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自ら選んだ道を正解にするには?メイクアップアーティスト・Mu-が描く夢への道

結婚か、仕事か。OLか、フリーか。
人生は常に分岐点の連続である。時に「これで良かったのだろうか」と不安になる。

では、自分が選んだ道を「正解」にするには、どうしたらよいだろうか。

今回は大学卒業後、メイクアップアーティストとして活動する、Mu-(むー)さんに、自ら道を切り開く考え方についてお話を伺ってみた。

社会経験が浅く、仕事の後ろ盾も少ない中、フリーで働く決断をした理由は?仕事で大切にしている価値観とは?そして、正解を導くための原動力とは?

【Mu-】

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メイクアップアーティスト
明治大学文学部卒業。学生時代から活動を開始。スチール、映像、舞台、イベントなど、様々なジャンルで活躍。
「一歩深く作りこと」「一歩近く依頼人に寄り添うこと」をモットーに掲げる。
Instagram @mu_make_sl
Twitter @mu_make_SL

「コンプレックスだらけ」を変えたメイク

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ー早速ですが、メイクアップアーティストになる経緯を教えてください。

昔から自分のことがあまり好きではなくて。華奢な体つきと可愛らしい服が憧れだったのですが、私自身は太りやすい体質でしっかりとした骨格だから、全く似合いませんでした。

自分嫌いが変わったのは、高校生の時。ダンス部の発表会で普段と違うメイクをしました。そしたら友人に「メイク映えするね!」と褒めてもらえて、とてもハッピーな気持ちになったんですよね。

メイクをやらないとそう言ってもらえないし、普段と大きく印象を変えられる。もちろん洋服でも可能ですが、顔は第一印象に大きく関わります。その奥深さに興味を持ち、メイクのおかげで徐々に人と関われるようになりました。

また同じ頃に、あるアーティストのファンになって、オタクの楽しさに目覚めました。(笑)それから、現実から遠くへ連れて行ってくれるエンターテインメントに関わりたいと思っていました。

大学ではエンタメの根幹を学びたいと思い、文学部に進学しました。サークルではファッションショーをやりましたが、他人にメイクをするのが初めてだったので、出来は良くなかったけれど、表現することがとてもとても楽しくて。

「もっと表現がやりたい!」と、いろんなところに顔を出していたら、学生演劇をやっていた同級生の紹介で、舞台のメイクをすることになりました。演出家の要望は「メタファーとして、メイクを使いたい」。メイクでの表現がやりたかった私にとっては、ぴったりの現場でした。

今の生活は本当に”幸せ”ですか?

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―舞台をきっかけに、本格的な活動を始めたのですね。でもメイクの仕事がしたいなら、組織に所属するという選択肢もあったはずです。

所属しなかった理由は2つあります。

1つは、トレンドを追いかける楽しみ方が自分には合わなかったから。これは美容媒体のインターンをしていた時に感じました。企画やSNSの運用をしていましたが、取り上げるのは流行のメイクばかり。トレンドは世間一般の思想を理解するには大事だけど、トレンドだけが美の絶対ではありません。

私はメイクは人の内面も表現するべきと考えています。なので世間ウケする美しさを追求する組織とは、アプローチの仕方が根本的に違う。そういう人が組織に所属してしまうと、業務に支障が出る可能性が出てくるし、本人も息苦しくなる。これが就職しなかった第2の理由です。私がやりたいことと、会社がやるべきことにズレがあるのです。

―新卒でフリーを選ぶことに不安はなかったのですか?

フリーになる決断が難しい人って、今の生活や人生のビジョンを失うことを恐れていると思います。

でも私は、家庭願望や生活水準のような”周りから見て幸せ”と言われるものに、一切しがらみがありませんでした。自分が幸せになるには、仕事しかなかった。自分が「いいな」と思うものや、そういうのを大事にする人が周りにいれば、それだけで十分幸せです。

メイク=自分を表現するツール

―仕事をする上で、1番大切にしていることは何ですか?

クライアントである、デザイナーやアーティストに寄り添うことです。

特にメイクは主役の洋服や人物を引き立てる役目なので、目立ちすぎてはいけません。でも自分らしさを出さないと、評価していただけない。そのさじ加減が難しいです。

―他の方と差別化するには、自分らしさが大事だと言われてますが、Mu-さんが考える、ご自身の自分らしさは何だと思いますか?

メイクを「自分を表現するツール」として捉えていることだと思います。

外見は自分が何者かを表しやすいでしょう?自分の意思やどういう人間でありたいかは、言葉では難しくても、洋服やメイクで表現できる。それに自分の気持ちも盛り上げられます。

好きなアーティストのライブに行く時、メンバーカラーやグッズで全身を固めるのと同じ。推しへの愛が全身から溢れている方って、とてもキラキラしていますよね。このワクワク感を日常に持ち込めたら、何気ない毎日がもっと鮮やかになると思うんです。

だから仕事で他人にメイクをする時は、相手の感情や思いを大切にしています。見せたい自分やまといたい空気を作り、相手をそのテンションに持っていく。

これに加えて、共有の意識もあります。「あなたの思いを私も分かっているから、みんなに届けましょう」と。

以前あるMV撮影に参加した際、アーティストさんが人生初のメイクだったんですよね。私が「どんな印象にしたいですか?」とお聞きしても、悩まれてしまったので、質問を変えました。「あなたはこのMVに対して、どういう思いで取り組まれていますか?」。そうしたら「世の中に強いメッセージ性を発したいと思って作った。だから強い姿に見せたい」と答えたので、強く見せる方向にアプローチしてメイクをしました。

相手の思いを汲み取り、それに合ったメイクをいろいろ提案して、一緒に世界観を作ることで、自然と自分らしさが滲み出てきたのだと思います。

1番役立ったのは、どこでも誰でも誠実であること

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―Mu-さんは様々なジャンルでお仕事をされていますが、フリーだと縁故で仕事が広がることも多いと思います。その辺はどうされていますか?

とにかく目の前のチャンスを取り逃がさない。こちらからラブコールを送ることもありますし、関係者が集まる交流会にも参加します。

交流会でも現場でも、名刺と一緒に必ず自分のポートフォリオを持っていきます。自己紹介とプレゼンがワンセット。現場ではじめましてのモデルさんにも「休憩の時によかったら見てください」とお渡しします。

メイクの人がポートフォリオを持って営業するのは珍しいそうですが、やっちゃいけないとは誰も言ってないし、フリーのアーティストだからこそ出来る方法。メイクに対する自分の考え方も知っていただけます。

そうして得た仕事では、ひたすら愚直に真面目に行動していました。今思えば、どこでも誰にでも誠実であったことが、仕事の幅に繋がったと思います。

現場にはクライアント、つまり雇ってくれた人とそうでない人がいます。フリーなので、クライアントのお世話だけをして、自分の仕事をきちんとしていれば、絶対間違いはありません。でも私は+αのことをしていました。

―仕事以外のこともですか?

別に意識してやろうとしているわけではありませんが、小さな現場だと少ない人数で撮影を行うので、細かいところまでは手が回らないことがあるんですよね。

以前参加したところでは、スタイリストがいなかったので、誰も衣裳の手入れができず、シワができてて…私はちょうど待機の時間で、「誰も見てないし、手が空いているし」と思い、楽屋で1人アイロンをかけました。

そうしたら、その姿を見られていたらしく、あとで「そんなこともしてくれるの!?」と驚かれてしまいました。

いろんな現場でそうやっていたら、「この人だったら紹介しても大丈夫」と、仕事や関係者を紹介していただける機会が増えました。私は見られているとは微塵にも思ってなかったのですが。

―いや、意外と見てますよ。会社にいると、そういうので相手の素が垣間見られます。それで印象が決まることも。

そうなんですね。自分の周りに自分を見ている人がいて、味方になっていただける。そう思うとありがたいなぁと思います。

―自分の引き出しを広げるために、勉強とかはどうされていますか?

クライアントが好きなものは見るようにしてます。紹介されたアニメに私がハマり、話が盛り上がることもありました。(笑)

また自粛期間中にパーソナルカラーや化粧品検定といった資格の勉強もしました。自分がやりたい表現にも、仕事にもつながるので。

―自粛期間中は仕事がなくなることも多かったと思います。気持ち的にも大変だったのではないでしょうか?

ちょうど仕事の幅を広げていた時期に自粛を要請されて…人に会わないとできない仕事だし、仕事してないと自分でなくなるので、すごくストレスでした。でも何もやらないまま終わるのはまずいと思い、乱れていた生活習慣を直し、自分の現状を客観的に分析しました。

結果的に、自分の指針を見直し、ブレずにいられたのは良かったと思います。

自分の揺るぎない指針を持つべし!

―フリーで仕事をする上で、指針は大事ですか?

とても大事!自分の指針と仕事の形態は明確にした方がいい。

私の場合、表現者なので、「メイクアップアーティスト」という肩書にこだわり、顔出しはしません。成果物である作品を見てほしいからです。裏を返せば、メイクの仕事なら何でもします。

―自ら決めた約束を貫き通す、そのモチベーションはどこから来てるのですか?

自分自身を認めたい欲求と、応援してくれる人の存在かな。

私は自分があまり好きでないからこそ、自分へのマイナスな感情に引きずられやすいです。それでも、例え悪い感情をもとに作品を作ったとしても、その作品を誰かが素敵だと思ってくれたら、その感情は肯定されますよね。「ああ、こういう感情を抱いてもいいんだ」って。

自分を肯定し続け、救われたい気持ちがあるから、仕事を続けられています。

それに、素敵だと思ってくれた人が、それを言ったのは正しかったことを証明したい。常にこれを証明するための勝負だと思っています。自分のためだけじゃないからこそ、忙しくても、辛いことがあっても、踏ん張れます。

―将来はどんなメイクアップアーティストになりたいですか?

作品を作っている方の間で信頼される人になりたいです。

世界観を作る人たちと一緒に、作品の1ピースを作りたいです。いつか時の人に「信頼してるスタッフ」として名前を挙げていただけたら、嬉しいですね。


Mu-さんはメイクを「感情・意思の表現ツール」とする考え方を軸に、どんな仕事にも真摯に取り組む姿勢が、今の活躍に繋がっていた。インタビューはオンラインで行ったが、画面越しに仕事にかける情熱がひしひしと感じられた。

インタビューの最後に、メイクの理想の姿も聞いてみた。

すると「女性のものという枠が取れたらいい」とした上で、「TPOの範囲内で、音楽のように、他人の目を気にせず、自分がしたいメイクを思い切り楽しんでほしい。みんながメイクをフラットに楽しんでほしい」と語った。

自分の選んだ道を切り開き、正解にする方法も同じだと思う。

自分の確固たる信念に基づいて行動をすれば、それを認め、応援してくれる人が必ず出てくる。人によって「正解」の概念は異なるから、必要以上に他人の目を気にする必要はない。

自分の気持ちに素直になり、目指す世界に向かって行動し続ける人こそが「自分の”正解”」を出すのだろう。

なかなか1歩を踏み出せないあなた。踏み出したものの迷走中のあなた。

1回立ち止まって、思い描いていた夢を思い出してほしい。そうすれば、どの道を進むべきか、ヒントがきっと見つけられるから。


*SHElikesライティングコースの卒業制作に一部加筆・訂正をして掲載しました

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