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息が苦しくなって、最後まで観きれなかった映画

息が苦しくなって、最後まで観きれない映画があった。

「シンドラーのリスト」

スピルバーグ監督で1993年公開の映画。

第二次世界大戦時にドイツによるユダヤ人の組織的大量虐殺(ホロコースト)が東欧のドイツ占領地で進む中、ドイツ人実業家オスカー・シンドラーが1100人以上ものポーランド系ユダヤ人を自身が経営する軍需工場に必要な生産力だという名目で絶滅収容所送りを阻止し、その命を救った実話を描く。
#ウィキペディアより

歴史を改めて勉強しなおしているのですが、先日第二次世界大戦について改めて学びなおしたところに、TVでこの映画を紹介しているのを見たのです。

たまたまだけど、この記事を書いているいま。フィギュアスケートの宮原知子さんの曲がまさに、“シンドラーのリスト”でした。

この時期の世界事情はおもしろくて、様々な国のそれぞれの“正義”が紆余曲折の中、主張しあい、ぶつかり合っています。
当時のドイツにも、当然ドイツなりの正義がありました。
ナチスが描き広めた正義。人種による選民思想というストーリーは支配人種にあたる人々に広く浸透していったのです。

そうした正義の中で、遂行されていったホロコースト。
映画では、まさにユダヤ人がドイツ軍に追い立てられるシーンが描かれています。

人として扱われないユダヤ人たち。だけどその一人ひとりには家族があり、子どもがいる。逃げても逃げ切れずに捕まり、別れさせられ、殺される。

ただの映画としてなら、そこまで残虐なシーンは出てきません。
目を覆いたくなるような殺戮シーンがあるわけでもありません。それでも、これが実話であり、本当に、当時行われていたことであると思うと息がつまりました。

実際に、親子が引き離され、無情に殺され、恐怖の中に叩き落されていたのです。

子どもが産まれてから、こうした子どもが辛い目にあう映画や物語が本当に苦しく、苦手になってしまいました。
これが自分たち家族だったら。自分の娘だったら。なんて想像が消しても消してもどこかでよぎってしまうのです。


もうひとつ、映画を見ていて苦しくなってしまったことがありました。
それは、ドイツ軍を「非情な人々」として他人事に思うことができなかったこと。

戦時中に限らず、人々は自分の信じる物語(ナラティブ)を通して世界を解釈しています。
いまのぼくの物語の中では、ドイツ軍のユダヤ人に対する行いはありえない非情な行為です。だけど、たとえばぼくが同じ時代、同じ状況に立った時に「これは非情な行為だから、自分は絶対に加担しない」と言えるのだろうかと。そもそも、その行為をいまのぼくが感じているほどに非情な行為として認識することだって、できたのだろうかと思うのです。

たとえは悪いですが、自分たちの畑に湧いてでた害虫を根こそぎ退治して、まわりからは称賛される。そうした状況の中「虫だって生き物なんだ」と「薬をまいて殺すなんて、ひどすぎる」と真剣に考えることができるだろうか、と。

害虫とまではいかないまでも、当時のドイツ軍にとってユダヤ人は「人」ではなかったのかもしれません。

そして、「自分はユダヤ人に対してひどいことはしないんだ」という行動を取ることは、自分の命や、自分の家族を危険な目にあわせることでもあったはずなのです。

そんな中、見ず知らずのユダヤ人と、自分と自分の家族を天秤にかけ、守るべき存在を当然のように選んでしまうのではないか。ぼくは、その程度には弱い人間なのだということを、映画を見ながら突きつけられるような気がしたのです。

***

ホロコーストは、特別な人たちが起こした特別なことではなく。
それは、普通の人たちの普通の営みという歯車の中で行われた大惨事なのだと思うのです。

とくに、SNSの炎上を目にすると、ホロコーストが特別な人たちによる出来事ではないのだと思い知らされる気がします。

ミスを犯した人、責めるにあたいする人を見つけたとき。
しかもそれを多くの人が責めているのを目にしたとき。
人は自分の持つ「正義」を振りかざし、「正義」の名のもとにその人を叩きのめそうとします。
それは「意見」「忠告」「あなたのためを思って」などの枕詞をつけながらも、やっていることは言葉の短剣で相手の精神を斬りつける行為でしかないのです。

炎上に参加する人、見てみぬふりをする人。ホロコーストを無自覚に遂行した人々と、いったいなにが違うのでしょうか。

「ぼくたちは、大量虐殺なんて非人道的なことはしない。絶対にしない!」

という人ほど「こんな無責任な政治家は、徹底的に追求すべきだ!」「薬物に手を出した芸能人に、我々は裏切られたんだ! そう簡単に社会復帰なんかさせてはいけない!」と、正義を振り回して自分が誰かに傷を負わせているのだということを正当化してしまいそうな気がするのです。

***

シンドラーのリスト。
映像が美しく、感情をゆさぶる構成がすごく、1時間ほどでとめてしまいました。
でも、このあと改めてもう一度続きを見てみようかなと思います。

大きく俯瞰した学問としての歴史だけでなく、物語として歴史を学べるすばらしい映画。苦しい思いをしたとしても、最後まで観きる価値はあると思うのです。


では、また明日!


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