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花形役者がつなぐ古典歌舞伎の系譜〜新作歌舞伎「刀剣乱舞」

FFXにつづき、2次元×歌舞伎になったのは「刀剣乱舞」。FFXは菊之助さんはじめ、中堅の役者が中心でしたが、こちらは松也さんを中心に20~30代と、歌舞伎界の中でも若い役者が集まりました。
日曜日に行きましたが、原作人気もあり、客層は若め。私もとうらぶオタクの友人と一緒に観に行きました。

ゲーム原作ということもあり、開演前には世界観の説明がありました。固有名詞はありますが、FFXよりはシンプルな世界観です。幕に説明を書くことで、耳だけでなく、文字でも理解できるのもありがたい。

解説の幕

さて私の中でこれまでの2次元×歌舞伎といえば、ワンピースやNARUTOのように、原作に依拠した物語に、歌舞伎の個々の演出(宙乗りや本水、六方など)をはめ込んでいる印象がありました。極端に言うと、歌舞伎とストプレが交互に出てくるイメージでしょうか。なので盛り上がるシーンは強烈に覚えているけど、台詞だけのシーンはあまり覚えてないことが多いです。

なので今回、花形役者が、歌舞伎らしい、ある意味”わかりやすい”演出をほとんど入れず、古典歌舞伎の重厚感・物語を動かす力を全面に使ったことに非常に驚きました。刀剣乱舞自体、ストーリーの自由度が高く、魔法や異能力は出てこないのもあるでしょう。ですが、歌舞伎の未来を担う彼らは、歌舞伎の原点に立ち返った演出を選び、舞台上で魅せました。

印象的だったシーンはいくつかありますが、まずは三日月と義輝の最後を挙げたいと思います。苦悩の末、主人と刀を交えることを選んだ三日月と、自分の最期を悟った義輝。台詞は最小限にとどめ、音楽と立ち回りだけで2人の最後の”会話”を描き切ったこのシーンは素晴らしかった。演出・脚本・立師の力量はもちろん、演じた松也さんと右近さんの演技もよかったです。大道具と相まって、とても美しい場面でした。

また久直の最期も、挙げるべきでしょう。ここは竹本を入れ、完全に時代物の演出でした。新作歌舞伎で時代物の演出を観たのは人生初めてではないだろうか。時代物は歌舞伎に慣れてない人だと退屈に感じやすい(私もうとうとすること多数)ですが、久直役の鷹之資さんの熱演に、梅玉さん(松永弾正)と歌女之丞さん(奥方)がしっかり支え、見ごたえのある場面になりました。

鷹之資さんといえば、同田貫役での踊りも格別。これまで鷹之資さんを観る機会があまりなかったのですが、下半身が強い方なのですね。今度は本舞台で舞踊を観てみたいです。

刀剣男子たちもそれぞれに個性が感じられて、見ていて楽しかったです。雪之丞さんの小烏丸は終始ミステリアス。莟玉さんの髭切と吉太朗さんの膝丸は、まさに曽我兄弟。カテコでも兄弟っぷりを発揮していました。吉太朗さんはリュック(FFX)のイメージがあるので、振れ幅が広すぎます。
莟玉さんは紅梅姫も兼役。友人が「(女性向けゲームである)刀剣乱舞で女の子の恋愛を出したのは、勇気がある」と言っていました。確かにアイドル的な要素もある刀剣男子に恋する女性を出すことは珍しいのかも。物語の本筋ではなく、また異性装という歌舞伎の前提ゆえ、描けたことかもしれません。

そして國矢さん・蔦之助さんの、悪役コンビも大活躍。能面での登場に驚きましたが、その理由に納得。能面ほど、彼らを的確に表した小道具はないでしょう。

最後に音楽にも触れたいです。今作は三味線・琴・鳴物に加え、筝・尺八・笛と、邦楽楽器のオンパレード!二十五弦筝とか十七絃といった、名前すらはじめましての楽器もありました。彼らが奏でる音楽は初めて聴くのに、どこか落ち着くのは、自分の血に根付いた音楽だからかな。
なかでも一番際立っていたのが、琵琶。犬王オタクなのもありますが、大薩摩を琵琶でやったのは、興奮しかなかった!長須与佳さん(女性)が一人で唄いながら演奏する姿は、もうかっこよすぎた……!!惚れ惚れしてしまいました。

新作歌舞伎としては素晴らしい出来栄えだと思います。気になったのは物語の進みがやや遅いことぐらいでしょうか。役者たちも、とうらぶ歌舞伎も、作品の冒頭及びラストで描かれていたように、これから鍛えあげてほしいなと思います!

演奏家さんも出てくるカテコは珍しい。嬉しかった。

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