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2018 J3第11節 ガイナーレ鳥取vsカターレ富山 【守備のほころび】

はじめに

リーグ戦序盤は幸先の良いスタートを切るも、昨シーズンと同様に大量失点を重ねる悪い展開が見え始めた側近の数試合。そこで今一度、チームの何が問題なのかを読み解くこと。また今後チームが改善・成長していく過程を見守るという新たな楽しみを得るためにも素人なりに綴っていこうと思う。

その中でも今回は、特に失点シーンのプレーに着目する。なお、DAZNの見逃し配信やYouTubeのハイライト動画を同時に参照されることをお勧めします。

両チームのシステム

鳥取は4-4-2のシステムを採用。なお、後半開始と同時に小林とフェルナンジーニョの位置を入れ替えた。また後半終盤にはヴィチーニョに代わり加藤を投入。加藤を前線に上げ、3トップ気味のシステムを採用していた。

対する富山は3-4-2-1のシステムを採用。途中で両サイドの選手の位置を入れ替えるなどの対応を見せていた。

これらを踏まえ、鳥取の各失点シーンについて解説する。

1失点目直前のプレー

序盤の8分、富山によるサイドチェンジの展開から鳥取左サイドを崩されたシーン。

縦パスによる連携から左サイドで1対2を作られるが、可児がボランチの位置からヘルプに行きサイドで数的同数の状況を作る。しかし、一瞬ボール保持者の前嶋へのアプローチが遅れたため、ドリブルで切り込まれシュートを許した(選択肢①)。

一方で、星野が可児へのカバーリングへ出たことで生じた中央のスペースを埋める選手がおらず、もし手前で要求する才藤や中央に走り込む佐藤へすかさずパスを通されていたら非常に危険なシーンであった(選択肢②)。

この場面では、可児が空けたスペースをフェルナンジーニョと小林が、また中央のスペースをヴィチーニョが全力で埋めに戻り、ゴール前にブロックを形成しなければならなかった。

実際の試合では、このプレーで得たCKを押し込み富山が先制点をものにする。

2失点目

72分、鳥取左サイド、富山の進藤のスローインから中央を崩されたシーン。ポイントとしては三つ。

ポイント①は、可児と内山の連携ミス。当初内山がマークについていた才藤がボールを受けに降りた。その際、可児は奥田がマークをしていた新井を警戒し、タッチライン寄りにポジショニングしていた。その結果、中央寄りに顔を出した才藤に気がつかず、背後を取られ前を向かせてしまった。ここでは、マークの受け渡しやポジショニングの修正を内山と可児が声を掛け合って実行しなければならなかった。

次のポイント②は、右SHのヴィチーニョが前線に残っていたため、中央にスペースを与えてしまったこと。本来星野のカバーリングに入るヴィチーニョが不在のため、星野はマークしていた差波を捨て切れず、差波へのパスコース限定を優先。結果、トップの位置から降りてきた佐々木への縦パスを許してしまう。もしヴィチーニョが〇印の位置にポジショニング(場合によっては差波へのマーク)していれば中央のスペースを与えることはなく、星野も危険な縦のパスコースを切りながら才藤へアプローチに行くことに集中できた。

最後のポイント③は、甲斐の佐々木への寄せが甘かったこと。佐々木は後ろ向きでボールを受けたが甲斐がマークを外していたため、最終ラインの手前で前方を向きながらボールを保持されてしまった。この場面では佐々木への周辺のサポートが少なかったことから、パスが出された瞬間に思いっきりボールにアタックしていれば少なくとも自由を与えることはなかった。

そして、佐々木にパスが通った直後のシーン。佐々木がボールを保持しドリブルを開始。可児と内山が挟み、ボール奪取を試みる。この時、甲斐が佐々木のドリブルにつられ中央のスペースを空けてしまった。佐々木はこのミスを見逃さず(予測だが、この形を誘導していた)、追い付いた可児の股下を通し中央のスペースに走りこんだ才藤へボールを預ける。PA内で内山と甲斐が懸命にブロックに行くが、シュートがDFの脚に当たりコースが変化するという不運も重なり失点を喫した。

この場面では、甲斐が空けてしまったスペースを上松が左へ絞って埋める、また、星野のカバーリングや可児がパスコースを閉じることで富山の攻撃を遅らせることはできた(鳥取の右サイドは捨て、富山の中央突破阻止を最優先)。

3失点目

85分、鳥取左サイド、富山右CKからの流れ。CKの跳ね返りに対しPA前に位置していたレオナルドに加え、可児・星野の両ボランチがともに前線へプレスをかける。その際、DFラインはPA前のラインまでしか押し上げないので(セオリー)、MFとDFのライン間に大きなスペースを与えてしまう。このミスが、直後の失点に直結する一つの要因となる。

富山はセンターサークル手前で拾ったボールをすぐに鳥取左サイドへ展開。サイドで2対1の数的優位な状況を作る。このとき、鳥取の奥田がDFラインを飛び出し数的同数の状況を作りにかかった。しかし、奥田がサイドに対応へ出たのに合わせてDFラインがスライドしなかったこと、前方へ飛び出していた星野・可児の両ボランチが戻り切れていないことにより、危険なハーフスペースと鳥取MF・DFライン間のスペースを相手に晒す形となってしまった。

また、ここまで来てしまうと、奥田が牽制してPA内のスペースを与えないという選択肢もあった。結果的に富山はこのチャンスを見逃さず、ワンツーの形でPA内へ侵入することに成功する。

そして、失点直前の場面。鳥取はPA内で3対4の数的不利な状況を作られる。ドリブルで侵入してくる椎名に対し内山・甲斐が慌ててスライドするが間に合わず、完全にフリーな状態でシュートを放たれゴールネットを揺らされてしまった。

また、このとき星野・可児が空けたスペースへ逆サイドからエドが、ゴールのファーサイドには苔口が走り込んでいる。よって、椎名にはエド・苔口(もしくは才藤)へのパスの選択肢もあり、逆サイドでは上松がどちらをマークするか選択を迫られていた。実際はエドへのマークを選択したが、もう一方の選手(ここでは苔口)には自由を与えてしまうため、どちらにしても失点は免れない状況となっていた。

この失点に関しては、CKという特殊な状況で守備のバランスが崩れている場面にもかかわらず、最初の時点で無理なプレスを実行した星野・可児の状況判断に最も責任があるといえる。

実際にはFWのレオナルドが最初のプレスに行っていたため、その隙に少なくとも星野・可児のどちらかがDFラインと守備ブロックを形成し、富山の二次攻撃に備えることがベストな選択だったであろう。また、前線にはフェルナンジーニョと加藤がカウンター攻撃に備えて残っていたため、直前のプレーでより後方にいたレオナルドも守備ブロックに参加していればもっと楽に対応できたのではないだろうか。

まとめ

自分の記憶が正しければ、以前森岡監督がどこかの番組で「中央をやられなければ失点しないので、その部分を教えている」のようなことを話されていたと思う。しかし、分析を進めれば進めるほどその言葉が本当なのか疑問に思うしかなかった。

特に、ボールと逆サイドに位置する選手のスライドの遅れやポジショニングの悪さから、PA付近や中央のスペースを空ける場面が何度も見られた。また失点シーンにも代表されるように、各選手が状況に応じた適切なプレーを選択できていない(または知らない)、前線からプレスをかけるタイミングとPA付近に守備ブロックを形成する場合分けを整理できていないなど、森岡監督の言葉との相違点が明らかとなってしまった。

今後も鳥取と対戦するチームは、この守備のほころびを確実に突いてくる。今ならまだ間に合う。目標達成のため、まずは組織的な守備の再構築を行い、相手の攻撃を抑えられるチームになることを心から願っています。

訂正箇所

・訂正前「ポスト役としてゴール前にいたレオナルド」⇒訂正後「PA前に位置していたレオナルド」(事実誤認に対する修正)

・読みやすくするため、表現方法や段落、図の位置を一部変更しました