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娘は、金魚の死に「元気でね」と声をかけた。

朝起きたら、ぷっかりと浮かんでいた。
先週の幼稚園の夏祭りでもらってきた、わが家の新しい家族。金魚のズンくん。

はじめての生き物との生活。
娘もドキドキしていたし、ぼくや妻もズンくんとの生活にわくわくしていた。

金魚鉢や飾りも買って、金魚の育て方を色々と調べて。

名前は、娘がつけた。自分の名前から一字をあてがって「ズンくん」。
「ズンくん、ごはん食べるかなー」と言いながら餌をあげ、ズンくんが食べる姿には目もくれずオモチャで遊び始めたり。
ぼくがじーっと飽きることなくズンくんを眺めていたら「いつまで見てるんだーい!」とぷりぷりしたり。

はじめての生き物との暮らしだったけど、彼女なりに距離をとりながら少しずつズンくんを家族として受け入れていっていた。

***

それまで元気いっぱいだったズンくんの調子が悪くなったのがこの2日ほど。

執拗に水面をパクパクしはじめたのだ。
色々と調べた結果「酸欠じゃないか」ということになり、酸素の出る石を入れたり、水を変えたり。

しばらくは調子よくなるのだけど、また夜になるとパクパクしはじめる。
素人ながらに考えうるだけの手はつくした。

だけど朝になったら、ズンくんは死んでしまっていた。

***

「お外に埋めてあげようか」
娘と一緒にうなずきあった。
「わたし、ズンくんとれるよ」
普段、小さな虫もさわれない娘が手を無造作に金魚鉢へと突っ込んだ。
ズンくんをきゅっとつかむと「わー、なんかぬるぬるする」と言いながら紙皿へ移す。

娘が金魚を触れると思わなかったぼくは、すこしびっくりした。

そのまま、庭に出て小さな穴を掘ると、ズンくんを埋めた。

「ズンくん大丈夫かなぁ」

娘が心配そうにつぶやく。

「大丈夫って?」
「ズンくん、早く元気になるといいね」

娘は、ズンくんが死んでしまったことをわかっているのか、いないのか、そんなことをつぶやいた。

「ズンくんはもう死んじゃったから元気にはならないよ」

と言うと「知ってる」と娘は言い放った。
彼女なりに、生と死の距離を測っているのかもしれない。死んでしまっても、きっと元気でいてほしいのだ。どこかでズンくんの元気な姿が思い描ければ、それが彼女にとっての納得なのかもしれない。

「ズンくん、元気でね」

埋めた穴をパンパンと叩きながら、娘はズンくんにさよならを告げた。


***

今日も、見に来てくれてありがとうございます。
思った以上にペットロスな気持ちでいっぱいです。空っぽの金魚鉢を眺めながらさみしい気持ちになる一日でした。
ぜひ、明日もまた見に来てください。


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