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コーヒーストーリー『いつもの人』

  《いつもの人・その1》

うん、やっぱりね…、
コーヒーショップには、
女の子がいる方がいい。

その方が、
コーヒーもグッとおいしくなる。

別にナンパしようとか
そういうんじゃないんだ。

いるだけでいい。そこにね。

ボクがいつも行く店にも、
カワイイ子がいる。

小学校の時の初恋の人に、
ちょっと雰囲気が似ていて、
清潔感のあるいいコなんだ。

しょっちゅう行ってれば
当たり前かも知れないけれど、
「コーヒー」って注文すると、
いつの頃からか、
ちゃんといつものやつをいつものように
ブラックで出してくれる。

他の子の時は、
マニュアルだか何だか、
いちいちカップのサイズを聞かれ、
ソーサーに余計なスプーンまでのせられる。

うれしいね。
少なくとも彼女の意識の中のボクは、
“いつもの人”なんだ。

コーヒーを飲みながら、
何かモノを書いていると、
時々視界の中に彼女が入って来る。

イヤホンから頭の中に流れ込む、
来生たかおのメロディーのような、
彼女の優しい笑顔、その爽やかさ…。

もし視線が…3秒合ったら…、

もしそんなことがあったら、
間違いなく Fall in love…
だネ。

          End


  《いつもの人・その2》

(ズィーーーーン)

ガラスの自動ドアが開いて、
店内に一歩足を踏み入れた時、

ボクは、
カウンターの中の彼女の顔に、
笑みが広がるのを見た。

今日はもう、
ボクが現れないと思っていたんだね。

それでも、
いつもと違う時間にボクが来たんで、
ちょっと驚いて、うれしかったんだね。

…って、勝手にそんな気がした。

「コーヒー」

注文はもちろん、いつものやつ。

「ありがとう」

いつものキミの笑顔と、
おいしいコーヒーに…カンパイ!


          End



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