見出し画像

丁寧に読むことは人にしかできない。〜AIに負けない子どもを育てる〜

「あなたは日本語が読めていない」なんて言われても、日本に暮らす日本人であればそれを簡単に受け入れることはできない。

だけど実際に日本語が読めていない、理解できていない、ということは身近に頻発していて、自分だって読めていない人のひとりであるかもしれないのだ。

「日本語が読める」というのはどういうことだろう。
それをあらためて考えさせてくれた本がある。

「AIに負けない子どもを育てる」著:新井紀子

ある文章を目にしたときに、漢字・ひらがな・カタカナなどが理解できる。つまり「識字」できる、というのがまずあります。日本人の識字率は高く、ほとんどの人が日本語を読むことができる。

字が読め、十分な語彙量があれば、不自由なく文章を読むことができるのでしょうか。
いいえ。それでもまだ十分ではありません。
(中略)
行間をくみ取る前に、「行中」を読めるようになるためには必ずできなければならないことがある。それが、文の作り(構文)を正しく把握したり、「と」「に」「のとき」「ならば」「だけ」など、機能語と呼ばれている語を正しく使えるようになることなのです。
※「AIに負けない子どもを育てる」著:新井紀子 より抜粋

この本文に出てくるように、ぼくたちは文の作りや機能語を正しく理解しないままに文章を書いたり読んだりしていることがある。

たとえば、本書にはこんな例題が載っています。

■幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
□1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
※「AIに負けない子どもを育てる」著:新井紀子 より抜粋

これは「同義文判定」という問題で、この2つの文章の意味が同じかどうかを問う問題。
よく読めば違うことを言っていることがわかるはず。でも、中学生の正答率は57%に留まるとのこと。

だけど、ささっとなんとなく流し読みをしてしまうと違いを認識せずに理解できた気になってしまうかもしれない。

そうした日本語を読めているかどうか、つまり読解力をはかるテストを紹介しているのが本書だ。RST(リーディングスキルテスト)というこのテストの簡易版も掲載されている。

やってみればわかるが、簡単なようでなかなか難しい。何よりもやった後は頭から煙が出るほどにぐったり疲れる。
引っ掛け問題なんてなにもない。ただ、上記のような短い文章を読んで、その文章の意味を選ぶだけだ。日本語が読めて、小学校レベルの学力があれば誰でも解けるはず。


この本を読んで、人に伝える(文字通り意味を通じさせる)ことには細心の注意が必要だと知った。
たとえば、メールの文章。読点(、)で文章を繋ぎ、長くなればなるほど主語と述語の繋がりがわかりづらく相手は誤読しやすくなる。
要点をきちんと短い文で区切って伝えることを意識するようになった。

3行以上も句点(。)なく続く文章は、相手に意味が伝わっていないと考えてもいいかもしれない。

逆に、そうした文章をもらったとき。注意深く意味を探らないと誤読してトラブルのもとになるかもしれないと思った。

「書いたんだから伝わるはず」は誤解であり、「伝わっていない」を前提にいかに「伝わる」ように書くか。RSTをやってみると、その大切さが身にしみてわかるようになる。


文章を書く人、読む人、どちらにも勉強になるおすすめの一冊でした。


***

今日も、見に来てくれてありがとうございました。
これからの教育について考えるために読んだ本でしたが、子どもたちに対してだけじゃなく自分や大人にとっても大切で根深い問題が書かれていると思いました。
ぜひ、明日もまた見に来て下さい。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました! スキ・フォロー・シェアなどしてもらえたらとっても嬉しいです。 ぜひまた見に来てください!!