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Sampling life

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「アイデアとは既存の要素の新しい組合せ以外の何ものでもない」
ジェームス・W・ヤング

今回のテーマはDJにはおなじみ、サンプリング。サンプリングとは、既存の音源から音(ビートやベースライン)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法をいいます。

サンプリングは既存のものから新たなアイデアを生む手法

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サンプリングを単に音作りの手法と捉えてしまえばそれまでですが、サンプリングを理解すれば、より深く音楽を楽しむことができます。DJ特有のスキルですが、サンプリングの考え方自体はスケートカルチャーにも、美味しいコーヒーを淹れるためにも、仕事にも効くと思います。

筆者自身もサンプリングにドハマりした経験があります。サンプリング辞典を片手に未知なる曲を探していくのが楽しかった。好きな曲を辿っていくと、JAZZに到達するんだなとか。JAZZなんてオジサンの音楽だと思い込んでいたので、初めてJAZZの魅力に気づき、音楽の新たな扉が開けました。

サンプリング的な聴き方も自然とするようになりました。どういうことかというと、ビートやベースライン、ボーカルを分解して聴けるようになるのです。この曲のこの部分のビートとあの曲のあのボーカルをループさせたら面白そうだなと、聴き方が変わりました。

と同時に、90年代の東海岸のヒップホップが一番カッコイイと信じて疑わなかった自分にとって、サンプリングによって他のジャンルを聴き始めたことは大きかった。前述したJAZZはもちろん、ROCKやSOUL、FUNKなど。ひとつのジャンルに固執せず、複数のジャンルを越境し始めました。

サンプリングの魅力にどっぷりつかってしまった筆者はついにサンプラー付きのシンセサイザーを購入します。ネタを組み合わせてトラックメイキングを始めました。ネタを探し、抜粋して、編集して、組み合わせる、この繰り返しで曲を作っていきました。40曲程を製作しました。

この経験は仕事にも生きています。専門領域以外の要素を組み合わせて、一つのアイデアを提案する。仕事とは直接関係しない、哲学、自然科学、音楽、歴史など様々な要素(ネタ)を組み合わせて、営業やマネジメントに生かしています。意識的にサンプリング的な仕事の仕方を心掛けています。

サンプリングの歴史

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サンプリングの魅力の背景にある、歴史を紐解いてみましょう。

サンプリング初期
1979年、シュガーヒル・ギャングはシックの「Good Times」をサンプリングした楽曲「Rapper's Delight」を発表しました。これはブレイクビーツを使用した世界初のヒット曲で、ヒップホップという新たな音楽ジャンルを発展させる原動力となりました。

WHATからHOWへ
1980年代RUN DMCのヒットににより、ヒップホップはよりメジャーなものに。この頃から、サンプリングが特別な技法とは言えなくなり、また法的リスク(著作権)も高まるに連れ、音楽家達は「何をサンプリングするか」よりも「どのようにサンプリングするか」を工夫し始めました。

1992年頃、DJプレミアはサンプリングした元ネタをさらに細かく切り刻み再構築する「チョップ (chop)」という技法を開発。ギャング・スターやナズ、ジェルー・ダ・ダメイジャなどの作品群をプロデュースしました。元ネタが分からない程にサンプリングされるのが粋な時代でした。

サンプリングかパクリか
サンプリングが一般化するにつれ、これは著作権の侵害にあたるのではないかという声があがり始めました。1991年ビズ・マーキーはAlone Againでギルバート・オサリバンによる同名の楽曲をサンプリング使用しました。ビズは訴訟を起こされ、敗訴。サンプリングかパクリかの線が引かれたのです。

巨人の肩にのる

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サンプリングの過程で大量の音楽を聴き、その中から一部分を厳選して抽出する。それにエフェクトをかけたり、チョップしたりして加工し、全体的に調和のとれた作品に仕上げる。まさに料理と同じで、知識とセンスとスキルの総合格闘技といえます。

アイザック・ニュートンは同じ科学者であるロバート・フックへ当てた手紙の中で、「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。(If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants.)」と書いています。

これは現代の解釈では「先人の積み重ねた発見(成果)に基づいて、新しい発見を行う事」とされています。新たな成果は、過去の成果や知識の上で生まれるという考え方とも言えます。何度も同じことを一から繰り返す「車輪の再発明」の対極にある言葉と言っても良いでしょう。

サンプリングは巨人の肩に乗ることといえます。先人の積み重ねをベースに時代にあった新たな価値をつくる。このスタンスはDJはもちろん、カルチャーを愛し、カルチャーをつくる私たちにとってとても重要な示唆だと思います。

サンプリング入門3曲

サンプリングの魅力を知って頂くために、3曲を厳選しました。

KOHH feat.LOOTA - My Last Heart Break

日本が世界に誇るラッパーであるKOHHが宇多田ヒカルをサンプリングした曲です。まずは日本人による日本人の曲をサンプリングした曲を是非聴いて頂きたいです。

Kanye West - Stronger

カニエ・ウエストがダフトパンクをサンプリングした曲です。この曲の凄いところは、過去の名曲をサンプリングしながらも、これから流行るであろうエレクトロミュージックをいち早く取り入れた点。この数年後にトップチャートはエレクトロミュージックが席巻します。まさに温故知新。

Pete Rock & CL Smooth - They Reminisce Over You (T.R.O.Y.) 

筆者はこの人に憧れてサンプラーを買ったといっても過言ではありません。この印象的なイントロもサンプリングなのです。90年代ヒップホップ黄金期の空気を感じる太いビートに、JAZZYなメロディラインがたまりません。サンプリングの最高傑作。

INFO

“We provide the best of beauty product.”をテーマにリサイクルとリユースにフォーカスした木を無駄なく使い、様々なシチュエーションに合ったオリジナルファニチャーを創造するプロダクションです。ミニマムでシンプルな木目がアクセントとなるアイテムでラインナップ。様々なフルオーダーにも対応して、名古屋のファクトリーから直接全国のユーザーに届けています。