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『父滅の刃』(樺沢紫苑)読了

いやあ~ようやく読み終わりました!

はじめに


父性の重要性や、自分自身は成長しているのか、父性を表現できているのかを考えさせられました。
特に、人の成長に寄与する立場の方には一生役立つ、本質的な内容の書かれた1冊ではないでしょうか。

章ごとの覚書を残しておきます。
以下、本編のネタバレを盛大に含むためご注意ください。



↓↓↓



【1章】海賊の心理学


・ONE PIECE 
特定ではなく大衆に支持されるには多くの人に共感される普遍的な「何か」に触れる必要がある
→海賊は心理的に父性を象徴するから、父性喪失の時代にマッチしたのでは?

・元型の話(by.ユング)
=すべての人に共通する心の動きのひな型

アウトロー・・・変化をもたらす。自立した大人。自由な大人。ex.海賊


ヒーロー・・・最初は精神的に未熟(成長の余地がある)。クエストを達成し初めて成長が見られる。

cf.6章
オールド・ワイズマン・・・父親元型ともいわれる。公平で厳正な態度で接し、悪いことをすれば厳しく罰してくれる、正しい道へ自分を導いてくれようとする。


【2章】父性とは何か?「父親殺し」の心理学

父性と母性は補完的である。

父性原理=断ち切ること(厳しさ、規律、鍛錬)。カリスマ型リーダー。


母性原理=包み込むこと(やさしさ、受容、保護)。調和型リーダー。

父親が不在→父親探し(go out)→父親殺し

ex.宮崎駿の父性
口を出さず見守る、超えるべき壁として存在し続ける。もがき苦しんでいる時=人が成長している瞬間だから。


【3章】父性の年代記 アメリカ編


・「力強い男性像」の衰退
ベトナム戦争が契機。
戦争に参加した男性たちが、自己の中に抑圧された母性を原理再発見した。
→カウンターカルチャーの流行。自由、平等、個性。

・キリスト教の崩壊
キリスト教の神=父性的(cf,一神教、規律)
(←→日本の神=母性的(cf,農耕民族))

しかし、現代人はキリスト教への信仰心を失ってしまった
ex.神父の自殺(『エクソシスト』)、十字架の効かない吸血鬼(『フライトナイト』)
→神なき時代にどこに父性を求めるのか?『フライトナイト』の答えは、仲間の力を借りて自己成長を果たし、自らが父性的存在になることだった。

・"父親探し"ブーム
1977『スター・ウォーズ 新たなる希望』を元祖に、『ハリー・ポッター』『ナルニア国物語』など、父親探しの作品が続出した。


【4章】父性の年代記 日本編


日本にはかつて「ガンコオヤジ」がいた。単に怖いのではなく、愛情ある叱りができ、子どもに規範を示す存在。
父性不在の現代において、子どもがビジョンや目標・目的を持った人間に育つかどうかは、生育環境にしっかりとした父性が存在しているかどうか次第な傾向がある。

・『ポニョ』において父性を持つのはだれ?
二本足でしっかり大地に立つことができる存在となる『ポニョ』。これは、宗介の発揮する「父性」の力をかりて、「子ども」から「大人」へと自立したということ。古来より神話などで描かれ続けた普遍的な物語が象徴的に描かれているのだ。
宮崎駿の企画意図の一節に「誰もが意識下に深く持つ内なる海と、波立つ外なる海洋が通じ合う」とあり、つまり「母性の庇護下にある家庭」から「社会の荒波へ船出しよう」ということを意味すると考えられる。

ちなみに、日本は母性原理に支配されている国である。ドラえもんがのび太君を甘やかしていても特に違和感をもたない理由の一つだ。


【5章】各論 「父性」をめぐるいくつかの論点

・「近親憎悪」
自分と性格の似ている人物に対し、自分のコンプレックスを客観的に見せつけられるようで、その人物を嫌ってしまうこと。

・父性は内在する
今は父性喪失の時代ではあるものの、「父性」が表現されてない/しづらいだけ。私たち一人ひとりのなかから「父性」がなくなったことを必ずしも意味しない。

・映画の食卓シーン
関係性や、家族であれば「父性」の有無がわかるシーン。また、家族関係が崩壊する最初の一歩は、家族で食卓を囲めなくなることである。

・代理父でも子は育つ
父親がいなくとも、代わりとなる人物がいればOK。条件として、子どもから信頼される/遊び相手になってくれる、父親と年齢が近い男性。特定の人にそうした役割を頼める状況になければ、男女の友人を招いたホームパーティーを開き、子どもを同席させ、バリエーションあるコミュニケーションを発生させると良い。

父性は男性のみが担うものではなく、母性は女性のみが担うものではない。父子家庭、母子家庭も増えてきており、父性と母性のバランスを考え、子どもとコミュニケーションをとることが大切だ。


【6章】父性回復の処方箋

・Good fatherの条件
1.規範を示している
2.尊敬、信頼されている
3.「凄い」「そうなりたい」と思われている
4.ビジョン、理念、方向性を示している

→単に父性があればいいというわけではなく、この4つを満たすことが必要。
NG例:強すぎる父親、弱すぎる父親、普通の父親

父性を回復させる5つの方法
1.自分が「父親殺し」をして自己成長し、自分のビジョンを持てる大人になる
2.自己成長によって父親の問題を超える
3.すでに子どもがいる場合、子どもとの間で実査の父親として「よき父親」になる、「家庭」の中で父性的存在になる
4.父親以外の尊敬できる誰か「メンター」に父性を求めるということ。(父性とは父親だけが持つべきものではない)
5.「社会」の中で、父性的存在になる。(社会人としてリーダーを担う人が父性的であるメリットは絶大)

・子どもから「父性的な父親」として認められる4つの方法
1.きちんと子どもと対峙する
2.子どもとの共同作業、共同体験で、「苦しい」も「楽しい」も共有する
3.自分が一生懸命頑張ってるところを、子どもに見せる
4.子どもとできるだけたくさんの時間を過ごす
→とにかく能動的アクションが必要!

・その他メモ
「和解」・・・自分が素直になり、相手を理解する。「和解」は一方的にでも成立する。

「反動形成」・・抑圧された考えや感情と、正反対のことをする防衛機能のこと。(cf.甘いものを禁止されたウォンカが自分でチョコレート工場を開いてしまう『チャーリーとチョコレート工場』)

「叱る」ことと「新型うつ」・・・仕事はやる気がないがプライベートは楽しんでいて、他責思考な20~30代。本気で自分を叱ってくれる人間に出会っていないタイプが患いやすい。父性喪失の時代の副産物なのである。


【7章】「父性不在」から「父性の消滅」へ


・「父性消滅」というテーマの映画がはなぜヒットしているか?
→現実世界に、規範となる「父性」が存在せず、従来の正義vs悪の単純な設定・ストーリーでは非現実的かつ陳腐になってしまうから。
圧倒的パワーを持ったヒーローが悪を倒すという、昔ながらのヒーローものが、単に「飽きられている」というだけではなく、物語として成立しなくなっている。圧倒的な正義、頼れる存在、悪、邪悪な存在…は、今の時代には存在しない。
cf.『ジョーカー』・・・父親殺しの時代は終わった、と宣言している作品。

・父性消滅からマイノリティの時代へ
女性、子ども、マイノリティ、悪役といった、抑圧されたものたちの復権が流行している。cf.『パラサイト 半地下の家族』


【8章】「父性の消滅」から「男性不要」へ ディズニーの暴走


・父性”不要”
『アナと雪の女王』において、父性は消滅どころか不要というメッセージが表現された。登場する男性キャラクターたちがこぞって頼りない存在なのである。
『アラジン』に至っては、まず主人公アラジンが頼りないどころか、ディズニー史上類を見ないほど腑抜けでヘタレなのだ。
両作品は男女の溝を深めている。なぜなら、女性の自立を描くことで女性からは共感/支持を集めているが、男性からすれば男性が不当に貶められているからだ。
※樺沢先生同様、あらすじを聞く限りでは、確かにこのキャラ設定はちょっと狙いすぎなのでは…と私も思います。


・リスペクトをもって描く
女性の自立を描くにあたり、男性軽視/蔑視と対でしか描けないのは実に低俗。女性たちを抑圧してきた男尊女卑という思想にとりつかれた、男性たちと何ら変わりがない。
女性と男性の関係で必要なのは「リスペクト」である。対等な関係には常に互いへのリスペクトが存在する。
「女性か男性か」の二者択一ではなく、「女性も男性も」活躍できる社会を目指すべきだ。それをイメージの世界でリードし、時代を切り開いていくのが、映画やアニメの重要な役割なのだ。(cf.『ゴールデンカムイ』)


【9章】日本の映画とアニメから考える、父性消滅時代の対処法


父性喪失の時代には、私たち一人ひとりが父性的な存在になっていくことが必要。
それを描いたのが『天気の子』『鬼滅の刃』等。



以上、ありがとうございました。なにかひっかかるものがあれば幸いです。まだの方はぜひ『父滅の刃』本編をお読みください!

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