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老人ホームの居室に監視カメラをつける夫③

夜勤帯での出来事だ。

ある職員が、全く言うことを聞いてくれないAさんに対してストレスを爆発させた。
居室で排泄の介助をしている途中で本人に向かって「お前なんか死ね!!」と叫んだのだ。
そのスタッフに同情すべき点があったとしても、もちろん許される行為ではない。

そして、もちろん夫も一部始終をレンズ越しに見ていた。翌朝、夫から施設に連絡があり発覚。その職員も事実だと認め、施設を退職した。
この件で、施設は本人と夫に対して再発防止策をあげて謝罪したが、施設と夫との力関係が目に見えて変わったのはこの頃だ。

夫の監視は続き、起床時間がいつもよりも1時間遅いと施設にクレームの電話が入り、排泄介助の時間がイレギュラーだと理由を問い詰めてきた。
ほかの入居者の状況もあるので、毎日同じ時刻に同じケアは難しいと伝えても、出来ないなら理由を明確にしろ、と引かなかった。

カメラの1台はオムツが置いてある一角が映る角度に合わせてあった。オムツを監視してどうするのだろう、と当初は疑問だったが、使用したオムツの枚数と残数を確認するためだったようだ。夫はAさんの身体を心配するよりも、全てを自分の管理下に置きたいという意思を表し始めた。

そして、Aさんの病状が進行し自然排尿が難しくなってきた。トイレに座らせても、なかなか尿が出ないのだ。初めはスタッフが手で軽く腹部を圧迫すれば出ていた尿が、押しても何時間も出ない。

続く

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