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「写ルンです」で撮った心霊写真

最近、若い子の間で「写ルンです」が人気だと聞いて思い出した話を一つ。

これは以前バイトしていた店の先輩から聞いた話だ。
先輩がまだ子供のころ、近所に住む”いとこ”とよく遊んでいたそうだ。このいとこはは男の子で、自動車が大好き。特にスポーツカーが大好きだった。スポーツカーを見たいけど、正規のディーラーの店に小学生が行って車を眺めるのはなかなか勇気がいる。でも中古車のショップなら近所にたくさんあって、眺めててもそこまで邪険に扱われない。「車好きなの?」などと店員が話しかけてくれて、暇な平日などは車について説明してくれたりしたそうだ。親戚の子や学校の子を連れて、車を見に行くこともよくあった。

いとこは中古車ショップの店員さんに許可を取って、車の写真を撮影させてもらえるようにした。車の写真をアルバムに残して、コレクションしてみたくなったそうだ。私のバイト先の先輩も小学校時代にはその車の写真コレクションをよく見せてもらったという。
店員さんも「好きなときに好きな車と撮っていいよ」と言ってくれて、毎日のように中古車ショップに出かけて、いい車が入ってないかなーと観察し続けた。

ある日、真っ赤なポルシェがその中古車ショップに入ってきた。彼は興奮して「写真撮っていいよね?すぐ売れちゃうかも!」と店員さんに話した。赤いポルシェは本当にかっこよくて、本当に中古車なのか?というくらいピッカピカに輝いてた。
店員さんは、なぜかこんなに状態のいいポルシェなのに、興奮していなかったし、いつもより口数が少なく、ポルシェにも近づかない。

「すげーや!」

いとこは夢中で、写ルンですのシャッターを何度も切った。
自分で撮影した写真をすぐに現像したくて、お母さんに頼んですぐに現像してもらうようにした。
写真は2日くらいで出来上がり、お母さんと一緒に写真屋さんに取りに行った。

引き取りの伝票を写真屋さんに渡すと、写真屋さんがぎょっとした表情でいとこを見つめる。
「自動車好きなんだね。」
「うん。写真をコレクションしてるんだよ!」
「そうか、、、ちょっと、お母さん、お話が。」

写真屋さんはお母さんだけを手招きして、写真屋のカウンター内に入れた。そして大人二人でこそこそと何か話をしている。
写真屋さんのおじさんはふと1枚の写真を取り出して、お母さんにそっと見せた。

「やだ!気持ち悪い!」

お母さんが思わず叫んで、その写真から目を背けた。

「何?!なんなの?僕の撮った写真だよ!みせてよ!」

「お母さん、どうしますか?」
「・・・この子が撮った写真ですからね。いいですよ。」

写真屋のおじさんがその写真を手に彼の元に近づいてくる。
写真店のカウンターに1枚の写真を置いた。

「うわ、、、なにこれ!」

その写真には先日撮影した赤いポルシェが写っていた。
その写真はポルシェを正面から撮影したものだったが、そのボンネットの上に髪の長い、苦しそうな表情をした女性の生首がボンっと乗っているのだ。

「これ、○○の中古車屋さんだよな?」
「そうだよ。」
「中古車にしちゃ綺麗だろ、このポルシェ」
「うん、、、」
「おじさん思うんだけどな、これは事故車両だったんじゃないか?」
「交通事故とかにあった車ってこと?」
「そうだね。事故車両で傷ついたけど、修理したからこんなに綺麗なんじゃないか?」
「そうなのかな。中古車のお店のスタッフに聞いてみるよ。」
「話してくれるかはわからないけどな。その写真はいつでもうちで処分できるから、もっていくか?」
「中古車のお店の人に見せたほうがいいような気がするから持ってく」

彼はその写真を手にそのまま中古車屋さんにお母さんと向かった。
よく話す店員さんを呼び止めて、
「この前のポルシェの写真ができたんだけどさ、見てくれない?」
彼にそっと写真を見せる。
「うわぁ!何これ?!」
「ぼくには生首に見える」
「君は気に入ってたから言わなかったけど、これ事故車だったらしいんだよ。持ち主の女性が事故に遭って亡くなったんだけど、遺族がさ、直して売れるんじゃないか?って持ち込んだんだ。ちょっと待ってて」
彼は事務所の中に入って店長に話をしてる。店長が出てくる。
「見せてくれるかい?」
「はい」
店長は写真をじっと見つけると、アルバイト店員に
「このポルシェ、後ろの見えないところに移動させて」
「え?」
「あの家族にポルシェは返そう。うちでは売れないよ。何かまた事故でも起こったらうちの責任になりかねない。」

先輩のいとこはこの件がきっかけで、車がすっかり怖くなってしまったそうだ。また写真を撮って何か変なものが写ったらどうしようと思って、写真のコレクションも一切やめた。
撮ってしまった生首の写真は、そのまま写真屋さんに預けて、写真屋さんが付き合いのあるお寺にその写真を持っていき、供養していただいたそうだ。

赤いポルシェは持ち主に返されたとは思うが、お金にうるさそうな遺族だったそうで、店長は「うちが断っても、きっとどこか別の中古車屋に持ち込むでしょうね」と言っていたそうだ。

「でもさ、修理して綺麗になるくらいだったら、首が吹っ飛ぶような事故にならないよね?もっとさ、ぐちゃぐちゃになって、廃車にならない?」
私は先輩にこの話を聞いたときに、そう質問した。
「そうだよなぁ。ていうことは、事故とはまた別の霊だったのかな?」
それはそれで気持ちが悪い。

この話は今からもう30年近く前の話なので、この赤いポルシェがすでに廃車になっていればいいなと思う。

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