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Unmaskingfildelity キャンペーン〜極右への資金の流れを止めよう!

 本日は今年の秋にかけて行われた#Unmaskingfidelityキャンペーンについて紹介したいと思います。

1. #Unmasking fidelityキャンペーンとは?

 キャンペーンのターゲットとなっている金融会社、フィデリティ・インベストメントはアメリカに本社をおく多国籍の資産運用金融会社だ。フィデリティ社にはフィデリティ・チャリタブルというドナーの資産を慈善団体(Nonprofits)に投資する専門の部署があり、今回はこのフィデリティ・チャリタブルが極右団体に資金を流していることが問題となっている。

2. 大手銀行フィデリティが極右団体に資金を流しているってどういうこと?

 2019年、ジャーナリスト調査によってフィデリティをはじめとした金融会社がDonor Advised Fundsというシステムを通して極右団体に資金を流していることが発覚した。

Donor Advised Funds (DAF)とは?
 DAFとはドナーが免税のメリットを受けながら、慈善団体に寄付することができるシステムだ。ドナーは金融会社のDAFに資金を投入し、その代わりにいくらかの免税のボーナスを受ける。金融会社はドナーから資産をどこの慈善団体に投資するかというアドバイスを受け、資金をプールし、それを投資している。

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 フィデリティ社はこのDAFを通じて慈善団体や人権団体に資金を流しているのだが、数年前から、極右団体、イスラエルの民族浄化政策を推し進める団体、イスラムフォビアを煽動してきた団体、ヒンドゥー原理主義団体などの団体にも匿名で金を流しているが問題となってきた。[1]

 フィデリティ社はドナーから受け取った資金を投資するに当たってドナーのアドバイスを聞かなければならないが、実は最終的にどこにドナーの資産を投資するかはフィデリティ社が決めるのだ。フィデリティ社は他の金融機関のように極右団体などに投資しないようなルールやスクリーニングプロセスを導入しておらず、極右団体にドナーの寄付金を投資している。ドナーが極右団体に寄付しながら税制上の優遇措置を受けるための手助けをフィデリティがしているわけだ。

 実は、1月6日に連邦議会議事堂を襲撃した団体の中にも、フィデリティのDAFから資金を受け取ったものもあったのだ。実際フィデリティのDAFから受け取った約70万ドルの資金が襲撃者の移動費に費やされていたのだ。

3. Unmasking Fidelity Coalitionの形成

 こういった現状を受け、フィデリティ社の責任を明確化し、極右団体への資金流れを阻止するためにボストンのコミュニティオルガナイジングの団体を中心に#Unmasking fidelity キャンペーンが始められた。
("Unmasking"とは「中立」を装っているフィデリティ社の偽善性を暴露するということを意味する、)

 Action Center on Race & The Economy, Asian American Resource Workshop、Community Labor united, Muslim Justice League、Political research associates とResource Generationなどの団体が集まり、このキャンペーンを行うための連合、Unmasking Fidelity Coalitionを形成したのだ。

では、連合は何を求めているのだろうか?
 Unmasking Fidelity CoalitionはFidelityに対して以下のことを求めている。  まず、第一に、フィデリティ社が現在DAFを通してどこの団体に資金を流しているのかをDisclose(公開)すること。寄付決定の内部プロセス、寄付するための基準を公開することも要求の一つだ。

 第二に、Divestすること。
フィデリティがDAFを通して極右団体に流している資金を完全に投資撤退することが第二要求だ。現在、フィデリティ社が第一の要求のDiscloseを拒否しているため、ダイベストメントの作戦がとられている。

 第三の要求はRepair。
フィデリティ社がDAFの投資のスクリーニングプロセスを導入した上、それまで極右等に流していた寄付金をコミュニティ団体に寄付することを求めている。これまで極右団体に資金を流すことで行ってきた損害を自ら修復すべきということだ。

 このような要求を適切に伝え、SNS上で人々にアクションをとってもらうために拡散用のtoolkitが作られた。

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 ここには見た人が実際どういったアクションを取れるかについて詳細に書いてある。具体的には以下のアクションが取れるのだ。
1.団体としての賛同
2.当銀行の口座の保持者に連絡→口座保持者に問題を理解してもらう
3.口座の保持者に対して、フィデリティの社員・労働者に対してもこの問題を周知してもらうように頼む、など。
 また、クリックするだけで自動的に賛同ツイートが送信できるようにしたりなど、作成に当たって工夫した。

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ワーキンググループ体制

 いろんな団体のオルガナイザーが集まって、そこからいくつかのワーキンググループを作った。Action(アクションの細部を計画する)、Comms(SNS発信やメールの文面などを担当。ツールキットも作成)やPR(連携してくれる他団体との連絡など)用のワーキンググループなどだ。

 どのワーキンググループも週一でミーティングを行い、ミーティングの中で話し合いながら活動を行なっていった。ワーキンググループでは当然これまで一緒に活動したことない人もいるし、それぞれの経験も異なる。そこで、活動を進めるに当たってオルガナイジング用のリソースやノウハウを提供してくれるCenter for Story-based Strategyのリソースを使った。例えば、会議中にはその団体が作成したオルガナイザー用のスライドを使い、みんなでstoryline(キャンペーンの展開・物語)を考えていった。

 僕はCommsチームの活動に少し参加したが、そこでは外部に向けての発信に当たってどのように問題を伝えていくかなどを特に重要視した。
例えば、発信するメッセージについてみんなで考えるに当たって、F.R.A.M.E.Sという枠組みを使った。これは Frame the issue, Reframe the opponents story and reinforce our frame, Accessible to our audience, Meme, Emotional, Simple & shortの省略で、問題を正確に、かつ短く印象に残る形で伝えるためにどのようなメッセージを発信すればいいのかを考えるための手引きとなる。

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 このようにCommsチームでは問題点を伝えながらも、興味ある人や一般の人にアクションをとってもらったり、拡散してもらうにはどのような発信の仕方がいいかを創造的にみんなでアイデアを出し合い、考えていった。今回キャンペーンを主導しているのはコミュニティオルガナイジング団体であるためか、コミュニティのメンバーに興味を持ってもらい、持続的に活動するためにストーリーを作るということを特に重視していた。

4. 11/30 アクション @Fidelity支社前

 以上のようにキャンペーンを進めてきたわけだが、キャンペーン再開から約二ヶ月経ったところで対面でのアクションが計画された。アクションはサンクスギビングの次の週の火曜日で、アメリカ中で最も寄付金が集まるGivingtuesdayという日に行われた。この日にフィデリティ社の前でアクションを行うことになった。

 SNSキャンペーンを始めながら数ヶ月になっていたのにも関わらず、フィデリティ社の問題はなかなか社会問題化されていなかった。そういった状況でありながらも、どうやって最大限に話題にできるかをアクションチームは事前に考えていた。そこで、寸劇をフィデリティ支社の前で行うことになった。参加者の何人かがそれぞれ、フィデリティ社員役(仮面の人物)、ドナーの役などをつとめ、盛り上げながらも、フィデリティ社の偽善性を問題にした。当日はツールキットのQRコードが貼ってあるビラを参加者・通行人に配った。参加者もすでに参加しているオルガナイザーだったが、少ない数の中でも特にSNSで問題化できた。

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 秋に再スタートした#Unmaskingfidelityキャンペーンだったが、数ヶ月に渡ってSNSキャンペーンやアクションも行いながらもFidelityは結果として自社の投資先の極右団体等のリストを公開しなかった。連合の第一の要求であったDiscloseに対していまだに応じてないわけだ。そこで連合は第二の要求、フィデリティに対してのダイベストメントを呼びかけることを今後の運動の中心の目標としていくという。今後も#Unmaskingfidelityキャンペーンに注目していきたい。


【参考】
[1] https://readsludge.com/2019/02/19/americas-biggest-charities-are-funneling-millions-to-hate-groups-from-anonymous-donors/


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