!?」と思う方が怒りがやわらぎました。


3.なぜ怒っているのかを掘り下げること

怒りの感情は、必ずその背後に別の感情を持っています。
たとえば、誤解されてカッとなった場合、背後には
悲しさ
無念さ
苛立ち
などがあります。
これは、怒りは2次感情である、という考えに基づいています。

なぜ怒ったのか?
  ↓
誤解されて悲しかったから
  ↓
なぜ悲しかったのか?
  ↓
自分のことを一番に理解してくれていると思ったのにそうではなかったから
のように、「なぜ?」を掘り下げていくと、自分でも気付かなかった本音が見えてきます。

ただし、間違ったやり方をすると
「私が悪かったから」
とおかしな方向に突き進み、
「私が我慢すればよかったんだ…」
と自分を責めてしまいかねませんので、注意が必要です。
こちら非常に重要なポイントです。自尊心を低下させる掘り下げは間違ったやり方ですよ、ということを覚えておいていただければと思います。

……もうこのくらいまでくると、噴火した怒りは静まってくるはずです。
そうすると面倒になって、もういいや、と終了させるケースもあると思います。

終了もアリです。
ただ、この場合、何も解決していないので相手も同じことをくり返すし、そのたびに怒らなくてはならないことを覚悟しましょう。


4.掘り下げた感情を心を込めて「伝える」こと

 「私は怒っている!」ではなく、「こういうことを言われて私は非常に悲しい。残念だ」のように、怒りの感情を掘り下げた時に出てきた感情を伝えましょう。

一番まずい伝え方は
▲「私がどうして怒っているのかわかる!?」
です。
女性はやりがちです。あと学校の先生(笑)。
言わなければわかりません。 わからないからこそ相手はヤッチマッタのです。

アナタが怒るとわかっていてやるのは、性悪な人か、アナタの関心を引きたいだけの、ただの見た目は大人、中身はお子ちゃまです。
そんな人たちにアナタの貴重な時間を割く価値はありません。


5.解決策を提示すること

「もうしないで」
「謝って」
「かわりのものを買って返して」などなど、こちらの要望をはっきり伝えます。
要望がないのに怒るのは、相手を萎縮させて思い通りにコントロールしたいサイコパスか、ストレスを発散したいだけの嫌な奴かですからね。
なので、相手に話す前に、条件をある程度まとめておく必要があります。
受けた内容と解決策とのバランスが悪い場合、今度はアナタが相手を怒らせることになります。


6.相手の言い分を聞くこと

解決策の提示の前にくることもあります。
苦しい言い訳であっても、とりあえず聞きます。
「聞く」と、「聞いた内容を受け入れる」は別物ですから。
10対0で相手が悪かったとしても、弁明の機会がないと「こっちの話を全く聞いてくれなかった」と後々禍根を残すことになりかねません。


7.解決策の折衝をすること

こちらの言い分を聞き入れてもらえない時は、お互いに話し合いながら妥協点を見つけていきます。
この際「でも」系の相手を否定する接続詞は使わないこと。
文法的におかしいですが、「そうなんだ。それで、私は(逆の意見)〜と思うんだけど…どうかな?」が効果的です。

また、相手も自分も感情的になっている場合は、その場で交渉するよりも、時間を置いた方がうまくいく場合もあります。
ただし、翌日まで延ばすのはNG!
怒りは、日をまたいではいけません。
私の場合は、 「悪いけど、落ち着きたいから5分時間をちょうだい」 と言うようにしています。


8.解決策の実行を見届けること

意外と忘れられがちですが、なあなあにしないことです。
合意した解決策はどんなに些細なことであっても立派な「約束」です。
約束を軽視する人は、アナタを軽く見ているのと同義です。
何度も続くようでしたら、その方とのお付き合い自体を見直す必要があるかもしれません。
余談ですが、私がよく見るのは、どんなに仲が良くてもきちんと挨拶や謝罪ができるかどうかと、モノに対する扱いが丁寧かどうかです。この2つが「ちょっとな…」の場合は、ニコニコしながら遠ざかることにしています。


9.実行に対して感謝すること

たとえ相手に非があるとしても、反省して解決策を実行してくれたということは、約束を守ってくれたことになります。
「約束を守ってくれてありがとう」と感謝します。
子供だからと感謝を伝えないのはNGです。
年齢性別関係なく、人対人として対応することが大事です。


10.すべて忘れること

これ……すごく大変なんですよ……ワカリマスヨ……。
「〇年前の××だってそうだった」と、昔のことを過去から掘り起こしてみずから今の怒りに燃料を投下する方もいらっしゃいますが、逆の立場なら
もう謝ったのにいつまで反省すればいいの?
何年もグチグチ言われるほどの酷いことをしたの?
となりませんか?

だから、許す、と言ったことに関して、二度と口にしない……努力を……して……いま……す。 が
「これで何回目だよ!!!!」
と思わず……まだまだ人間ができておりません……未熟でお恥ずかしいです……。
特に感情豊かなタイプは、当時の感情まで全てリアルに思い出すため、ついつい怒りが再燃してしまいがちですが、できる限り手放して、蒸し返さないことです。

思い返してイライラしたり負の感情が出てしまった場合も、合図だと捉えて自分の周辺を見直してみるといいですよ。
何かできていないこと、忘れていること、とても大切なことを思い出せたりします。
そして、別のことに焦点がズレるので、怒りがやわらぎます。怒りは執着とペアなのです。


以上が私の怒りのお作法です。
怒鳴ってスッキリ、にはならないので、抵抗がある方もいらっしゃると思います。
ポイントは、
○自分は怒ることで何を得られるのか?
○相手に解決策を気持ちよくのんでもらう方法は?
○そのために一番効果的なものは?伝え方は?
にフォーカスする、です。

以前「なんであんなに酷いことを言われているのに怒らないの?」と聞かれたことがあります。
怒るとエネルギーを消耗するので、私は自分に近しい人に対してしか怒らないようにしています。それに、酷いことを言って評価を落とすのは相手であって私ではありませんから。
近しくない人から不当な扱いをされたら怒ることもありますが、相手を怒らせることを平気でやる人って、自分の中に抱えきれない問題を持っているケースが多いんです。私は抱えている問題や、どういう心理状態でこんな態度を取っているのか、の方が気になります。
私に対してこういうことをする方は、サンプルとして観察されていて、どこかのセミナーでネタにされていると思ってください(笑)。
通常はセミナーでお話する時必ず許可を取りますが、失礼なことをした人には失礼でもいいよね!と思っています。

時々、SNSなどで芸能人の不倫や不祥事をめちゃくちゃ怒りまくったり叩きまくったりしている人を目にしますが、暇なのか、エネルギーを持て余しているのかどっちかだろうなぁ、と思って見ています。

わかってほしい人にだけ理解してもらえればそれでいい、のスタンスでいることも大切です。芸能人のような人気商売ならば1人でも多くの人から好かれる必要があるかもしれませんが、我々のような一般ピーポーが万人から好かれるのは無理です。
コミュニケーションの勉強をしているからこそわかります。
パーソナリティ分析をすると、どんな人にも仲良くなれるタイプと苦手なタイプが必ずいます。
アナタは、誰かにとって「仲良くなりたい」タイプであり、同時に、別の誰かにとっては「できれば近寄りたくない」タイプでもあるのです。

当然ですが、苦手だからといってイジメたり、酷いことを言って良いわけではありません。
この怒りのお作法、特に管理職には必須の能力です。
パワハラモラハラは、当事者たちにとっても組織にとっても、良いことはひとつもありません。
部下は、上司としてのアナタの能力に加え、アナタの人間性も見ています。

長くなりましたが、怒った時に私が実践しているお作法をシェアさせていただきました。 参考になれば幸いです。

怒らない、はヒトとして生きている限り無理です。
ですので、怒らない対策ではなく、怒った後の対策が大事だと私は思います。

偉そうに書きましたが、最初から全部できませんでしたし、今でも「今回は全然ダメだったな…」と反省することもたくさんあります。
意識することで少しずつできるようになってきますので、あきらめずに何度もトライして、アナタが穏やかな毎日を過ごせるように祈っております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?