恐怖のエスカレーター。
「怖いから抱っこしてほしいなぁ」
休日のショッピングモール。昇りエスカレーターの手前で、娘がぼくを見上げた。
もう5歳にもなる娘は、いまさらエスカレーターの昇り降りを怖がるようなこともない。いつもなら、軽快にピョンと飛び乗ってドヤ顔を決めるのに。
ぼくが不審そうな表情を浮かべたことに気がついた娘は、ぼそっとつぶやいた。
「だって、きょうはサンダルやから」
ステイホームしている間に、すっかり蒸し暑い季節になった。朝晩はキリッと冷たい空気が漂っているけど、日中は高い湿度に身体がベタつく。
先日、冬物を片付けて夏物と衣替え。新調した薄いブルーのワンピースを、娘は嬉しそうに着ていた。
お揃いのブルーのゴムで髪を結い、家の中ではサングラスもかけて、まるで海辺のリゾートのようだ。
そんな夏ルックな娘は、新しい絵本を買いに出かけたショッピングモールにサンダルをコーディネートしていた。
思い返せば昨年。
同じようにエスカレーターにサンダルで乗り込んだとき。足の指が引っかかりそうなほど段(蹴上)の手前に立っていた。それを見て、「あんまり端っこに立つと、足の指が引っかかっちゃうよ」と注意した。
むかしニュースで、子どもの足がエスカレーターに引っかかって大事故になったと見たことがあったのだ。
その話をちょっと大げさに伝えたような気がする。
娘はブルっと震えて抱っこをせがんできた。
そのときのことを、まだ覚えていたのだ。
サンダルで乗るときは、気をつけて真ん中に立たなくちゃいけないよと。
本当はそう伝えたかったのだけど、怖い、という記憶だけが印象に残ったようで不安そうにぼくを見上げていた。
ちょっと、言いすぎちゃったのかな。
なんて反省もしながら、あらためて、気をつけて真ん中に立てば大丈夫だよと伝える。
「そんなん、わかってんねんけどな。わたし怖いねん」
ブツブツと文句を言いながら、エイッと飛び乗る。
微調整を繰り返しながら、ピタリと真ん中に立つ。
その生真面目な姿に、頼もしさと愛おしさを感じる。
エスカレーターは乗るときよりも降りるときの方が、足を巻き込まれやすい。
上り切る手前で、娘はちょっと身体を沈め、高くジャンプする体制に入った。
しっかりと僕の手をにぎりしめ、ゴールとの距離を測る。
ちょっと早い! というタイミングで娘は盛大にジャンプした。
ギリギリ、足は飲み込み口を越えたところで着地。
恐怖心が高まりすぎて、いつもより危ないじゃないか。冷や冷やする僕を尻目に、渾身のドヤ顔を決める娘。親指を立てながら「パパ! やったで!」って顔をしている。
普通に降りたらいいよと、次の階に上がるときには伝えないとなぁ。
そんなことを考えながら、子育ては今日も続いていく。
では、また明日。
--📻stand.fm----
この前noteで書いたこと。あらためて言葉にしてみました。
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