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MBA受験カウンセラーの選び方

海外MBA受験にあたっては、日本人の場合、程度の差はあれ、MBA受験カウンセラーを使うことが一般的です。

本記事は、どんなMBA受験カウンセラーが望ましいと考えられるかについての考察です。

なお、本稿では、エッセイカウンセラーではなくMBA受験カウンセラーとの呼称で統一します。

エッセイの重要性は、彼ら自身の商売道具としてやや誇張されていることが一般的で、エッセイ以外も含めた包括的なMBA受験支援にこそ本来の価値が発揮されるべきとの考え方からです。

これは、私の所属するIESE(イエセ)が筆記式のエッセイに他校ほどに重みを置いていないであろう事実に基づいてではなく、あくまで一般的な内容として指摘しています。

また、そもそもここではMBA受験カウンセラーを使うか使わないかという選択肢については、議論しません。


私が活用したMBA受験カウンセラー

海外MBA受験期に、私は英国人の某MBA受験カウンセラーを活用しました。

今、この分野で活動されているのかはよくわかりません(最近の実績を特に聞かないので、活動していない可能性の方が高そうです)。

当時ですら知名度が高かったわけではありませんし、他に活用している知人に出会うことはありませんでした。

それでもこのMBA受験カウンセラーを活用したのは、主に以下の理由です。

・時間制ではなく定額制でその価格がとてもリーズナブルだった

・ジャーナリストとしての顔も持つ同氏の、英語での文章・論理構成能力、注意深さに期待した

・人柄に信頼感を持つことができた

彼の弱みは、各校についての知見が限定的であることとMBA卒業後のキャリアに明るくないことでしたが、前者についてはその情報収集は自分で十分可能かつ他人に依存すべきでないと判断し、後者についてはやや悩んだものの後述の代替手段に賭けることにしました。

定額制であるのを良いことに使い倒して、その節は、感謝しきれないほどに大変お世話になりました。

但し、当時と自分の能力が同じであるという前提でもう一度今海外MBA受験をするとして、今の外部環境でMBA受験カウンセラーとして彼を選ぶことはないかもしれません。

なぜでしょうか、特に論点1に繋がります。

論点1:英語ネイティブであることの必要性

MBA受験カウンセラーは英語ネイティブである必要があるのでしょうか。

ChatGPTで良質な英文に仕上げることが極めて簡単な世の中になりました

他方、AI全般に言えることですが、AIに適切な指示を与え、かつ、AIが完遂した仕事の成否を自分で見極められる力が不可欠です。

この見極め力に自信がない受験生も一定程度いるでしょうが、それでもなお、その見極めをするのが、巷のネイティブチェックなどよりも明らかに高価な英語ネイティブのMBA受験カウンセラーであることを正当化する理由としてはやや不足している印象です。

ということで、MBA受験カウンセラーが英語ネイティブである必要は大幅に減ってきているのではないでしょうか。

日本人受験生の提出するエッセイやCVで使われている英語は、文法的に間違いがないことを前提に、東アジア以外の他国の受験生比で平易な英語が使われていることが一般的です。

これは、日本人MBA受験生は案外気づいていない点かもしれません。

実際、日本を対象にしているMBA受験カウンセラーが日本人受験生にそれをはっきり伝えているとは思いませんが、その受験生の本来の英語力との間で乖離が大きくなりすぎないように、そしてそれが面接段階で露呈しないようにするための配慮の結果というのが最も自然な解釈でしょう。

それは、私が自分のみで十分書けるレベルかChatGPTの直しも限定的で済むであろうレベルが殆どです。

したがって、英語ネイティブであることの価値がMBA受験カウンセラーとして一層発揮できるのは、筆記式ではないビデオエッセイとインタビューになるでしょう。

しかし、これはあくまで筆記部分との比較での話です。

筆記部分以外の英語についても、英語力と内容面への指摘を含む指導力は一定程度分離されるべきで、つまり英語ネイティブがこうした指導力に英語ノンネイティブより優れているとは全く限りません。

では、英語面での指導ができない日本人のMBA受験カウンセラーをどう評価すべきでしょうか。

日本語と英語は表裏一体の関係にあるわけではなく、論理構成や発想も大きく違うので、例えばChatGPTが遂行した作業を再評価できる力がMBAカウンセラー自身に欠如しているというのは危険に感じられます。

同じ理由で、MBA受験カウンセラーと日本語で完璧なエッセイを作り上げてから英語ネイティブで翻訳が可能なMBA受験カウンセラーにそれを依頼するという手法も危ういでしょう。

受験生時代の私のように一貫して英語で過程を完遂するか、日本語と英語を行き来しながら完成に近づけることが望ましいでしょう。

論点2:卒業後のキャリアについての知見

私から見て、日本を対象にしているMBA受験カウンセラー間で最も質の差を見て取れるのが卒業後のキャリアについての知見です。

他国比で、社費受験生が半分かややそれを上回る独特な市場であることと元々キャリア志向が薄めな国であることなどを背景として、日本人MBA受験生の卒業後キャリアについての感度はやや低いです。

(とはいえ、最近は、各種媒体の発達による得られる情報ソースが増えているので、数年前ほどではないようにも見て取れます)

いずれにせよ、上記背景以外に、もう1つ感度が低いことの理由があるとしたら、MBA受験カウンセラー側の知見であると考えられます。

なぜMBAに行くべきかを考えるにあたって、海外MBA後のあり得るキャリアから逆算するのが基本動作となりますが、それにあたり昨今の市場環境や卒業生の事例に明るくないことは、MBA受験カウンセラーとしての指導にあたり致命傷になるというのが私の考え方です。

言い換えると、海外MBA卒業後に何をしたいか受験生自身に気づかせる役割は外部環境に明るくなくても対話を通じてできるかもしれませんが、需要側と供給側両方の視点を揃えないと真に適切な指導はできないということになります。

既に記載した私のMBA受験カウンセラーのもう1つの弱点は、この点にありました。

この点に対処すべく、MBA採用市場に明るいヘッドハンターとコミュニケーションを取るなど独特な動きを取っていて、それ自体が間違っていたとは思いませんし与えられた洞察に感謝していますが、それでもこの点の示唆に富んだMBA受験カウンセラーが更に理想だったと今では感じます。

ちなみに、例えば海外MBA採用にあたり新型コロナウイルスを経て位置づけがそれなりに変わったと言えるであろうボストンキャリアフォーラムについて、その重要性を今もなお声高に説いているようなMBA受験カウンセラーなどは、過去の知識からの更新が限定的な可能性が高い良い例でしょう。

なお、当然ながら本論点について社費受験生は私費受験生ほど考慮する必要がないはずです。

論点3:海外MBA入学審査官とのコミュニケーション

日本に限らず、自分の中での一定の基準を満たすMBA受験カウンセラーと時折話すようにしていますが、私からのその申し出に反応しなかったり断るMBA受験カウンセラーもいます。

当該MBA受験カウンセラー側の実績に鑑みて、IESE(イエセ)と組む旨みを感じられないからという事情もあるかもしれないので、一概に否定的に捉えるべき事象ではないことは十分理解しています。

但し、そういった場合を除いては、海外MBA入学審査官とコミュニケーションを重ね、直近の受験プロセスやプログラムの大きな変更や潮流について明るくなっていないことは指導力の欠如に繋がるでしょう。

同様に、MBA卒業生自身がMBA受験カウンセラーの役割を担っていて、そういった努力をせず、卒業が10年以上前なのにその当時の受験経験に基づいてのみ指導しているという例もあったりしますが、相対的にそういった方の指導力は劣るでしょう。

他方、海外MBA入学審査官と共催イベントをやっているから、単にミーティングの実績があるからとか、そういった表面的な部分で判断すべきではありません

海外MBA入学審査官がMBA受験カウンセラーに何かしら内容を共有したとしても、それを咀嚼して適切な助言に還元する力に関して、各MBA受験カウンセラー間にそれなりの差があることに私は気づいています。

また、そもそも海外MBA入学審査官としての経歴を持つMBA受験カウンセラーには、経験及びネットワークという意味で明らかに一定の優位性があるでしょう。

論点4:合格実績

合格実績に錚々たる学校名が並んでいれば一見魅力的に感じられるでしょうが、一歩立ち止まって考えるべき点に思われます。

海外MBA受験において、エッセイの価値が誇張されている可能性については既に指摘しましたが、それに紐づく内容として、海外MBA前の職歴の影響力を軽んじるべきではありません。

それを念頭に、いわゆる受験生の経歴やスコアを前提に契約時点で足切りを行っているMBA受験カウンセラーが複数います

そんなMBA受験カウンセラーの実績が華やかな学校のオンパレードとなることに特段違和感はありません。

合格実績から価値を見いだせるとしたら、受験プロセスを含めてその学校に一定の知見があるという点であると考えられますので、合格実績から安易に間違った見方に走らないことをお勧めします。

また、海外MBA受験においては、市場環境の変化や学校側のポリシー変更などに伴い、数年以上前の受験での経験というのが役に立たないこともままあるため、その合格実績が古いものである場合にもやや留意が必要です。

それならば、実績はまだ乏しいけれど、新進気鋭のMBA受験カウンセラーの方が適切な場合も十分にあるでしょう。

論点5:クリティカルシンキングと注意深さ

英語面とは別に内容面の指導力に優れているかに関わる点として、論点2-4を列挙してきましたが、それ以外に、言語が何であれ受験生のアウトプットに対して疑問や反論を投げかけられる力も必要でしょう。

例えば私が日本人MBA受験生に対して、エッセイに記載された内容から派生してごく自然に疑問に思ったり論理の飛躍を感じる部分を面接で問いかけて受験生が答えに窮するということが時折あります。

(私が出願後に面接差し上げる受験生の大半は日本人以外ですが、それでもそれなりの経験は日本人MBA受験生に対しても蓄積しています)

日本人受験生が議論に慣れておらずアドリブでの返しに弱いという側面もあるでしょうが、日本人受験生の本来の準備にかける入念さを踏まえると、なぜこのようなことすら答えられないのだろうと戸惑ったりもします。

その答えがあるとしたら、MBA受験カウンセラーの指導力、特にクリティカルシンキングである可能性が高いです。

上記の例は、たまたま面接での場面でしたが、MBA受験カウンセラーのクリティカルシンキング能力の欠如ゆえにエッセイの完成度が低く、結果面接に呼ばれないといった場合もままあるでしょう。

メディアなどで外部発信を積極的にしているMBA受験カウンセラーの場合、契約前にもこの点については、十分に判断可能でしょうから、吟味の時間を持つことをお勧めします。

MBA受験カウンセラーとしての一般的な注意深さについても同様のことが言えます。

例えば、以下の記事でも例として指摘しましたが、”DX”ではなく"Digital Transformation"という表現を使うべきところを見逃さず修正できるか、同一文書内でのフォントのずれなどに気付けるかといった点など、例は無数に考えられます。

但し、その受験生自身のクリティカルシンキング力や注意深さが著しく低い場合、その吟味の質自体も低いことも考えられ、結局これ自体が無意味な助言となってしまうかもしれません…

論点6:人間的な相性

人生の大きな分岐点になり得る局面への伴走者を選定するということにもなりますので、当然、恋人選びのような形で、理屈を超えた人間的な相性についても一定程度考慮されるべきでしょう。

(私はあまりそうではないですが)どんなに正論をぶつけられてもその伝え方次第で受け入れがたいといった性質を強く持つ受験生もいるでしょうし、精神的な拠り所となるために心を許せることの重要性は、過酷なことが少なくない海外MBA受験において看過されるべきではありません

肝は、ともすれば言語化が困難とも言える人間的な相性を考慮しつつも、過度な力点を置きすぎず、他の論点についても適切な考察を重ねることではないでしょうか。

一定程度の意思決定において一般的に言えることでしょうが、論理と感情が適切に混ざりあった判断が望ましいでしょう。

まとめ

これ以外にも、サービスが定額制か時間制か、GMAT/GREやTOEFL/IELTSの対応までカバーするかどうか、返信速度が自分の許容範囲か、本人が海外MBA卒業生か、など細部で色々考慮すべき点があるでしょうが、これまでの論点より私が踏み込む必要性の低い点と判断し、割愛します。

いずれにせよ、今回は特に海外MBA入学審査官としての視座に重みをもたせつつ、一卒業生としての視点も一定程度取り入れてみました。

今回提示した論点の多くの部分は、MBA受験カウンセラーとの本契約前の自発的な調査、及び面談における適切な質問の投げかけによって確認できることでしょう。

これらを踏まえて、私だったら絶対にこのMBA受験カウンセラーを選びたい/選びたくない(選んでほしい/選んでほしくない)といった思いもありますが、さすがにそれは書けないのでここまでにしておきます。

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