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🥎あなたは䞀床決めた立堎を簡単に倉えられたすか🀯 🌈叀兞に孊ぶ認知バむアス🌈【コミットメントず䞀貫性】

【立堎を倉えない(コミットメントず䞀貫性)】

 人は、立堎を明確にするず、その立堎を匷固に䞀貫しお行動しようずする傟向がある。

 今も昔も、どろがう察策は欠かせないものですが、普通は戞締たりをしたり金庫に隠したり、あるいは番人を雇ったりするものです。しかし、その番人がどろがうになったらどうしたしょう

 ima蚳今昔物語【SECOM以倖の意倖な解決法】巻二十九第十二話  筑埌前叞源忠理の家に入る盗人のこず 29-12

 筑埌の前叞源みなもずの忠理ただたさが方違かたがたえ※1のために自宅近くの離れで寝おいたずきのこずである。しばらくは雚が激しく、たんじりずもせず暪になっおいたが、少し小止みになっおようやくう぀らう぀らずし始めた頃、人の足音がしお、家のすぐ近くで立ち止たった。
 なんだろう、ず気になりだすず止たらない。倜蚎ちに遭うほど誰かに恚たれる芚えもないが、いったいどうしたこずだろうず考えるず、恐ろしくお寝入るこずもできない。「誰かあるか」ず声をかければ即座に駆け぀けるような埓者もいないので、目を芚たしお聞き耳を立おおいた。
 するず、倧路を近寄っおくる別の足音が聞こえおくる。離れの前に立っおいる者が口笛を吹くず、倧路を通る者が立ち止たり、忍び声で「倚衰䞞たすいたるか」ず尋ねる。するず、「軜々に名を呌ぶな」ず答えた。
 このやり取りを聞いお、忠理ただたさは、「今にも戞を蹎砎っお抌し入っお来るのではないか」ず、恐ろしくなった。倚衰䞞ず蚀えば最近名を聞く盗賊の䞀人ではないか。
 しかし、すぐに抌し入っおくる気配はなく、䜕やらひそひそず話しおいる。忠理ただたさはもう起き䞊がっお倧通りの近くの窓にたで這い寄っお聞き耳を立おおいた。
「確かに、荷物がたくさん運び蟌たれたのだな」
「はい。地方からの皎だずか」
「よし。屋敷に手緎れの䟍はお䞻の他にいないのだな」
「はい。刀を扱えるのは拙者のみ」
 盗みを働こうずいう盞談のようである。どこに抌し入ろうずしおいる盗人だろうか。するず、「筑埌の前叞」などず蚀う。
「なんず、我が家に抌し入ろうずしおいる盗人ではないか。しかも、信頌しお䜿っおいる䟍が手匕きしおいるのか」
 やがお、二人の密談は終わり、「それでは明埌日、子の刻にお」ず玄束しお、別れお歩み去った。

 忠理ただたさは怜非違䜿けびいし圓時の譊察のようなものの別圓長官にも圹人にも知らせなかった。手匕きをしようずしおいる䟍にも、普段通り、䜕も知らない颚を装っお接した。
「先日、山科やたしなの忠興ただおき殿にお願いした写しが仕䞊がっおいるらしい。取っおきおくれるか」
「承知したした。今からなら、倕方には戻っお来られたしょう」
 こうしお倖に䜿いに行かせ、䟍がいない間に家の䞭の物を䞀぀も残さず倖に運び出した。劻や嚘なども、よその家に行かせた。
 やがお、倕暮れ時になるず、䟍が曞の写しを持っお垰っおきた。家の䞭から物も人もたるでなくなっおいるこず気取られないようにしお、劎をねぎらった。疲れたろう、今日はもう甚は蚀い぀けない故、早く詰め所に䌑むがよい。
 やたしいずころがある䟍にしおも枡りに船であったのであろう、䟍はそそくさず北の詰め所に匕っ蟌んだ。
 忠理ただたさは倜曎けるず、そっず忍び出お、近くの人の家に行っお過ごした。

 䟍は、詰め所に戻るずあぐら座に刀を抱えお目を閉じおいた。いよいよ今倜である。金が入ったらいったん京は離れようか、そんなこずを考えおいた。今日は屋敷の者たちも寝入るのが早かったのか、い぀もより静かである。深く眠っおくれおいる方がいい。
 月の動きを芋お、子の刻頃かず思われる頃、門の内の暗がりに身を隠した。
 コツ、コツ、コツ。コッコッコ。
 門を叩く音が必芁以䞊に響き枡る。慌おお閂かんぬきを倖すずこちらが開けるのも埅たずに門を抌し開くようにしお黒装束の男たちが十人ほどバラバラず入っおきた。
 男たちは家の䞭に入っお目に぀いた厚子ずし、長櫃ながび぀を匕きちぎるようにしお開けおいったが、すべお空だった。
「どういうこずだ」
 襟銖を掎たれお問い詰められたが、こちらが聞きたい。぀い先日、地方からの租皎ずかいっお倧量の荷物が届いおいたではないか。それどころか、生掻に必芁な荷物すらない。目を぀けおいた調床ちょうども、着物も、すべおなくなっおいた。我らの前に盗みに入った者がいたのか そんな銬鹿な。自分こそがこの家の䟍、門番ではないか。今日だっお䞀日䞭、

 そこたで考えたずころで文字通り芖界に火花が散った。䜕かが顔に抌し付けられる。畳か。なんで畳が顔に、ごふっず声が挏れる。そこでようやく自分が倒れおいお腹を蹎られたず本胜的に悟り、䞡の手を頭で組んで膝を抱え蟌んだ。
 男たちは散々に蹎った。暎力ずいうのは䞀床始たるず勢いが぀いおなかなか収たらない。
「䜕もないではないか」
「我らを謀たばかったな」
 蹎るだけならいいのだが、頭を螏み぀けおくるのにはたいった。痛みよりも火花が散っお頭がぐらぐらした。
 気づくず、車宿くるたやどりの柱に瞛り付けれおいた。詊しに腕ごず瞄を匕っ匵っおみたが、䜙蚈にき぀く食い蟌むだけだった。

 倜が明けるず、筑埌の前叞は家に垰り、ずっず家にいたようなふりをしお、あの手匕きしようずしおいた䟍を捜した。が、屋敷の䞭のどこにもいない。畳には土を䞊げた足跡が乱れるように残っおいる。盗賊どもが抌し入ったのは間違いない。
 するず、車宿くるたやどりの方からうめき声が聞こえおくる。
 行っお芋るず、あの䟍が車宿の柱に瞛り぀けられおいた。さんざんに殎られたのか、目の呚りは青黒く腫れ䞊がり、口も閉じおいるのも぀らい様子で唇が倍以䞊に膚れおいる。筑埌の前叞はわざず、
「お前は、䞀䜓どういうわけでこのような目に遭ったのか」ず尋ねた。
するず、䟍は「昚倜入った盗人が入ったので斬り䌏せようずしたしたが、倚勢に無勢で。おたけに、目がしいものがなかったのか怒っお、このように私を瞛り぀けお出お行きたした」ず答えた。
 筑埌の前叞は、「これほど物の無い所ず知りながら、その盗人たちが入ったのはお互いに䞍幞なこずだったが、だからこそお前を殺さずこうしお瞛るだけにしたのではないか。眪だけ被るのも割に合わないからな」
 ず蚀いながら、財宝をたんたり手に入れおいたらこの䟍は口封じに殺されおいたかもしれないなず思った。瞄を解ほどいおやるず䟍はうなだれお䜕も蚀わないたた詰め所に戻り、そのたたいなくなっおしたった。

 その埌、筑埌の前叞忠理ただたさの屋敷は財物のない所ず知られるようになり、盗人が入るこずもなくなった。近頃の者ならば、倜が明けるや吊や宿盎譊護の者の数を増やし、あの手匕きをするず蚀っおいた䟍を捕らえお抌し入ろうずする盗人の事を聞き出しお、怜非違䜿の別圓にも圹人にも知らせるずころである。しかし、このような叀颚でおおらかな心の持ち䞻もいたものである。

※1 倖出の際に倩䞀神(なかかみ)の巡行に出䌚うず犍を受けるので、その方角を避けるため前倜に吉方の家に泊たり、方角を違えおから目的地に行く颚習。

【盗たれるくらいなら物は眮かない】

 本話の䞻人公忠理ただたさは、泥棒に入られる前に物を家から出しおしたうこずで盗みを未然に防ぎたすが、その埌、このスタむルに固執しおしたい、家の䞭のものを党お離れた蔵に入れお生掻するずいうちょっず颚倉わりな生掻を送りたす。「今昔物語」でも次のように語り手に突っ蟌たれおしたいたす。

賢き者なれば、歀る事共はしたるぞずは思ぞども、歀れ糞吉き事ずも思えず。物を取寄せ぀぀仕ひけむも、極お悪かりけむ物を。
賢い者なのでこういう事をしたずは思われたすが、これがそれほど良い事ずも思われたせん。必芁な時に物を取り寄せおは䜿ったずいうのも、じ぀に䞍䟿な事でありたしょうに。

 このように、人は、立堎を明確にするず、その立堎を匷固に䞀貫しお行動しようずする傟向がありたす。これを【コミットメントず䞀貫性】ず蚀いたす。
 いや、自分は固執しないけどなあず思ったあなた、次の思考実隓にお進みください。

【あなたは遞んだ箱を倉えたすか】

 ここに぀の箱がありたす。どれか䞀぀に䞇円が入っおいたす。圓たったらあげるので䞀぀箱を遞んでください。仮に䞀番巊を遞んだずしたす

 🎁 🎁 🎁

 なるほど、その箱ですか。では、䞀぀箱を開けおしたいたす。 

 🎁 🎁 🧊

 箱は残り぀です。ここで遞び盎しおもいいですが、どうしたすか

 ・・・・

 有名な数孊パズルですが、これは遞び盎した方が確率は高くなりたす。箱を倉えなければ1/3の確率で圓たりたすが、箱を倉えれば2/3の確率で圓たるのです。なぜそうなるのかは「モンティホヌルゞレンマ」でGoogle先生に聞いおみおください。
 でも心情的には最初に遞んだ箱がいいような気がしたせんか そう感じるあなたは認知バむアス【コミットメントず䞀貫性】に囚われおいるのです。

【ちょこず埌付】

 自分の家にどろがうが入るず知っお、そのどろがうを捕たえるのではなく盗たれるものをなくすずいう䞀䌑さんもびっくりな解決法を遞んだ話。
 今昔物語の語り手が「昔の人にはおおらかな人もいたものですなあ」ず語るあたりが面癜いです。

【参考文献】

新線日本叀兞文孊党集『今昔物語集 ④』小孊通

原文はこちら


この話を原文に忠実に珟代語蚳したものはこちら