web広告を数学で考える__1_

web広告運用を数学の入試問題みたいに考えてみる(2) - 利益額の最大化

 sonchoと申します。リブセンスでProduct Managerをしています。
 前回に引き続き、広告運用の話をしようと思います。

前回の復習

 前回のnoteでは、CPAの高騰を、指標ごとに原因分析して調査する方法を見てみました。

 要約すると、

 ・CPAが安ければ安いほどいい広告
 ・CPA は、CPCとCVRの割り算で表される
 ・CPAが高騰する理由は、CPCの高騰 または CVRの低下である

 といった感じです。興味のあるかたは前回の記事をご覧ください。そんなに興味がない方は、この要約だけで十分です。

大事なのは、CPAだけじゃない

 急に前回言ったことをひっくり返します。CPAが安ければいい広告、とも言い切れない です。もちろん、CPAは安ければ安いほどいい、という原則は変わらないですが、CPAが高くてもいい広告はある ということです。

 どういうことかというと、結局一番大事なのは、広告経由でいくらの利益になったか。つまり、CPAが高くても売上が高くて、結果利益額が高ければオールオッケー なのです。

Revenues = Sales - Costs
(Revenues = 利益、Sales = 売上、Costs = 費用)

 今回は、広告経由の利益額の最大化について見ていきたいと思います。

利益額を最大化する

 前回に倣って、式を変形していきます。

Revenues = Sales - Costs
        = (SPA × CVs) - (CPA × CVs)
        = (SPA - CPA) × CVs

 謎のSPAが出てきました。あまり一般的には使われていないみたいですが、SPA(Sales Per Acquisition/Action)つまり売上単価を表す指標として使っています。
 この式より、利益を最大化するには

・獲得あたり利益額(SPA - CPA)を増やす
・獲得数(CVs)を増やす

 この二つだけ考えていればよい、ということになります。

CVsとCPAのトレードオフ

 ここで厄介な問題に直面しなければなりません。一般的に CVsを増やせば増やすほど、CPAは高騰するのです。なんとなくそうだよねって気もするかもしれませんが、ちゃんと数学的に考えましょう。

 CPAの公式は以下でしたね。忘れちゃったという方は前回のnoteを穴が空くほど見返してください。

CPA = CPC / CVR
(CPC = クリック単価、CVR = コンバージョン率)

 商品を無条件で買ってくれる優良顧客は限られているので、さらにたくさんの商品を買ってもらおうと思うと、費用相場の高い場所に広告を出したりより購入確度の低い人たちにも広告を出す 必要があります。

 すなわち、 

・費用相場の高い場所 = CPCが高い(CPC↑)
・購入確度の低い人たち = CVRが低い(CVR↓)

 ということなので、

CPC↑  →  CPA↑
CVR↓  →  CPA↑

 どちらにせよ、CPAは高騰します。ゆえに、

CVs↑  →  CPC↑ or/and CVR↓
       →  CPA↑

 となるのです。これが、CVsとCPAのトレードオフです

中間まとめ

 ここまでの話をまとめます。

・利益額を最大化させるには、以下の2つが要素となる。
  ・獲得あたり利益額(SPA - CPA)を増やす
  ・獲得数(CVs)を増やす
・しかし、CVsを増やそうとするとCPAが上がるため、獲得あたり利益額と獲得数は「トレードオフ」の関係にある

 利益額を最大化するのは、一筋縄にいかないことがわかってきたと思います。

利益とは動点によって規定される長方形の面積である

 では、数学の力を借りましょう。
 ここまでの話を踏まえて、グラフを描いてみます。

スクリーンショット 2020-02-23 10.58.17

 獲得数が増えれば増えるほど、獲得あたりの利益額が減っていくわけなので、グラフのような関係性になるかと思います。傾きや切片は適当ですが、だいたいこんな感じになります。

スクリーンショット 2020-02-23 10.58.23

 Revenues = (SPA - CPA) × CVs の公式から、利益はグラフ上の動点とx軸y軸に囲まれた面積 となります。この図では、利益は (2500 × 800) = 200万です。
 それでは、ちょっと点を動かしてみましょう。

スクリーンショット 2020-02-23 10.58.28

 もう少し獲得数を増やしてみました。点は右側に動き、利益は (1100 × 2000) = 220万です。つまり、広告出稿強化によって利益額が増大したと言えます

スクリーンショット 2020-02-23 11.19.40

 さらに獲得数を増やしてみました。点は右側に動き、利益は (300 × 3000) = 90万です。広告出稿強化を過度に行いすぎて、利益額が減少してしまったと言えます

 これらの実験から、

・獲得あたりの利益額(y軸):1,100
・獲得数(x軸):2,000

 この点が、面積である利益が最大化する点であることがわかりました。
 もちろん、もっとたくさんの実験をしたら、さらに利益が大きくなる点が発見できるかもしれません。

利益最大化となる点は、数式で算出できる

 ここまで読まれた方は、きっとこう思ったと思います。

グラフを数式で表して、面積最大化となる点を数学的に求めれば、最適な広告運用ができるのでは?

 ご明察!その通りです。
 実際に、Pythonを用いて数式を算出し、微分して利益最大化となる点を求めた弊社の先輩がいます。記事をこちらに張っておきますので、ぜひご参考にしていただけると。

まとめ

 いかがでしたでしょうか? 学校で習ったレベルの数学を使えば、合理的に広告運用ができることがわかったと思います。
 ただ現実の世界において、グラフを数式で表すことは非常に難しいです。競合の出稿や広告プロダクトのアルゴリズム、ユーザーのニーズなどは刻一刻と変化しています。大事なのは、この考え方を頭の中に描きながら、日々の出稿調整を行うことではないでしょうか。

さいごに

 前回から広告運用の話が続いたので、次回はちょっと別のことを書こうと思います。いつか第3弾として、獲得広告を認知観点も含めて計測する令和のフルファネル戦略について書こうと思いますので、ぜひお楽しみに!

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