web広告を数学で考える__1_

web広告運用を数学の入試問題みたいに考えてみる(1) - CPAの高騰

数学が嫌いな方でも、安心してお読みいただけます。

 sonchoと申します。リブセンスでProduct Managerをしています。
 今日から何回かに分けて、広告運用の話をしようと思います。

web広告運用は数学の入試問題みたいなものです

 いきなりどうしたって感じですよね。
 広告運用をしていると「あーなんか数学の入試問題みたいだなー」とよく思うのです。きっと僕だけじゃないはず(僕だけかも)。

 そもそもweb広告運用ってなに? っていうところから、効率良く広告運用をするということ、そして広告経由の利益額を最大化させるためにはどうしたらいいのか? みたいなところまでお話できたらいいなと思います(2回に分けます)。数学が本当に嫌いな方は、式の部分を飛ばして読んでみてください。でも、きっと意味がわからないと思うので、やっぱり頑張って読んでください。

そもそもweb広告とは

 web広告とは、webに出ている広告のことです。そのまんまですね。SNSとかを使ってたら出てきますよね。街には広告が溢れていますが、webの世界も同じです。代表的なweb広告の種類(チャネルを見ていきましょう。ご存知の方はこの章を飛ばしちゃってください。

 まずは リスティング広告(検索連動型広告)について。「バイト」とか「賃貸」とかでググると、上位に [広告] って書かれたやつ出てきますよね。これがリスティング広告です。クリック課金(CPC: Cost Per Click)で、1クリック数十円から、高いのだと数千円・数万円するんだとか(バイト系は数百円くらいが相場です)。

 そして ディスプレイ広告(いわゆる バナー広告)について。メディアサイトとか見てると、さっきまで自分が見てた商品の広告とかがよく出てきますよね。「広告ってウザいから嫌いなんだよね」と言われがちなのは、だいたいディスプレイ広告だと思います。広告の全てが悪いわけじゃない、フリークエンシーキャップを設けない広告主が悪いだけ(怒)。クリック課金とか、見た数だけ課金(インプレッション課金:CPM)とかがあります。

 他にもSNS広告とかインフィード広告とか記事広とか色々ありますが、この2つだけ知っていれば大丈夫です。

では、どんな広告がいい広告なのか

 ざっくり言ってしまえば、少ない予算でたくさんのお客さんをひっぱってこれたらいい広告 です。資本主義社会における獲得広告では、費用対効果こそ命です。

 お客さんを1人連れてくる(= 商品を買ってもらう)のにかかった費用のことを CPA(Cost Per Acquisition)と言います。すなわち、CPAが安ければ安いほどいい広告 です10万円の広告を出したとき、もしCPAが1万円だったら、10人のお客さん(10CVs: Conversions)しか獲得できないわけですが、CPAが100円だったら、1,000人のお客さん(1,000CVs)を獲得できるわけです。これは素晴らしい広告です!

式で表してみましょう

 さてお待ちかね、数学の始まりです。数学いやだーーという方は半目で見守っていてください。
 話を単純にするために、CPC型(クリック課金型)の広告について考えます。

 今までの話を式にすると、以下の2つになります。

Costs = Clicks × CPC
CPA = Costs / CVs
(Costs = 費用、Clicks = クリック数、CPC = クリック単価、CPA = 獲得単価,、CVs = コンバージョン(獲得数))

 Costs は費用なので、Clicks(クリック数)と CPC(クリック単価)の掛け算で表されます。
 CPA は獲得単価なので、Costs(費用)と CVs(獲得数)の割り算で表されます。

 また「広告をクリックしたユーザーのうち、何人が商品を買ったか」というのを CVR(Conversion Rate)と言います。

CVR = CVs / Clicks
∴ CVs = Clicks × CVR
(右辺と左辺を移項)

 いっぱい英語3文字の単語が出てきますね。

 それでは、これらを使って、CPAの式を変形してみましょう

CPA = Costs / CVs
   = (Clicks × CPC) / (Clicks × CVR)
   = CPC / CVR

 はい、出ました。上記から、CPA は CPC と CVR の割り算で表されます。CPCが高くなればCPAも高くなりますし、CVRが高くなればCPAは低くなります。なぜなら、数式がそう語っているからです。

数学の入試問題みたいに考えてみる

 ここからが今日の本題です。
 一般的に、広告運用では費用を無駄にしないように、CPAを安く抑えたいと考えます。しかし、現実には「やばい!CPAが高騰している!!」なんてことが多々あります。本気で冷や汗をかきます。そんなときは 原因分析 をしましょう!

 ちょっと体裁を整えてみます。

問(1) アカウントAのリスティング広告において、直近のCPAが高騰している原因を分析し、説明しなさい。

 ほら、入試数学の証明問題みたい じゃないですか!わかりますかね、この感じ。問いが定まれば、あとは解法を探すだけです。青チャート読みましょう。赤チャートかも。以下は、実際にありそうな調査結果(解法)です。



CPAの公式より、
 CPA = CPC / CVR
なので、CPAの高騰 は、CPCの高騰 または CVRの低下 であると言える。以下では、それぞれ場合分けして調査する。

(i) CPC
CPCを調査してみると、やや高騰している。
CPCが高騰する理由は、概ね競合が入札を強めているか、自社の広告品質が下がっているかのどちらかである。
impression_shareを見ると、競合の出稿状況も大きくは変動していない。競合は入札を強めてなさそうだ。
しかし、広告ランクを見ると、やや平均点が下がっている。
クリエイティブチームに確認すると、直近広告文の入れ替えを行ったとのことであった。
それによって広告ランクが下落し、無理して出稿した結果、CPCが高騰したものと考えられる。
対応としては、クリエイティブの見直しを行う。

(ii) CVR
CVRを調査してみると、やはり下落している。
CVRが下落する理由は、サイト内の変更によってサイト全体のCVRが低下したか、CVに至りにくいユーザー・面にばかり広告を配信してしまっているかのどちらかである。
広告だけでなくorganicも含めたサイト全体CVRを見ると、特にCVRに変化はない。サイト全体CVR低下はなさそうだ。
広告アカウントをキーワード(KW)単位で調査してみると、特定のKWのみ異常にクリック数を増やしていることがわかった。
そのKWでググってみると、話題急上昇のアイドルグループと名前が被っているらしく、それによってユーザーが誤クリックしてしまっているとわかった。
つまり、CVに至りにくいユーザーの誤クリックが増え、CVRが低下したものと考えられる。
対応としては、該当KWを完全一致で除外登録する。

(i)(ii)より、今回のCPAの高騰は、CPCの高騰 および CVRの低下 の両方が原因と考えられ、広告クリエイティブの見直し および 特定KWを完全一致で除外登録する対応を取る。

Q.E.D.

 以上が回答例になると思います。間違いや別解があれば、ぜひ(やさしく)ツッコんでください。専門用語もちょこちょこ入れてますが、雰囲気で読み取ってください。

さいごに

 web広告の概要から、CPA高騰の原因分析まで行ってきました。いかがでしたでしょうか? 広告運用にはいろいろな指標や式が出てくるので、数学が好きな人にとってはすごく楽しい領域かと思います。

 もちろん広告運用には数値分析だけでなく、ユーザーインサイト分析やクリエイティブ作成など様々な業務がありますので、数学が苦手な方でもご安心くださいね。

 次回は、CPAだけでなく「広告経由売上」も考慮した利益額の最大化について、微分積分を用いて説明していこうと思います。お楽しみに!

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