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日本人が海外に出稼ぎに行く時代

前回は日本人が現地採用として海外で働く事について、全般的に書かせて頂きましたが、今回からは幾つかのテーマを少し深堀りしてみたいと思います。

まずはお金の話から。当たり前ですが、ほとんどの場合、私達が仕事をする一番の目的は、労働の対価として金銭を稼ぐことだと思います。勿論、仕事を決める理由はお金だけでなく、仕事のやりがい、一緒に働く仲間や上司、など大切な事はあると思いますが、余程金銭的に余裕があって死ぬまで使い切れない財産をお持ちのごく一部の方以外は、お金は仕事を決める上で非常に大きな要素だと思います。


そんな中で、「海外で現地採用で働くってぶっちゃけ儲かるの?」というのは多くの方が疑問に思う事ではないでしょうか?
(ここから記載する事は、私のように現地採用として海外で勤務するケースを想定しており、日系企業の駐在の方はあくまで日本の社員の延長としての待遇で来られるケースも多いですので、該当しない可能性が多いです。)
まず、単刀直入に申し上げると、先進国を対象にした場合、一般的には海外で現地社員として働く方が多くの給与を得る事が出来るケースは多いと思います。単純なマクロデータで見ても、2022年の日本の一人当たりGDPは世界で24位で、殆どの欧米豪諸国や同じアジアでもシンガポール、香港よりも低く、私が現在在住しているシンガポールと比べると、シンガポールの方が一人当たりGDPは日本の約1.5倍になっています。2000年には日本の一人当たりGDPは世界2位だったので、直近20年の日本の凋落ぶりはここからも良く解りますよね。

一方で、生活を考えた時に、収入だけではなくて支出についても考えないといけません。支出を考える時に最も大切なのは、おそらく一般的なその国の物価(特に家賃や子供がいれば教育費など)と、税金になります。
まず税金についてですが、日本は先進国の中では税金は比較的高い部類に入るのではないでしょうか。下記が世界の主要5か国の比較ですが、間違いなく日本は一番高い部類に入っています。一方で、欧州などでは税金は高くても、公立であれば大学まで学費や医療費は全額免除になるケースが多いのに対し、日本はしょうもないバラマキをしても、そういった根本の社会保障については全然遅れている事は周知の事実だと思います。


https://financial-field.com/tax/entry-131379 より引用

一方で物価については、30年にも渡るデフレの結果、日本の物価は以前に比べてかなり安くなっており、世界の主要都市の物価指数では東京は19位となっています。(マーサー 『2023年 世界生計費調査(Cost of Living Survey)‐ 都市ランキング』を発表 (mercer.com))
ちなみに約30年前、私が大学生の時に読んだ記事で今でも覚えているのは同様の物価指数では1位が東京、2位が大阪で、その時の東京はNYの2倍でした。

これらを纏めると、「日本は給料は安いけど物価も上がってないから、何とか生活出来てる」、というのが現在の実態なんではないでしょうか?
これは、正しく私が自分自身で感じている事と全く合致しています。正直、2007年から2012年まで私がシンガポール・米国で働いていた時は、そこまで日本と比べて生活が異なるという事は感じませんでしたし、海外で勤務してた方が貯蓄が進むという事は特にありませんでした。(勿論、シンガポールは車があほみたいに高いとか、国ごとの特殊性は以前からありましたが。。)
一方で、今回シンガポールに赴任して3年になりますが、明確に感じるのは、自分はシンガポールに出稼ぎに来ているという事です。給与も、生活費も、格段にシンガポールの方が日本よりも高くなっており、更にシンガポールはタックスヘブンの国なので、日本に居る時に比べて格段に貯蓄のスピードが上がっています。(勿論、最近の円安の影響もあったりしますが。)

私の世代の日本人は、生まれた時から日本は豊かで、海外から日本に出稼ぎに来る人はいても、その反対が起こるとは中々想像出来ないと思います。でも、これは良いか悪いかは別として、本当に起こっている事なのです。
今後もこの流れが継続すると、競争力のある優秀な人材はどんどん海外に流出し、ますます日本の競争力が衰えていってしまうでしょう。
何年も前から言われていますが、日本政府、及び日本の大企業は、本当に真剣に国際化問題に向き合って対策を立てないと、ただでさえ高齢化という問題が既に始まっている中で、ますます日本の衰退は加速してしまう懸念を覚えます。



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