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【全2回連載】 エッセイ 観劇のすすめ 後編 「ベニヤ貼りの箱を持って、プロポーズしてみる」

皆さんこんばんわ。

深夜ガタンゴトンWEBディレクターの高橋 朋矢です。

本目は全2回の連載エッセイの後編をお送りします。

前編は上のリンクにありますので、是非ご一読いただければと思います。

それでは、深夜ガタンゴトンマガジン第8回始まります!

見立てあそび

「見立てあそび」という言葉をご存知だろうか。子どもは1~2歳の頃、食べ物のつもりで積み木を食べるフリをして、「おいしいね」と言うなどの行動をすることがあり、そのようにあるものを別のものに置き換えて、遊ぶことを「見立てあそび」という。

そして、積み木をお母さんに差し出すと、お母さんはそれに付き合って、「ありがとう(モグモグ食べるフリをして)おいしい~!」という。お母さんの反応を見て、子どもはマネをするようになる。人間の発達段階の初期から見られるもので、人と会話によるコミュニケーションをとり、社会生活を送る上での土台となる。 

ベニヤ貼りの箱を持って、プロポーズ

演劇では抽象的なモノを舞台美術として扱うことがある。例えば、ベニヤ貼りの四角い箱。観客は客席に座ると、舞台の上に四角い箱を見つける。大抵、何の変哲もない、ただの箱としか思わない。そこに俳優が現れると、四角い箱に”意味”が生まれる。男と女が舞台上にいる。男は四角い箱を女へのプレゼントを入れた箱と見立てる。箱を開けると、中にはなけなしの給料をはたいて買った指輪が入っている(実際には何もない)。男は、その指輪を慎重に箱から出して、恋人に見せる。

男は女がどんなに嬉しい顔をするだろう。そんな期待を抱いて、昼飯代を切り詰めて、同僚からの飲みの誘いも断ってきた。毎晩遅くまで働き、休目は目雇いのバイトもしていた。彼女と会う時間が減って、最近はケンカの回数が少し増えた。

女は指輪をみつめて、沈黙。しばらくの間、緊張した空気が流れる。女「はめてみてもいい?」男は我に返って、女の手をとり、自分の手で彼女の薬指にはめる。女は涙を流す。観客は男の苦労を知っているから、胸にこみあげてくるものがある。四角いただの箱に俳優が”意味”を生んで、観客にとっても”意味”が生まれる。まるで、「見立てあそび」のように。

※恥ずかしながら、僕が即席で考えた三文芝居です。

セールスレターで見立てあそび

俳優というフィルターを通して、観客は「見立てあそび」を追体験することになる。それでは、目常生活で「見立てあそび」を生かすことはできるのだろうか。

例えば、客先に出すセールスレターを書くとする。コピペで挨拶文は作成したけど、肝心の中身がまったく思いつかない。セールスレターを遠距離恋愛中の彼女への手紙だと見立ててみよう。「そっちの天気はどう?」「会えない時間が辛い」「前、2人で行った○○ランドを思い出す」「また一緒に行こう」など、驚くほど簡単に書きたいことが思いつく。もちろん、こんな手紙をお客様に送付したら、誤って送ったのかと思われるだろう。最悪の場合、お客様からの信頼は地に落ちる。しかし、定型文に加えて、お互いしか知らないエピソードを盛り込んでみたり、気遣いの言葉を書くことで、手紙をもらったお客様も自分を特別扱いしてくれていると感じるかもしれない。今時珍しく丁寧な手紙だなと感動する人もいるかもしれない。個人的には手紙は直筆に限る。字が下手でもその手紙を書いた僕の気持ちが伝わる気がするのだ。

日常のパターンから抜け出そう

社会人生活において、パターンを見出して業務を効率的にこなすことはもちろん大切だ。しかし、観劇体験にはパターンを外す役割があると思う。毎朝通勤電車に乗る時に、何気なくシャットアウトしている風景や出来事の中にビジネスに役立つきっかけが転がっているかもしれない。凝り固まった見方を少し変えてみたいと思っている方はぜひ、劇場に足を運んで欲しい。

まとめ

全2回の連載をまとめると

・小学校低学年の頃好きだった雪は移動を困難にするための面倒なものに変わってしまった

・社会人生活の中でカラダがかちこちに緊張してしまっていることに気づいた

・観劇に行くと、あるものを全く別の見方でみることができる

・演劇で起きる全く別の見方は「見立て遊び」に似ている

・「見立て遊び」は大人になってもちょっとした業務でオリジナリティを発揮するのに役立つ

・社会人にはパターン認識が大切だが、あえてパターンから抜け出したいという方に観劇をして欲しい。

演劇やアートについて、目先の利益や効用だけに着目するのは本意ではないが、観劇を通して、僕は普段気づかないものに触れることが多くなった

-おわり-


以上、深夜ガタンゴトンマガジン第8回の記事投稿でした。

明目も皆さんにとって、笑顔で楽しい1目になりますように。おやすみなさい。

深夜ガタンゴトン WEBディレクター

高橋 明矢(たかはし ともや)

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