見出し画像

私が考える老人ホームの選び方

一般的にまずは立地、そして価格帯、介護サービスの有無、医療行為が必要な場合に対応ができるか(24時間看護師がいる施設もある)、面会や外出の自由度、この辺りが最初の条件だろう。

コロナ禍を引きずって、いまだに面会を制限している病院や施設も多いから、頻回に面会したい場合は確認が必要だ。

もちろん上記の条件は譲れない場合が多いだろうが、本人にとって大事なのは日々の生活を気持ちよくできる事だ。ソフト面で私が考えるチェックポイントを以下にまとめた。

▫︎食事は美味しいか
うちの施設の食事は「口に合う」と答える人は3割くらい。「まあ贅沢は言えないからね、大丈夫よ」が3割、「美味しくない」「イマイチ」を合わせて4割といったところ。
全員の口に合う食事は不可能だろうが、うちは外部の業者に委託していて、私もランチに同じものを頂いている。正直に言うと、一般家庭料理レベルだと感じている。
食へのこだわりが強い人なら、事前に試してみるといいだろう。見学を申込む際に試食が可能か聞いてみる事をオススメする。

▫︎入居者の衣類が汚れていないか
よくあるのは食べこぼしによる襟元の汚れ。
「汚れたのは知っているが忙しくて更衣できない」か「汚れているのを知らない」か「汚れたのは知っているが、更衣しないのは通常」のどれかだろう。
どれにしても介護スタッフの手が足りない事が考えられるし、教育が行き届いていないという事だ。これは見学時にこっそりと見れるのでオススメのチェックポイントである。

▫︎おしゃべり相手はいるか
同年代の話し相手がいれば、それだけで楽しい時間を過ごせるものだ。気の合う人がいれば尚良い。同年代の入居者が多い方が、仲良くなれる人がいる可能性も高い。見学時に聞いてみると良いだろう。将棋や麻雀が好きならば、対戦相手がいると格段にQOLは上がるはずだ。

▫︎スタッフは親切か
スタッフが親切かどうか、これは挨拶がきちんとできるかで見極める。立ち止まって笑顔で挨拶してくれるスタッフが多ければ、接遇の教育が行き届いている。見学者に笑顔を見せられるなら入居者にはもっと見せているはず。介護スタッフは見学者にいい顔しても何の得もないのだから。
残念ながら、子供をあやす様な言葉遣いの介護スタッフも未だに生き残っている。時代に合った接遇をする意識がないのだろう。どの業種も同じだろうが、熱心に勉強をしてレベルアップしていく人もいれば、とりあえず目の前の業務をこなせば良いんでしょ、という態度の人もいるのだ。普段の言葉遣いもぜひチェックして頂きたい。

▫︎季節の行事やお出かけイベントはあるか
お出かけイベントは外出できる数少ない機会だ。家族が面会に来てくれても、車椅子の人を遠くまで連れ出すのはハードルが高い。施設内に広い庭や屋外の散歩コースがあれば良いが、立地によっては難しいだろう。
イベントで外食やショッピングに連れ出した時は、本当に嬉しそうな表情を見せてくれる。自分で選んで買い物をする事は、私たちには当たり前。その機会を失うことが、自己実現の欲求が満たされない日常になることに、気付いてあげたい。

▫︎1日のスケジュール
起床から就寝まで、何をして過ごすのか知っておいた方がいい。うちの施設では個別と集団リハビリがそれぞれ週2回ずつあるが、リハビリのない日は何をして過ごすのか、施設の差が大きく出るところだろう。
入居者を楽しませたいという考えで色々なレクリエーションを実施している施設もあれば、YouTubeで体操の動画を流しっぱなしの施設もある。
YouTubeが悪いのではない。入居者から懐メロのリクエストがあった時は直ぐに見せてあげられるし、一緒に歌って皆んなで盛り上がるのも一興だ。
介護スタッフは食事や排泄の介助で毎日手一杯。その上レクまで…となれば動画を流しっぱなしにするのも理解できる。そこを超えてレクを考えて実施してくれるスタッフがいるとしたら、入居者の尊厳をよく理解している貴重な人材だ。そういうスタッフがいると良い影響が周りにも広がって、良い施設になっていく。

建物のハード面はもちろん大切。でも一番は「尊厳を大切に考えている施設」だと思う。施設長が強い意志で入居者の尊厳を守り、それをスタッフに教育し、施設全体に浸透する様に努めている…そんな場所で過ごして頂きたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?