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娘の自尊心を溢れんばかりに満たすパパ。

「目を閉じておいてな」
5歳の娘が、ニヤニヤしながらぼくと妻に言った。

子どもが目を閉じておいて欲しいときは、こっそりなにかをしたいときだ。
それはいたずらのときもあれば、プレゼントのときもある。

今日はいったい、なにを企んでいるのかな、と思いながら目を閉じた。


ガタガタ・ばたん

なんだか騒々しい。ほんの少しだけ嫌な予感がしたので妻にそっと聞いてみた。
「なに、してると思う?」
薄っすらと目を開けた妻は娘の姿を見て言った。

「…なにも、してない」

なにも、してない。わざわざ目を閉じさせておいてそんなことはないだろうと、ぼくもそっと目を開けた。

娘の後ろ姿が見える。
なにやら、出したりしまったり、移動させたり、一歩下がっておもちゃ棚を眺めたりしている。

──あ、片付けをしているんだ

さっきまで遊んでいたオモチャを仕分けしながら、あれはコッチ、これはアッチとしまっている。
コップとお皿をシンクに持っていき、ぼくたちにバレないようにそーっと置く。

「まだ、目を開けたらだめやで!」

娘の声が少しずつ興奮し始めているのが、ひしひしと伝わってくる。
きっと自分が内緒でお片付けをして、ぼくたちがビックリするのが楽しみで仕方がないのだ。

こっそりと眺めている僕たちも、その姿にニヤニヤが止まらない。

子どもでも、大人でも、褒めるときはできるだけ具体的だと効果的だ。
「キレイになったね!」だけよりも「あ! ここに置いてあったオモチャもしまったんだ!」と伝える。その方が、自分がやったことに気が付いてくれているんだという気持ちがより高まる。

そーっと覗き見ながら、娘がこだわってしまっていそうなところをチェックした。
娘はなぜかブランケットを自分のデスクの下に放り込んだ。
色鉛筆をいったんおもちゃ箱にしまったが、少し考えて本来しまうべきお道具箱に入れ直した。
ソファの上に置いてあったTVのリモコンをリモコン立てにしまった。

すべてをしまい終わると「もういいで!」と大きな声で叫んだ。

改めて目を開けてみると、リビングは大人が片付けたかのようにキレイに片付けられていた。

そして、何よりも鼻の穴を大きく膨らましながら「なんてことないのよ。なにか、変わったことありました?」と言うような澄まし顔で立っている娘がいた。

よしよし、ここからが親の腕の見せどころだ。
その自尊心を、めいっぱい、溢れんばかりに満たしてやろうじゃないか。

目を閉じていたはずのパパの、まるで見ていたかのような具体的かつ秀逸な褒め殺しで承認欲求を崩壊させてやろう。

ぼくは、いつもの3倍の大げささで両手を広げて娘に駆け寄った。

***

今日も見に来てくれてありがとうございました。
わりと久しぶりに、ただただ娘が可愛かった、という記事を書きました。
こんなエピソードなら、いっくらでも書けるなぁ。
ぜひ、明日もまた見に来て下さい。


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