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【定点観測】男女の意識差は拡大し、ジェンダーギャップはさらに深まる
株式会社Insight Tecと株式会社SHeStandsは前年に引き続き、全国の子育て世代(20-49歳)男女を対象とした「日常の悩みとジェンダーギャップとの関連性調査」を共同で実施いたしました。
取組みの背景や両者の思い・実施した調査の概要については以下のプレスリリースをご覧ください。
1)日頃の不安や悩み
女性の悩みは主に「家庭」「仕事」あるいは「その両立」について。男性は「家庭」より「仕事」に意識が向いている。1年前と比較して、男女の意識差が拡大し、よりジェンダーロールに基づくものへ。
日頃の不安や悩みをみると、女性は「家事の負担」や「育児や子育て」など、家庭に関するものが多く、前回調査と比較して女性は「育児や子育ての悩み」が増加し、男性は「仕事」や「今後のキャリアプラン」の悩みが増加と、男女差が拡大している。共働き世帯では、男性の家事や育児への関与·協力意識の低さも垣間見えた。
コロナ禍の長期化に伴う先行き不透明感によって、夫や子供のいる有職女性は「配偶者や子供の近未来(育児や学校生活)へのサポート」をより意識せざるを得ない状況が生まれている様子がうかがえる。
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2)「異性がうらやましい」と感じるか
女性の約9割は異性をうらやましく感じた経験あり。(1年前と変わらず)
家事や子育てに対して、女性は「減点方式」、男性は「加点方式」で評価されることに不公平感あり。
女性の約9割が「異性(男性)がうらやましい」と感じることがあると回答していることに加えて、ジェンダーギャップを起因とする不安や悩みを抱える人も前年よりやや増加し、8割を超えている。前回調査から女性で「仕事に対する評価」や「職場での人間関係」などは減少したが、「仕事と家庭との両立」「家事の負担」は継続して3割超と高く、「ジェンダー平等」が新語・流行語大賞のトップ10入りした2021年においても、意識改善が大きく進んだとは言えない状況である。
コロナ禍という状況下では、「夫や子供のことを優先せざるを得ないのは当然」という社会の風潮に対して憤りのコメントが目立ち、メディアやSNSに出現する「育メン(イクメン)」という表現からも、男性は「加点方式」、女性は「減点方式」で家事や子育てを評価されることに不公平感を募らせている。
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3)キャリア形成を断念した経験
女性の2-3割は出産や育児・子育てがきっかけでキャリアを断念。(1年前と変わらず)
女性は結婚、出産、育児がキャリア形成(社会的な活躍)に影響を及ぼす人が多く、自分よりも配偶者の仕事を優先する傾向が男性より目立つという状況は変わらない。(前回調査よりやや悪化)
「自分が家事・育児をしっかりしないと、家庭がうまくまわらない」という意見が散見され、自治体・企業・身の周りの人からのサポートやケアに期待が持てない状況がうかがえる。
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4)キャリア断念後の再挑戦意向
キャリア断念後の再挑戦意向はこの1年で高まりを見せている。「自宅でのフルリモート勤務」導入企業の増加が影響か。
育休や産休などでキャリア形成を途中で断念してしまう女性の中で、勤務先への復職や新たなキャリア形成などに再挑戦しようと考えている人は全体の約7割にのぼり、この1年で大きく増加している。自由回答を見ると、コロナ禍をきっかけに「自宅でのリモートワーク」が働き方の選択肢の1つとして一般化したことが、家事と育児の両立や再挑戦への可能性につながっている様子が見られた。
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【ベース:キャリア形成を断念した人・断念する可能性がある人】
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5)女性が活躍できる社会になっているか
「女性が活躍できる社会づくり」の進捗を実感している女性は3割未満に留まる。(1年前と変わらず)
「女性が活躍できる社会づくり(働きやすい環境づくり)」が進んでいるという実感(とても感じる・感じる計)は女性で1割未満、男性でも3割未満と全体的に低く、性別差も見られる。
共働き世帯の回答に限定しても同様の結果となり、「社会におけるジェンダーギャップ」が2021年も未だ解消されていないことが確認された。
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6)女性が活躍できる社会に向けて必要なもの
「女性が活躍できる社会」に必要なものとして「リモートワーク環境の整備」が挙がる。
「託児所や保育園を増やす」といったハード面、「男性側の時短勤務や産休・育休取得の義務化・強制化」のようなソフト面の充実を求める声は変わらず多い。一方、コロナ禍によって「自宅でのリモートワーク主体」の働き方になった人は、家事や育児に対する負担軽減の恩恵を受けたという言及が目立った。
「保育園に子供を預けられない(人数制限や諸費用の問題)」という人の対処策としても「リモートワークの推進」に対するニーズが強い。
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7)相談したい相手
「仕事」や「仕事と家庭の両立」への悩み相談サービスのニーズは存在するが、アクセスは限定的(1年前と変わらず)
仕事に関する不安や悩みを相談できる相手は身近にいる「家族や友人」が大半を占める。前回調査と比較して、「仕事のやりがいやスキルアップ」や「仕事と家庭の両立」に対する不安や悩みを勤務先の同僚や上司に実際に相談する人の増加傾向が見られた。
前回調査と同様、カウセリングや専門家のアドバイス、ネット上の匿名コミュニティを実際に利用したことがある人は全体の数%程度しか存在しないが、これらを今後利用したいと思う人は1割程度存在し、潜在的な期待・ニーズがうかがえる。「緊急の家事・育児代行サポート」のような人的バックアップだけではなく、「母親の社会的孤立や家事育児の悩みを気軽に相談できるアドバイザー・理解者の存在」を求める声が見られた。
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8)印象に残った出来事・話題
2021年は「東京オリパラでの森喜朗会長の女性蔑視発言」の悪印象が強く残り、ジェンダー平等に関する施策やルール整備については総じて印象が薄く、男性の関心も低い
「東京オリパラ大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言」は印象に残ったが、「育児・介護休業法改正」・「夫婦別姓認めず 2015年に続き 『合憲』」・「ジェンダーレス制服の採用」などの職場や学校などのコミュニティにおけるジェンダーに関する法整備や性差撤廃の動きについては印象が薄く、男性の関心も低い。「ジェンダーギャップ指数」の低さを納得せざるを得ない状況になっている。
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■アンケート結果に対する提言と今後の展開
ジェンダーギャップ指数2021や今回と前回の調査結果を見る限り、日本社会には依然として根深いジェンダーギャップが存在しており、女性の社会的な活躍やキャリア形成の推進を妨げる原因になっている。
2021年は、「育児・介護休業法改正」やコロナ禍の長期化による「リモートワーク推奨」など、女性の仕事と家庭の両立に関するソフト面(制度・支援策)の前進が見受けられた。一方で、「託児所や保育園を増やす」といったハード面(施設・インフラ)の充実を求める声は依然として多い。
今回調査では、男性の「ジェンダー平等」という考え方や関連する出来事に対する関心の低さが確認された。また男女の悩みの対象も、ジェンダーロール(性別役割分担)に根付いたもので、前年よりも意識の拡大が見られた。女性にも「男女の役割に対する固定観念」や「家事や育児は母親が担うべきという思い込み」が根強く存在していることもわかった。男女間でお互いの生活を平等に支え合う意識には依然として乖離がある状況である。
この状況を改善するためには、政府や自治体による啓蒙活動や企業の法令順守だけでなく、若い世代(幼少期)からジェンダー教育を通じて、マインドセットやリテラシーを高める取り組み(義務教育やSNSでの表現方法やマナー等)が必要であると考えられる。
また、長期化するコロナ禍で、ジェンダーギャップに起因する日頃の悩みが増す中で、不安や悩みの相談にカウンセリングや専門家のアドバイスへのニーズはうかがえるも、それを利用している人が、未だに少ない状況。オンライン化の普及により、アクセスしやすい環境が整う中でも、利用に対するネガティブイメージや心理的バリア(経済的な問題も含む)は依然として存在すると考えられる。
これらを踏まえると、「ジェンダー教育」に加え、前年に引き続き、「相談機関(受け皿)の強化」と「相談しやすい文化(弱さを出し合え、助けを求めることを恥じない風土)の醸成」を進めることが、日本のジェンダーギャップ解消に向けた第一歩になると考えられる。
Insight Techは自社が運営する「不満買取センター」を通じて、日常の不満や不安を気軽に投稿・シェアできるコミュニティを醸成し、寄せられた声に基づき世の中への課題提起や政策立案につなげていくことで、ジェンダーギャップ解消に向けたハブの役割を担っていきたいと考えています。
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