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【息子のサッカーを見て、見えてきたこと Vol.61】興味深いデータの比較

こんにちは!

今年の夏、いくつかのビッグクラブが来日し、Jリーグのクラブと親善試合を行いました。

そのうちの1試合に行きましたが、7月の夜、湿度も気温も高く、欧州のクラブには酷な環境ではありましたが、技術の高さや戦術の強みを発揮していました。

そんな中、Jリーグから興味深いレポートが発行されているので、触れたいと思います。

『「J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER」~Jリーグと世界との差は何か~』という点について、東京大学や筑波大学のアナリティクスチームをメインとして分析を行っています。

詳細はレポートを見て頂くとして、私が印象に残ったのは以下の点です。

■横浜Fマリノス対マンチェスターシティ

・裏抜け数:横浜Fマリノス「44」・マンチェスターシティ「82」

・アタッキングサードでのロスト後5秒未満のリゲイン数:横浜Fマリノス「1/9」・マンチェスターシティ「7/20」

・バイパス数:横浜Fマリノス「412」・マンチェスターシティ「882」

PA付近でボールホルダーを追い越し、最終ラインに対してアクションを続ける――シティの選手たちが示しているPA内への裏抜けなどのオフェンシブアクションは、世界を目指す上で重要な指標の1つになり得ると考える。

J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER

シティの総数33回のうち5秒未満のリゲイン数は11回。アタッキングサードに限定すると20回のうち7回が5秒未満であった。逆に横浜FMは総リゲイン数30回中5秒未満リゲインは6回、アタッキングサードでは総数9回のうち5秒未満リゲインは1回のみだった。

J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER

ビルドアップの局面でシティのCBの「飛ばすパス」が大きな役割を果たしているのは確かだ。

J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER

個人的に感じるのはマンチェスターシティは、世界最高の監督が世界最高の選手たちを指揮しているチームだと言う点です。ここはあまり議論の余地がないと言っても差し支えないはずです(彼らのフットボールを好きか嫌いかは別にして)。

ポゼッションを前提にしていますが、常に裏を意識しているからこそ、怖さがあります。それはディフェンスやゴールキーパーからも一発で裏を取るという動作にも繋がっています。

守るディフェンダーが裏を意識するとレイオフ(落としのプレー)に対するアクションが遅れます。これにより、ポゼッションの精度を高めることができそうです。

また、常に攻撃しているように見えるのは、ボールを失った後に、早急に取り返すことができているからです。最高の技術を持った選手たちにこの戦術を徹底できるのもペップの優れている点と言えます。

■川崎フロンターレ対バイエルンミュンヘン

・パスを受けた時の直近相手選手距離(ミドルサード):川崎フロンターレ「5.93m」・バイエルンミュンヘン「7.01m」

・パスを受けた時の直近相手選手距離(アタッキングサード):川崎フロンターレ「4.17m」・バイエルンミュンヘン「5.57m」

・裏抜け数(※90分換算):川崎フロンターレ「114回」・バイエルンミュンヘン「160回」

・裏抜けのトップスピード平均:川崎フロンターレ「23.6km/h」・バイエルンミュンヘン「27.4km/h」

川崎Fの選手の裏抜けはどれも比較的直線的に長い距離を走るものが多かったのに対して、バイエルンの選手が短い距離を斜めに抜けようとしていた試合の状況を如実に反映していると言えそうだ。直線的なスプリントでは相手を振り切ることが難しく、それゆえ中・長距離の中での駆け引きを余儀なくされる反面、120度以上の角度変化であればDFにとっても対応しづらくなる。逆に考えればそのように距離やタイミングを絞っているからこそ、ピンポイントで27.4km/hもの高出力が可能になっていると推測できる。

J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER

裏抜け数の多さは、横浜Fマリノスとマンチェスターシティとの試合でも明確な違いになっていましたが、ここでも両者に違いがありました。

しかも、平均速度もバイエルンミュンヘンの方が早いですし、引用に記載したように、バイエルンミュンヘンの方が角度が大きく、ディフェンダーが掴みづらい状況が多かったと言えそうです。

また、パスを受ける選手間の距離がバイエルンミュンヘンの方が長いです。恐らく平均的なパススピードも速いでしょう。結果として、守備者はより広範囲をカバーすることになり、間やスペースが生まれてきます。

■総括コラムから

フィジカルデータまたは戦術データの分析を進める際に、大前提として知っておかなければならないことがある。それは「データで優れていることが勝利に直結するとは限らない」、そして「あらゆるデータは自チームの戦術、相手チーム、環境など不特定多数の変動要素に依存し、あくまで両チームが勝利を目指しプレーした後に生まれた副産物に過ぎない」という至極、当たり前の事実である。

J.LEAGUE TECHNICAL REPORT 2023 SUMMER

浦和レッズの林さん(コーチ兼分析担当)が語っている上記のコメントが示唆に富んでいます。
データは副産物に過ぎない、それを目的化しても仕方がないというのは参考になります。

但し、客観的な情報を与えるのもデータであるという事実も見逃してはいけません。

動きの質という言語化しにくいものが、今回、実際に対峙することで見えた部分でもあります。この質を分解し、結果として展開されるフットボールの質を高めることはフットボールの指導に携わる人間の使命だと改めて感じました。

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