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「この世」と「あの世」が繋がっている夜景。

今夜は結婚記念日だったので、家族で近所の洋食料理店へ行った。ワインを並々と注いで乾杯。今年で結婚27年目なのね。
結婚してから9年はアパートに住んでいて、娘が生まれるちょっと前にこのマンションに引っ越してきた。それから18年。

私はこのマンションに引っ越してきてからの方が時間が経つのが早かったと感じた。娘が生まれたことで、御近所さんや学校やいろんな付き合いが増えたからね。それにまつわるいろんな経験をしたから、濃く感じるのかな。

これまでで衝撃的だった、夫の交通事故で左半身に重傷を負った時の話とか、娘が日射病で倒れた話とかが出てきて「あの時は大変だったなあ」という気持ちをみんなでシェアしあった。そういう話が、穏やかに談笑できるくらい、落ち着いたのだなあ。
お互いの関係に擦ったもんだしたけど、今は皆自分のスタンスを見つけて今を見ている。

スナモを出て帰途についたときに、清砂大橋の上を通った。この橋は今まで何度も通った。娘が小さい頃、家族で遊びに行った帰りだとか、夜中に娘が救急車で病院へ運ばれた帰りとか、絵を描く時の資料探しに街を回った時だとか、その時その時、いろんな気持ちでこの橋の上を渡った。

街と川面をすっぽり覆う闇に、ポツポツと浮かぶ街灯、葛西臨海公園の観覧車の灯は、この世とあの世を繋いでいる。現実と夢が行ったり来たりする。ああなりたい、ああなったらいいな、こうなるだろう、こうせねばならないが、混ぜこぜになり、境界がなくなるこの瞬間は、心も体も、軽くなって、まるでアルコールにでも浸っているようの感じ。

これは逃避なのか、陶酔なのか、よくわからないけど、どんなシビアな時にいても、こういう瞬間がいつも私を救って癒してきた。

家族がいておいしいものを食べる、満ち足りた時をすごせるのはなんて幸せなのだろう。この時をもっともっと深く味あわねば。だって、いつまでも続くわけではないから。今私たちは三人でいられるけど、いずれ娘は自立し、私も夫もこの世から消えていなくなる時が来るのだから。そうなった時に後悔しないように、今ある幸せを、心ゆくまで味あわねば。

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