ふたごリスのテッテとトット
太陽の光が差し込む明るい森で、ふたごリスのテッテとトットが暮らしていました。男の子リスのテッテは、かわいいものが大好きな臆病者。女の子リスのトットはかっこいいものが大好きな力持ち。正反対の二匹ですが、一番の仲良しでした。
今日はパパとママに手を引かれ、幼稚園の入園式です。いつもよりちょっとおめかしをして、もりのき幼稚園へと向かいます。森はすっかり春模様。あちこちでたくさんのお花が咲いています。
「ママ! あのねあのね、このお花はなんて言うの?」
「ねえパパ! 石っころを持ち上げたら変な虫がいたのよ!」
二匹は、初めて見る春の森に大興奮! パパとママはそんな二匹をにこにこと見守っています。
そこへ、同じもりのき幼稚園に通ううさぎの親子がやってきました。うさぎのママとリスのパパとママはすっかりおしゃべりに夢中です。その間に、テッテとトットはどんどん森の奥に入っていってしまいました。
「ねえトット、パパとママがいなくなっちゃったよ」
「本当だわ。もう。パパもママもおっちょこちょいなんだから」
テッテとトットは森の探検はいったんやめにして、パパとママを探すことにしました。でも、おうちの周りより遠くへ行ったことのない二匹には、ここがどこだかちっともわかりません。テッテはどんどん不安になって、トットにくっついて歩きました。トットはテッテを安心させようと、怖いのを必死に我慢しました。
風がびゅうびゅう吹いてきて、二匹の小さな体を凍えさせました。テッテもトットもお腹がすいて、もうこれ以上歩けません。
「あらあら、こんなところでどうしたの?」
凍える二匹に、優しそうなキツネのおばさんが声をかけてきました。
「あのねあのね、わたしたち、道がわからなくなっちゃったのよ」
「もりのき幼稚園まで行かなきゃいけないんだ」
「それならおばさんについておいで」
これで安心ね、と、二匹はキツネのおばさんについていきました。でもなぜか、おばさんはさらに暗い暗い森の奥へと入っていきます。おかしいなあと二匹が思った時、子ギツネたちの笑い声が聞こえてきました。
「お母さんが帰ってきたよ!」
「わーい! 今日のお昼ご飯はなんだろう?」
「おなかがすいたなあ」
テッテとトットはびっくりして慌てて逃げだしました。キツネのおばさんは逃げる二匹を追いかけます。
びゅんびゅんと、今までにないくらい早く二匹は走ります。そしてやっとの思いで暗い暗い森を抜けました。キツネのおばさんはもう追いかけてこないようです。二匹はホッとして、へたへたと座り込んでしまいました。
「おーい、テッテ! トット!」
二匹を呼ぶパパの声が聞こえてきました。テッテとトットは声の方へと走っていきます。夢中で走っていたおかげか、いつの間にかもりのき幼稚園まで来ていたようです。幼稚園の前では、大好きなパパとママと、それからお兄さんお姉さんリスのタッタとチッチとツッツが待っていました。
みんなが変わりばんこにテッテとトットをぎゅーっと抱きしめました。
それから、今度は勝手に森の奥に入っちゃいけないよと約束をしました。パパとママも、テッテとトットの手をぎゅーっと握って離さないよう、約束しました。
おしまい
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春の毎日朗読会 開催中!
◆日時◆
4月中毎日22:45頃
◆場所◆
鳥谷部城のLINELIVE「とりっぴらいぶ」
https://live.line.me/channels/4844435
※LINE LIVEのアプリを入れていただくのをおすすめいたします
◆内容◆
本noteに投稿された短編を、その日の夜に朗読いたします。一読だけでどこまで表現できるかの挑戦です。よろしければぜひご覧ください!
↓詳細は、Twitterをご確認ください。
【脚本】たかはしともこ(@tomocolonpost)
https://twitter.com/tomocolonpost
【出演】鳥谷部城(@masakimi_castle)
https://twitter.com/masakimi_castle
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