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ミッションとバリューの役割

ミッション・バリューとは?

ミッションとは、その企業や組織や持つ「使命」のことです。
「何を実現したいがために、自分たちの企業や組織は存在しているのか?」という存在意義そのものを示します。

バリューとは、企業や組織の「理念」のことです。
ミッション(使命)の実現に向けて努力する過程で、大切にするべき絶対的な価値観を指します。
企業・組織に限らず個人でもそうですが、「究極的な目標が達成できれば何だってよい」ということではなく、「どういう姿勢でミッション達成に取り組むか」こそが生き方を体現します。

経営理念のお経化現象

大手、中堅、ベンチャー企業と様々な企業でこのミッションやバリューに当たるものが掲げられています。
しかし、その多くがただのスローガンとして掲げられているだけになっているのではないでしょうか?

(試しに、ご自身が所属する(あるいはしていた)企業のミッションやバリューを思い出してみてください。おそらくほとんどの方が「なんだったっけ?」となると思われます。)

もっとも、ミッションやバリューを知らなくても「なにも困らない」というのも確かです。
理由はふたつあります。

ひとつは、ミッションやバリューでは「飯は食えない」ということです。
経営理念を唱和する時間があるなら、お客さんのところを訪問したり、商品の改善案を考えたり、競合を調べたり、もっとやるべきことがいくらでもあります。

私も以前は、「ミッションやバリューみたいなフワフワしたものに時間を割く暇があったら、もっと具体的に、戦略やオペレーションを検討するべき」と考えていました。(今は少し考えが変わりました。後述します。)

何かにつけて「経営理念」を説く経営者の中には、具体的な施策を問われると言葉に詰まったり、やましいことを有耶無耶にするために大義名分を掲げていたりする人もいます。

ふたつめは、ミッションやバリューは本来、わざわざ「意識させなければならない」ものではないからです。(立ち上げ期や変革期は例外です。)

冒頭で申し上げたように、ミッションやバリューは企業・組織の根幹をなすものです。(少なくとも、本来の意味では。)
それ自体はスローガンのようなものですが、それが事業、戦略、組織経営、企業文化といった形で具現化されて企業経営は成り立っているはずです。

もし、会社のミッションやバリュー見直してみて「しっくりこない」のであれば、経営理念か企業経営のいずれかを見直さなければなりません。
「経営理念ではきれいな言葉を掲げているけど、実は・・・」という組織ほど、不正や隠蔽が起こりやすいです。

なぜミッションとバリューが大事なのか?

ではなぜ、ミッションとバリューは大事なのでしょうか?
経営という枠組みで捉えた時に、どのような役割を果たすのでしょうか?
もし、合理的な役割がないならば、なくてもよいのではないでしょうか?

先ほど申し上げた通り、平常業務ではミッションやバリューがなくても困ることはほとんどなく、ありがたみを感じる機会はないと思います。
効果を発揮するのは、「答えが出せない課題に向き合うとき」です。

ひとつ簡単なケースを考えてみましょう。
中価格~高価格帯の商品を扱う大手企業が、低価格帯の商品を扱う新興企業(いわゆるディスカウンター)の台頭で業績を落としているとします。
市場も中価格~高価格帯は右肩下がりで、成長市場である低価格帯市場にどんどん食われています。

そこである役員(A氏)が、「我々も低価格帯ブランドを投入し、成長市場に参入するべきだ!」という提案を行いました。
社内からは「よく言った!」と理解を示す声もあれば、「そんなことをしたら、ますます既存顧客が離れてしまう」、「低価格帯プレイヤーとはビジネスモデルが違い過ぎる。そんなに簡単に真似できない。中途半端に終わるのではないか?」という懸念の声も出ています。

A役員への反対意見として、古株のB役員が「低価格帯に参入すると売上は維持できるが、利益率が大幅に下がってしまう。この際、高級路線で事業を展開し、売上を絞りながらも利益をしっかりと確保するべきではないか?」という反対意見を述べました。

皆さんが社長(最終意思決定者)であったとしたら、A氏とB氏のどちらの意見を採用しますか?

もちろん、市場や競合の状況を調べて、双方が主張する事業展望の将来性や実現可能性を精査し・・・というアプローチは最低限行うべきです。それではっきりと白黒付けばよいのですが・・・、難しい局面ほどそうはならないケースが珍しくありません。

論理的に考え抜いても答えが出ない状況では、思い切って決断を下さなければならないこともあります。それこそが経営者の仕事でもあります。
この時、決断の「拠り所」となるのがミッションとバリューと考えます。(星占いとかはダメです!)

企業として「広く社会全体に商品・サービスを提供する」というのであればA氏、「高品質な商品・サービスを提供する」というのであればB氏の考えに近いでしょう。

加えて、トップとしての決断を組織全体に納得させなければなりません。
A氏、B氏のいずれの案を採用しようとも、「社長の決断は間違っている」という意見を持つ人は少なからずいるでしょう。
どんな結果になっても後付けで好き勝手に評論する人はいますが、それが組織の中の重要人物となると話は別です。
「納得できないから」と非協力的な態度を取り続け、それが組織に蔓延すると、うまく行くものもいかなくなってしまいます。このように「予言の自己成就」が起こってしまうととても厄介です。

戦略が間違っていれば修正すればよいですが、どれだけ正しい戦略であったとしても、組織全体が同じ方向性を向いて進まなければ、絵に描いた餅になってしまいます。
このような事態を避けるためにも、ミッションとビジョンの起点として組織全体を動かすことが欠かせません。

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