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頻回のコールが鳴り止みました

1日に100回以上のナースコールを押すJさん。

浅草出身の80代女性。入居前情報では、学歴が高く英語が堪能で、後に夫となる大学教授の秘書をしていたという。

ご家族によると「承認欲求が強く周囲が振り回される。次男はそれが原因で疎遠になっている」とのこと。対応が難しそうな性格が伺える。

入居されてから、実際にナースコールは頻回で「ティッシュペーパー取って」(届くのに)、「水が飲みたい」(自分で飲めるのに)、と要望が多く、依存が強い様子がみられた。

気分転換に傾聴ボランティアを利用したり、コーラスの会に参加したり、ご家族と外食の機会を作ったりしてみたが、夜間のコールも多くあまり眠れていない事も問題だった。

よくお茶を飲む方で、記録を見てみると1日に2500mlは飲んでいた。そりゃあ夜間も頻尿でぐっすり眠れないだろう。

水分を少し制限してみようか、と話題にあがった頃、スタッフの1人が共用のフリースペースにお連れした。

そこで新聞を読み、居合わせた入居者とお喋りをしたところ、その後毎日、数時間をフリースペースで過ごすようになった。

フリースペースへ行くために、徐々に車椅子を自分で操作し始め、エレベーターにも一人で乗れるようになり、行動範囲が広がった。

居室で過ごす時間が少なくなった事から、お茶の摂取量が減り、排尿回数も減り、夜間はコールなく熟睡できるようになった。

自分で行動できることで自信がつき、漠然とした不安がなくなったようだ。

最近は「私がここで英会話教室を開いてもいいのよ。」とポジティブな発言があったり、逆に「浅草に帰りたい」と寂しがったりすることもある。
しかしナースコールは確実に減り、必要な時だけ押してくれるようになった。

不安や自信のなさの現れ方は、個性が出る。この方のように「依存」としてだったり「引きこもり」だったり、「帰宅願望」「拒食」もある。

自尊心を満たす、なんて言うと難しそうだが、自分のタイミングでやりたい事ができる、これだけでこの人の生活は一変した。

職員側としては、目先の事にとらわれずに(今回で言えば水分制限をしてみようかではなくて)、生活全般に目を向けることをまず考えたい。ヒントは本人の歴史的・社会的背景にきっとある。

今回はフリースペースで過ごすことで、マズローで言うところの社会的欲求、承認欲求を満たして、自己実現まで辿り着けそうだ。
英会話教室が開かれる日も近いかもしれない^^



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