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Cinema Voice②:1.7万人の声から見える「映画と私」の関係

Insight Tech CEO 伊藤です。不満買取センターを運営し、独自のデータ×独自のAIで「声が届く世の中を創る」ことを目指しています。

不満買取センターに集められた「声」を独自に開発した「AI(人工知能)」により価値化しイノベーションを興す。そんなことを生業にしている会社です。不満のデータに限らず、各企業が保有するVoC(Voice of Customer)からビジネスを強くするお手伝いもさせていただいています。

【VoC経営】を実現することで【声が届く世の中を創る】ために走り続けているチームです。


今日は、別所哲也さん率いるSSFF & ASIAのみなさんとご一緒しているプロジェクト「Cinema Voice」に寄せられた生活者の声から【生活者にとって映画とは?】を紐解いていきたいと思います。

1.7万人の声が集まりました

Cinema Voiceプロジェクトは「生活者の声から新しい映画の価値を探る」ことを目的にしています。そこで、私たちが運営する「不満買取センター」の59万人を対象とした大規模な調査を実施しました。

■第1回調査 「あなたにとって映画とは?」(2021年4月28日~5月12日)

第1回調査は「あなたにとって映画とは?」をテーマに、Insight Techが運営する特許取得済みのプラットフォーム「不満買取センター」内で、あなたと映画との関係性、理想的な映画祭や映画鑑賞方法に対するアイデアについて声を集めました。

結果、17,022名から生の声を集めることが出来ました。

私たちが実施しているほかの調査と比べて大変早く・多くの声が集まり、映画への関心の高さを改めて思い知らされる結果です。

では、1.7万人が考える「映画と私」を紐解いていきましょう。

この1年、映画は生活者に寄り添う「身近な存在」に

まず、直近1年(調査実施4月末)での映画鑑賞の頻度を聞きました。映画鑑賞の頻度が「減った」とする人が22%であったのに対して、「増えた」とする人が35%。つまり、映画鑑賞の頻度が「増えた」とした人のほうが多いことが分かりました。コロナ禍によるSTAY HOMEの影響もあり、映画を見る頻度はここ1年で増加している人が多いことが分かります。

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媒体・方法別にみると、外出自粛が求められたり、映画館の営業自粛が求められたこともあり、55%の人が映画館での映画鑑賞が減ったとする一方で、62%の人が動画配信サービスでの映画鑑賞の頻度が高まったとしています。この一年、映画が今まで以上に私たちの生活に寄り添う「身近な存在」となったことがうかがえます。

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映画鑑賞の頻度変化について、性・年代別に見たものが下図です。どの世代でも「増えた」とする割合が「減った」とする割合を上回っており、どの世代でも今まで以上に「身近な存在」になったことが分かります。特に、10代や20代において増えたとする割合が顕著に高くなっており、デジタルデバイス×動画配信サービスによる映画鑑賞が一気に進展した1年であったことがうかがえます。

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映画は生活者の人生の伴走者であり羅針盤

続いて、「あなたの映画に関する思い出や映画から受けた影響など、エピソードはありますか?」と問いかけをしました。

自由記述形式(文章の形式でのテキスト)で沢山の声が寄せられました。この結果を私たちが開発した文章解析AI「アイタス」を用いて解析し、主たる意見のかたまり(クラスタと呼びます)を抽出しました。

意外なことに、作品自体に関する思い出や感想だけなく、それによって自分自身が影響を受けたことを振り返る声や、それによって人生が変わるきっけかけになったことを振り返る声が多く集まりました。

例えば、「私にとって映画は心のサプリメントのような存在」「仕事のミスや嫌なことがあって落ち込んだ気持ちを和らげてくれた」といったように、気持ちのスイッチを切り替えポジティブな力をもたらしてくれたエピソードを語る声。

そして、「私を励まし、特に価値観や人生観を深掘りさせる」や「考えを変えてみようかなって思えるようなセリフがあると、ちょっと頑張ってみようかなって思えた」など暮らし方や人生観・価値観が変わり視野が広がるきっかけになったというエピソードを語る声。

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こんな声をみると、映画を見るという行為は、余暇活動を超えた意味を持っていて、生活者一人ひとりの「人生の伴走者」であり「羅針盤」になっていることがよく分かります。

映画は日常の中の「非日常」であり「心の支え」

続いて「貴方にとって映画とは?」。これも自由記述形式で沢山の声が集まりました。文章解析AI「アイタス」を用いて解析し、「意見の対象となっている部分(●●が△△、●●に□□の●●に当たる部分)」をカウントしました。

その出現回数に応じて文字の大きさを表現した”ワードクラウド”で傾向を見てみましょう。「余暇」や「趣味」、「エンターテイメント」という言葉は出てきません。目立つのは「自分」と「人生」。単なる気分転換としてだけでなく、人生に良い影響を与えてくれる存在として大切に想っていることが明らかになりました。

低関心層(年間映画を5本以下しか見ない層)やライト&ミドル層(年間40本未満)では「非日常」「違う世界」といったキーワードが、目立ちます。日常生活とは異なる非日常を疑似体験でき、違う世界を味わえる「経験」として認識されています。

これに対してヘビー層(年間40本以上)では、「生活」「心」といったキーワードが浮かび上がってきます。もはや日常生活の心の支えになっている様子がうかがえますね。「色んな世界」「彩」といったキーワードも見られ、日常生活を彩ってくれる大切な存在になっている様子が想像できます。

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先の「映画にまつわるエピソード」で見たときと同様に、映画は余暇活動の選択肢としてだけでなく、日常生活に素敵な彩を与える存在になっているようです。

こんな時だからこそ、映画の役割はますます大切なものになっていて、これが結果として、映画鑑賞の頻度UPにつながっているのかもしれませんね。

これからの映画祭は"体感"と"語り合い"のインタラクティブな空間へ

Cinema Voiceプロジェクトは、米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭 「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」とのコラボレーションにより展開されてます。

そこで、「どのような映画イベントが開催されたら参加してみたいと思いますか」といった投げかけもしてみました。自由記述形式で沢山の期待・アイデアが寄せられました。

生活者の皆さんの期待・アイデアを客観的に解析するために、私たちが提供している「アイタスクラウド」を活用し、意見の量×質の両面で、どのような意見がまとまった意見として存在するのかを炙り出しました(下図)。加えて、レアで新奇性が高い意見を「アイデアイ」でピックアップしました。

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その結果、生活者が映画祭に期待することとして、以下の4つの要素が存在することが明らかになりました。

【Touch】
監督や俳優の心情を知り、作り手に自分の気持ちを伝えることで、作品をより深く堪能できる
【Talk & Community】
リアルとオンラインの垣根を越えて、作品や関連するカルチャーについて鑑賞者同士で語り合える
【Experience】
作品に出てくる食事やファッションだけでなく、五感に訴えかける印象的なシーンを体感できる
【Family & Memory】 
お子様連れや障害者などでも気兼ねなく参加できるオープンな空間で思い出作りができる

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それぞれについて、具体的にどんな期待・アイデアがあるのか、文章解析AIがグルーピングした代表的な意見のクラスタごとに見ていきましょう。

(1)【Touch】

監督や俳優の心情を知り、作り手に自分の気持ちを伝えることで、作品をより深く堪能できる

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<生活者の期待として明らかになったこと>
映画祭と聞くと、好きな俳優や監督がレッドカーペットを歩いているシーンや、受賞後にスピーチをしているシーンを思い浮かべるが、それを遠くから眺めているだけでは満足できない。作品の題材となったテーマや主人公の感情などを「監督や俳優と意見交換がしたい」という気持ちを持っている人が多い。作品の解説や撮影の「苦労話に触れる」ことで、作品をより深く理解できるし、愛着も湧く。

(2)【Talk & Community】

リアルとオンラインの垣根を越えて、作品や関連するカルチャーについて鑑賞者同士で語り合える

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<生活者の期待として明らかになったこと>
映画の感想を誰かに伝える機会がまったくなくなってしまった。地方在住なのでイベントに参加すること自体が難しい。
コロナ禍で普及した「オンラインでの交流機能」を駆使して、ファン同士で作品内容や関連するカルチャーについて「感想を伝え合いたい」。映画祭という場所でなら、会話が弾むコミュニティーに出会えるはず。

3)【Experience】

作品に出てくる食事やファッションだけでなく、五感に訴えかける印象的なシーンを体感できる

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<生活者の期待として明らかになったこと>
映画祭ではコンペティション作品を鑑賞したり、トークイベントに参加したりするだけではなく、「映画に出てくる有名なシーンを擬似体感できるようなアトラクション」を楽しみたい。最近のテクノロジーであれば、映像や音響だけでなく、触覚や香りなども含めた効果で「臨場感の高い没入体験」が味わえるのではないか。

4)【Family & Memory】 

お子様連れや障害者などでも気兼ねなく出入りできるオープンな空間で思い出作りができる

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<生活者の期待として明らかになったこと>
映画祭に参加したくてもできない主な原因として、「小さな子供の存在」や「身体的問題(健康不安や障害)」がある。作品上映中やイベント中に子供が騒いだり、自分が体調不良になったりして「周囲に迷惑をかけること」はしたくない。託児所やキッズスペース、専有スペースを利用できるだけでなく、自由に出入りができる体験コーナーや撮影スポット、記念品などで「気軽に思い出作り」がしたい。


生活者の生の声をみると、これからの映画祭は「体感」と「語り合い」のインタラクティブ空間になってほしい、という期待が読み取れます。

映画祭は「映画を見る場」「映画が表彰される場」「映画に関わるビジネスが興る場」だけでなく、映画を深く「知る」、「考える」、そして「繋がる」場にもなってほしい、といった価値が期待されています。

一時の「イベント」ではなく、継続的に生活者と映画との接点を持ち続ける「ライフスタイルメディア」としての存在、
イベント会場という「スポット」ではなく、オンラインを活かして新たな縁を紡ぐ「ハブ」の役割が期待されているのかもしれません。

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リラックスしてフリースタイルで映画を楽しみたい

最後に、「あなたが考える『理想的な映画鑑賞方法』はどのようなものですか」と問いかけをしました。

文章解析AIで解析した結果、理想的な映画鑑賞方法として大きく4つの期待があることが分かりました。Relax , Free Style , High Level , Privacyの4つです。

High LevelやPrivacyに関しては、これまでの映画鑑賞スタイルの延長線上にある期待と言えます。素晴らしい音響施設で大きなスクリーンで没入感を味わいたい。そしてその時間や空間をだれにも邪魔されたくない、という思いです。

これに加え、今回の調査からは特徴的な期待が浮かび上がりました。「生活に身近な存在だからこそ、色々なシーンで、仲間と交流しながら、カジュアルに映画を楽しみたい」という期待です。

天井に映し出される映画をリラックスした状態で楽しみたい、芝生に寝っ転がりながら屋外で映画を見たい、仲間とお酒を飲み、おしゃべりしながら映画を楽しみたい。RelaxしてFree Styleで映画を楽しみたい、という欲求です。

「映画が身近な存在だからこそ」の期待が拡がっていると言えます。

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Free Styleに該当する意見のクラスタを実際に見てみましょう。

芝生に言及する声が沢山寄せられました。「夜空の下、芝生を敷いて」「友人や恋人とお酒を飲みながら」「のんびり」映画を見たい、「プラネタリウム風に」「雑音が気にならないようにイヤホンでいいかな」と自由でカジュアルなスタイルで映画を楽しみたい、という期待がうかがえます。

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お酒と映画。これもたくさんの方から声が寄せられました。「お食事やお酒もソーシャルディスタンスで」と映画館での新しい映画鑑賞を提案する声や「高級ホテル」や「グランピング」を貸し切りにして「チビチビお酒を飲みながら」、「ビーチベッドで寛ぎながら」といった意見も。映画を大切に想うからこそ、人生の素敵なシーンを彩る存在として映画への期待が高まっているようです。

STAY HOMEが続く中で、仲間とワイワイ楽しみたい、外出してちょっと変わったことがしたい、贅沢な時間を過ごしたい、というニーズが強まっていることも背景にあるのかもしれませんね。

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皆さんは、どんなスタイルで映画を楽しみたいと思いますか?

まとめ

長文にわたりお付き合いを頂き有難うございます。第1回調査では「あなたにとって映画とは?」を文章解析AIを活用しながら炙り出しました。その結果、以下のようなことが明らかになりました。

①この1年、映画は生活者に寄り添う「身近な存在」に
②映画は生活者の人生の伴走者であり羅針盤
③映画は日常の中の「非日常」であり「心の支え」
④これからの映画祭は"体感"と"語り合い"のインタラクティブな空間へ
⑤リラックスしてフリースタイルで映画を楽しみたい

この1年でますます私たちの身近な存在になった映画。余暇活動の選択肢であるだけでなく、生活者の人生の伴走者であり羅針盤になっていることが分かりました。そして、映画は日常の中で「非日常」を体験させてくれるものであり、「心の支え」でもある。

想像する以上に、私たちにとって映画というのは大切で欠かせない存在であり、人の心や日々の生活を豊かにしてくれる存在。ひいては社会に想像と創造をもたらし、活力を与えてくれる存在であることが明らかになりました。

人類が今までにない状況に強く立ち向かう上でも、映画は大切な示唆をもたらし、そして未来へ導いてくれるものなのかもしれません。

第2回調査に向けて

第1回調査 「あなたにとって映画とは?」のアンケート結果と自由回答のAI解析によって、コロナ禍によって映画が生活者に寄り添う「身近な存在」になっていること、映画との思い出は人生の大切なエピソードと伴走し「人生の羅針盤」になっていること、そして、制約の多い日常生活を過ごす人々の「心の支え」となっていることが分かりました。

第2回調査では、6月11日(木)から開催される「SSFF & ASIA 2021」への参加状況や満足度を聴取することに加えて、第1回調査で収集した生活者の声をベースに検討した新しい施策アイデアに対する評価や期待を確認します。また、「SSFF & ASIAへのご意見やご要望」や「ショートフィルム(短編映画)に求めること」などに対して寄せられた声を解析し、「SSFF & ASIA 2022」 及び 新しい映画コミュニケーションに活用してまいります。

第2回調査開始は会期終了直後の6月22日頃を予定しています。

引き続き、映画祭×AIテクノロジーで映画の新たな価値を探索するCinema Voice プロジェクトにご期待ください。

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