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変化局面にこそ、取締役会・株主の最大の活用をしつつ、経営を強くするという視点

連日、新型コロナのニュースに溢れ、世界が対応に追われています。この環境で企業活動も大きく前提条件が変わりました。

僕が関わるスタートアップ業界でもこの影響は甚大で、今までの前提が全て変わり、財務体力や事業の安定性がまだ確立されていない段階の会社では、生きるか死ぬかの戦いを迫られる状況となっています。

形骸化した取締役会になっていないか

そんな中で、感じたことがあります。健全な会社と非健全な会社の違いといっても良いと思いますが、取締役会がどの程度ワークしているかという視点です。

企業(これはスタートアップに限りませんが)は重要な意思決定をする際、取締役会で議論を行い、判断をしていきます。ここには会社側の取締役に加え、投資家がいる場合には社外取締役である投資家とオブザーバー(取締役会に対して1票持たないが、参加し、意見を述べることができる方)である投資が参加して多岐にわたり議論が行われます。

そこで感じるのは、取締役会の質が高い会社ほど優秀な会社、成功する会社であり、厳しい環境では、結果としてサバイブできる確率が高いという感覚です。

取締役会のパターン

感覚的には以下の4パターンに分かれます。皆さんが関わる取締役会、自分の会社の取締役会はどこにあるかを再点検してみると更に良い形にできるかもしれません。

①超優秀な会社

②健全な会社

③改善点が多い会社

④危ない会社

①は、端的に経営陣が超優秀です。事前に会社の直面する外部・内部の課題を認識し、それに対し自分で問いを立て、社内でも(必要に応じて社外の参考意見を取りまとめ)複数のシナリオと多面的な議論がされています。その上で、自分たちのあるべき姿、MVV、気持ちや思想を踏まえて最善と思われる案を役員会に上程されています。

その上で、取締役会に諮(はか)るという意識があります。ここは客観的な視点を踏まえて判断を仰ぐという意識でもあります。取締役会には社外の人も参加しますから、反対・賛成・沈黙、色々な反応があります。自分たちの意見と違った人がいても、それを踏まえて良い判断をしよう、更に学ぼう交換/吸収してやろう、という意思があります。

このレベルにある会社は、信頼できる会社であり、自立自走できる会社です。

面白いことに、株主はやることが減っていきます。前提としての議論は既にされており、客観的に見ても適切な判断がされているという状態ですね。そのため、株主は意見表明か、色々なケースをインプットする、敢えて経営陣とは真逆の視点から視野を広げるということが行われます。株主からすれば、最も喜ばしい状態です。これはスタートアップが目指すべき姿で、株主に「本当やることがない、、」「スタートアップとは思えない質、、」と言わせたら勝ちです(勝ち負けはありませんが)この役員会に出たことがある方なら分かる感覚かなと思います。

②は、もちろん、事前準備はされていますが、事前の情報が偏っていたり、前提条件や考え方に偏りや抜け漏れがあったり、その判断が潜在的なリスクを含んでいる場合等です。リスクというのは、事業面であったり資金繰り等多岐にわたります。でも、必死で考えている。必死で向き合っている。そういう経営陣です。

ここは株主(特に社外取締役)はここは腕の見せ所でもあります。自分の経験や最新の情報、あるいはネットワークを活用してバリューを出します。基本的には会社は自分たちで判断できる準備ができているので、そこに新たなインプットをし、議論を深めていきます。これが株主によっても差が出るところもでもあります(なかなかディープなので今度テーマにあげます)

でも、その議論を経て、持ち帰りになることもありますが健全な形で議論が進んでいく。会社としての意思決定になっていく会社です。健全ですね。好感が持てます。

③は、何回取締役会で議論しても、持ち帰っても、意思決定に至らないケースです。例えば、「これは確認しないといけない」「十分あり得るこのシナリオになったらどの程度の数字インパクトあるのか」と重要な視点が出てきますが、持ち帰りになるもののそれをまとめれられない等です。

これですと、議案が通らない、あるいは賛否が大きく分かれる(投資契約等で決定には株主の承認必要な場合もあります)。無理に通すほど「歪み」が生まれます。この「歪み」は、信頼関係やコミュニケーションの綻びになりやすい。

もちろん、会社側も悪意があるわけではなく、日々戦争しているようなもので時間がない、あるいはその指摘されている視点は(自分たちが見ている範囲では)発生しないと思っている等思うところはあると思います。株主からすれば、「いやいや、こんな事例あるでしょ。理論的にこれが進むとこうなるでしょ」と持っている情報や経験が違うために、ずれが起こってしまう。うまく、着地点が見いだせればよいのですが、平行線だと結構つらい状況が生まれます。今でなくとも将来の厳しい判断のときに。

④は、経営陣が情報を隠してしまう、歪めてしまう、あるいは会社全体が見えていないケースです。これはまずい。

会社を作った時、初めて投資を受けた時と真逆の方向に進んでいます。大人な見方をすれば、「程度問題ですよね」というのも勿論ありますが、社会通念を超えてこれをやってしまうと、不思議なもので、情報は隠せば隠すほど、際限ない偽り、社内外の協力者の減少や不信、本人をも自己不信に陥らせてします。

この場合は、自分たちの戦っているフィールドや組織の中が認識できていません。今どこに自分たちがいて、将来どうなっていくのか、今取っている戦略は何なのか、それはどういう意味をもつのかを分かっていないという場合が多いと感じます。

こんな取締役会でありましょう。危機の時ほど。

スタートアップの皆さん、①を目指しましょう(株主としての希望を込めて)。

でも、なかなか難しいと思います。そこまで投資家も求めていません。②を目指しましょう。今できなくても、できる状態を半年後に目指しましょう。

何が足りていないのか、他の会社(もちろん、①や②にあるお手本となる会社)や株主で経験豊富な人にどう運営しているのか聞いてみましょう。全く同じにする必要ありませんが、自分たちなりのあり方を目指しましょう。

取締役会は決議の場でもありますが、時間を延ばして幅広に議論してみましょう。自分たちの見えていない視点をどんどんインプットする場として、反対意見を受けて更に良いものとする場として。また会社として取っている判断と意識しましょう。その判断がステークホルダーに大きな影響を与えます。

月次や経営の報告事項だけで終わっていませんか?前提条件が変わっている局面こそ、多面的な情報や議論が必要です。議論の時間を多くとりましょう。

完璧、奇麗にまとめようとしていませんか?投資家はそんなものは求めていなくて、ありのままストレートであることを求めています。完璧、奇麗などというのは幻想ですので、時間をかけること、アウトプット出すのに抵抗が出てしまうことほど無駄なことはありません。ありのままでぶつかりましょう。

取締役会では、情報や参加者を限定しすぎていませんか?情報をコントロールするメリットもデメリットもあります。ステークホルダーとの関係や、契約によるものもあると思いますが、これは僕の関わった経験ではToo Much位のディスクロージャー姿勢の方がうまく回ると思います。会議体を分けても良いと思いますが(取締役会とは別に経営会議というのを設けて広く参加者を集めることもあります。あるいはテーマに分けて会議体開催等)工夫して、会社の良い形を探っていきましょう。

株主との関係について

加えて、株主を使い倒しましょう。

未上場に限定すれば多くの株主(※)も喜びます。「よし!やってやろう!」「こんな人紹介したい!」と応援する気持ちでいっぱいなのです。

投資家は、暖かいけどシャイな人(変わっている人多いです)が多いので、積極的にコミュニケーションを取りましょう。ある意味、粗削り不器用で愛情にあふれた人たちです。たまに冷たくされるかもしれませんが、もともとそんなものだと思ってやり取り頂くと、誰よりも強いサポーターになってくれると思います。

(※)全員じゃないと思うので、そこは何となく空気を読みましょう。

最後に

こんな時ほど、同じ船にに乗っている全員の力を集結し、乗り越えましょう。

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