無名の素人のぼくが出版できるようになるまで。

有名人でもない。事業で成功をおさめたわけでもない。もちろんインフルエンサーなわけでも、SNSでバズったりしたこともない。

そんな自分だけど、ありがたいことに本を出版することになりました。
きょうは、どうして自分が本を出すことになったのか、その経緯を書きたいと思います。

正直に言うと、そこに特別な物語はなにもありません。
でも、「本を出したい」と思っていた2年前の自分が探しても見つけられなかった、事実ならある。べつに「無名の新人が本を出す方法」みたいなことはひとつも書けないし、当時の自分が読んだらがっかりしてしまうかもしれない。参考にならない、と。

でも、事実なんてそんなものなのかもしれない。
それに、これを書いている現段階では本はまだ発売されていません。

それこそ「無名の新人が◯万部のベストセラーを書くまで!」なんて記事を書ければぼくだってウキウキと筆が走りそうなものだけど、誰に知られることもなくひっそりと書店から消えていくだけのことかもしれない。毎日何百冊と発売される新刊の中の1冊に過ぎないのだから、その可能性のほうが高いわけです。

まだ発売もされていないのに言い訳めいたことを書いたけど、ひとこと断っておかなくてはならないことがあります。

この本をつくるにあたって、色んな方の力をたくさんお借りしました。ぼくがひとりで勝手に書いて、勝手に出版するわけではありません。とくに出版を決断してくれたディスカヴァー・トゥエンティワンの編集の方々は、ぼくの面倒な依頼やお願いにも文句のひとつも言わず力を尽くしてくれました。

このコロナ禍で、大変だった時期に何度もやり取りをしながら。いまも最後の完成に向けて日々やり取りを続けています。

そんなふうに、色んな人の期待も思いも詰まって、本は発売されます。
だから自分で「売れるかどうかなんてわからない」と匙を投げてしまうのは、あまりにも無責任だと自分でよくわかっているつもり。

だから、本題に入る前に(なかなか入らない)あえてここで告白すると。

この文章を書いていることだって、少しでも多くの人に本を手にとってもらうための、ぼくにできる、ぼくなりのアプローチのひとつ。

無名で、SNSなどの影響力も皆無に等しいぼくにできる、小さな戦略だ。

この文章を読んでくれた中の1%の人でも、本に興味を持ってくれたら嬉しい。その中の1%の人が実際に本を手にしてくれたらなおうれしい。そんなシタゴコロも抱えながら、一生懸命に書きたいと思います。


本を出したいと思ったキッカケ

本は想いを伝えていくための強いツールだと思った。

小さなNPOを起ち上げ、ゆるやかに活動をつづけて9年が立ちます。
活動のサイズはスケールしていなかったけど、関わる一人ひとりと丁寧に向き合う日々。シンドイ時期も長く続いた。それでも辞めようと思わずに続けてきたのにはわけがあります。それはいまの社会に伝えていきたい想いがあったから。

「ただいま!」って笑顔で帰りたくなる家庭であふれた社会にしていきたい。
このことだけを思いながら活動を続けてきました。

ぼくはすこしずつ講演会や講座に講師として立つようになり、サービスを提供し、事業を継続させていきました。事業を通して提供する活動はすべて、自分の想いから紡がれていきました。

そうした活動を続けるなか、ひとつの手段として本を出版する、ということを考えるようになったのが2年前。

ぼく自身、自分の中にある価値観の多くを様々な本による影響で育んできました。
それはエンターテイメントとしてだけでなく、すぐに使えるノウハウというだけでもなく、生き方や岐路に立ったときの選択肢にまで影響を受けていた。

そんなぼくにとって、本というのは想いを受け取るとても強いツールのひとつだった。

これまでは。

自分が本を書くことになるなんてことを、想像すらしていなかったぼくは、それが想いを伝えるための強いツールになるとは考えてもいませんでした。

本を出すことに要素がなにか必要なのだとしたら。ぼくには思いつく限り、その要素が足りなかった。あったのは、伝えたい想いだけでした。

まったく企画に通らない!

自分の「想い」だけじゃ出版できないという壁

だけどある日。いまから確か6年ほど前。とつぜん「本を出しませんか?」と一本のメールが入りました。

自費出版の会社からの営業メールは、しょっちゅう来ていた。でもそこは、誰もが知る大手出版社。そのメールをもらってはじめて「本を出す」ということが、自分のなかで現実として色味を帯びた気がしました。


当時のぼくは知らなかったけれど、打診が来たからと言って出版が決まるわけではありません。連絡をくれた担当者さんと共に、企画を練り込み、会議に通らなくてはならなかったのです。

もちろん「面白そうですね」だけでは企画は通らず、どんな人達が買うのか、売り場はどこに置かれるのか、どんな類書があるのか。企画を通すために細かなプレゼンポイントがありました。

この時の企画は、3回企画会議に落ちてしまった。

色々と原因はあるのだと思うけど、ぼくが知っている中でハッキリした原因がひとつありました。

それは、「そんなターゲットはいない、もしくはニッチすぎる」ということ。

企画は、NPO法人tadaima!で推進していた「家事シェア」についてを書籍にしようという内容。それ自体はべつによかったのですが、ぼくはターゲットを「パパ」に固執し続けました。

当時からパパ向けの育児本などもあったし、決して無理なターゲットではないと思っていました。だけど、パパに読んでもらいやすいようにビジネスに絡めましょうとか、家事のノウハウ(時短家事やお手軽家事など)を盛り込みましょう、という担当さんからの提案をぼくは受け入れられなかった。

家事をすることが、仕事力の向上につながる。当時は雑誌なんかでもそんなことがよく言われていました。ただ、ぼくはそれってちっとも本質的なことではないと思っていたし、講演会などでもそうした風潮をバッサリと切り捨てていたのです。

時短ノウハウなども同じで、それだったらぼくよりも詳しい人が山程いるのだから、自分が中途半端な知識で書く必要はないよな、と思っていた。

あげく、会議に落ち続け、やはりターゲットを変えようということに。
そのときにぼくが提案したのは「ママが買って、パパに読ませたくなる本」だった。

そういった本だってたくさんあるだろう。でも、それだけを狙うのはあまりにも無理があったのかもしれない。

結局。企画は通らずにそのまま頓挫してしまったのです。


こうした話がその後2回ほどあり、そして。すべて企画を通すことができずに終わってしまいました。


企画書をつくって売り込み開始!

売り込んだら思いがけない機会を得られた

企画に落ち続けて数年。すっかり本を出すなどということは忘れて過ごしていました。でも、東京から京都へと移住することになったとき。想いをちゃんと伝えるためにどうしたらいいかと考え、再び出版するということを考えるようになりました。

前回の企画に落ちた苦い経験があったので、家事シェアだけにこだわるのを辞めて、モヨウ替えのノウハウを伝えるような企画にしました。いま改めて見てみるとずいぶんと荒い企画だなと思いますが、ここに置いておきます。ご興味あれば御覧ください。

実際にこれまでお世話になったことがあるいろいろなメディアへと持ち込みをしてまわりました。
メールをして、興味を持ってもらえたら会いに行って話をするといった感じです。

残念ながら企画の持ち込みはすべて出版には繋がりませんでしたが、「まずはウェブメディアで連載してみませんか」というありがたいご提案をいただき、模様替えの連載をさせていただくことになりました。

ひとつがAERA.dot。もうひとつがLIFULL HOME'S。大きなメディアで連載をさせていただくことができるようになったのは、本当に大きな経験になりました。


「吉報です! 企画が通りました!」

とはいえ、なかなか出版も決まりません。そんなに簡単じゃないよなぁと思っていた頃にとつぜん、ディスカヴァー・トゥエンティワンからご連絡を頂きました。

「出版しませんか?」

と。まだnoteをはじめる前。がんばって更新し続けていたNPO法人tadaima!のHPを見てのご連絡でした。

そのメールを頂いた1時間後には、返信のメールに企画書を添付して送信。「はやっ!!!!」と驚かれました。それもそのはずで、すでに企画書はできていたのですから。

その後、実際にお会いしてお話し、「企画が通るようにがんばりますね!」となりました。ここまでは何度か経験のあるデジャヴュのような状態。

ところが、その次に来たメールには、「吉報です!企画が通りました!」とタイトルにあったのです。


企画は、家事シェアじゃなくてモヨウ替えの書籍としてだった

ただし、企画は「家事シェア」ではなくて「部屋づくり」に絞る、ということでした。その一文を見たとき、正直気持ちが沈んでいったのを覚えています。

これまではそれで企画を落としてきました。今回もぼくが納得をしなければ結局企画は見直しということになったでしょう。

だけど、家事シェアと部屋づくりは両方ともぼくの中の中心にあって、切っても切り離せるものではありません。ぼくが書く以上、それは比重の問題であって家事シェアに触れないわけにはいかないのだと思いました。

すでに企画もOKが出ています。あとはぼくがその話に乗ることができるかどうかだけです。

そのことをもう一度出版社に伝え、「部屋づくりを軸にしながら、大切な家事シェアについても言及していきましょう」ということになりました。


結果的には、しっかりと家事シェアのことにも、部屋づくりのことも書くことができました。でも、執筆には2年近い時間がかかったのです。ぼくは長文を書くことができず、書きたいことをまったく言葉にすることができませんでした。
最初の1ヶ月で10,000文字ほどの原稿をなんとか書き終え、そしてぼくは途方にくれました。

これ、何文字書いたらいいの?
どうすれば書き終わるの?
ちゃんと書けてるの?

次回は、この2年間どうやって執筆を続けてきたのかを振り返ってみたいと思います。

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