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松本大の資本市場立国論―日本を復活させる2000兆円の使い方

マネックス証券の会長、松本大さんの資本市場論である。

著者は、東大法学部卒でジョン・メリウェザーの手ほどきをソロモンブラザーズで受け債券トレーダーとして頭角を現して、ゴールドマンサックスで最年少パートナーとなった。ゴールドマンでは債券トレーダーから、不良債権ビジネスを立ち上げて、東京オフィスのほとんどの利益を稼いでいたともいわれる伝説中の伝説の人である。

プライベートでは、テレ東の大江麻理子アナと再婚する等、世の男性の羨望を集めることを成し遂げており、とにかくすごい人である。

話し方を聞いてみると、口調はソフトだけれど、資本市場の中の資本市場である、米国債やJGBのトレードで稼ぎ、また当時ハゲタカビジネスと忌み嫌われた不良債権ビジネスで稼いでおり、著者は根っからのトレーダー(安く買って高く売る人)である。

直近でも、どん詰まりの状態だったマネックス証券の証券ビジネスを、自分が立ち上げたという思いはさておいて、バッサリとドコモに51%売り抜けた。

NISAで負け組となる前に、しっかりと売り抜けていて、マスコミ向けのソフトなジェントルマンの松本大ではなく、生き馬の目を抜く資本市場で切った貼ったをやってきた、敏腕トレーダーであるという私の見方を裏付ける出来事の一つであった。

長くなった。

ホンダ本社

本書は、松本さんの日本経済に対する処方箋である。

最も強いメッセージは、資本市場の仕組み、即ち負けた人がしっかりと退出できる仕組みを活かして、日本経済を活性化させていこう、人口減でパイが減少していく中で効率化をしていこう、ということだと思う。

日本経済は、金融緩和、財政出動、がんじがらめの過剰規制により、本来であれば市場から退出すべき人が守られ、結果、生産性を押し下げている。学術論文による日本とアメリカの生産性の差でも、「退出の少なさ」で8割方説明がつくという。

もし投資家である資本家が守られ、リターンを追える環境になれば、M&Aはさらに進むし、生産性が大きく向上し、年金のリターンも改善し、豊かな老後が実現するであろう。

私も著者のメッセージに同感で、とくに2013年以降の金融緩和で、経済からアニマルスピリットは失われてしまったし、もっと前の90年代から経産省は市場への介入(この会社とこの会社は合併すべき)を止めてしまい、M&Aや生産性向上の仕組みはこの国から無くなってしまった。

従って、投資家をさらに保護することにより、マーケットの力を利用して、日本経済を活性化していこう、という呼びかけである。

日本は高齢化していて、バラマキ型の経済政策ばかり行っている。これでは自律的な経済成長はなく、負債ばかりが増え、最終的には財政危機に陥るであろう。

著者の言うようにマーケットの仕組みを利用して、競争力のある日本経済を取り戻す必要があると思う。たとえ、取り残される人がいたとしても。

青山学院大学体育館

本主張に対して、著者は本気である、10億円の私財を通じて東大に研究機関を作った。この独立した機関から具体的な政策提言がなされると思う。


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