富永顕二

小説 / 俳句 / 写真

富永顕二

小説 / 俳句 / 写真

マガジン

  • 令和怪談 百物語

    時代は令和と移り変われど、秘かに語り継がれる本当にあった恐怖体験。 これは筆者が実際に取材をし、書き綴る、この世のものならぬ物語。

  • 映画

    鑑賞した映画の感想

  • 酔狂日記

    自動書記的な掌編集。

最近の記事

『川柳EXPO』 の感想

2023年8月10日に私も参加させていただいた、投稿形式の川柳アンソロジー『川柳EXPO』のペーパーバック版がAmazonで販売を開始されました。 https://qr.paps.jp/TmThe 私は川柳をはじめてから、まだ1年ほどの初心者ですが、川柳の鑑賞眼を養う目的もあり、感銘を受けた句についての感想を記したいと思います。 川柳への理解がまだ未熟なため、句の作者の方には不快に思われる内容などありましたらご対応しますので、ご連絡をいただければ幸いです。 下記に、Ama

    • 廃旅館のおじさん

       肝だめしの感覚で廃墟探索に行く若者は多い。これは筆者の友人O君が二十歳前の時の話である。  O君は仲間たち数名と深夜に連れ立ち、岐阜県K市のはずれにある、有名な心霊スポットに車で向かった。随分前から放置されている廃旅館が山奥にあり、心霊の噂も絶えないらしい。  細い山道をゆっくりと昇り、目的の廃旅館の手前で停める。脇に草が高く生い茂った道を少し歩かなければ玄関まではたどり着けない。  若い男女のグループ。O君たちは懐中電灯で道を照らしながら歩く。腰の辺りまで草が伸びているた

      • 映画レビュー:『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021年)

        〔作品を鑑賞した後に読まれることを推奨します〕 『エヴァンゲリオン』の25年には、もちろん私的にも様々な出来事や来し方が絡まり合っているのであり、そのような自分語りを書いてはいけない。 宗教的なモチーフを解釈して、あれこれと推測するのも正しいとは思わない。それは作品の設定上、「神殺し」の物語という型を用いているに過ぎないからで、聖書との対応を考察したところで、それは陰謀論めいた、統合性失調症的な混乱を招くだけ。 『エヴァンゲリオン』はテレビ放送当時、斬新な演出で話題にな

        • 映画レビュー:『花束みたいな恋をした』(2021年)

          〔作品を鑑賞した後に読まれることを推奨します〕 坂元裕二作品に最初に触れたのは確かドラマ『カルテット』からだったと思う。坂元作品のファンとしては歴が浅い。NOOB、新人、ニワカではある。 独特なセリフ回し。淡々として感情を押し殺したところに、むしろ、感情が滲み出してくる。滲み出さざるを得なかった感情とも言える。そこに坂元作品の魅力が端的に表れていると思っている。抑制と破綻のバランスが堪らないのだ。 今作の予告ツイートをTwitterのタイムラインで見かけた時、最初は坂元

        『川柳EXPO』 の感想

        マガジン

        • 令和怪談 百物語
          1本
        • 映画
          2本
        • 酔狂日記
          12本

        記事

          Medium

          第四区画のビル群の隙間に存在した、偶々出来てしまったかのような空間で境井は横たわっていた。 ヒューヒューと鼻腔を抜ける呼気の音が主張している。 境井は俺が与えた電子媒体──JDAをエミュレートして脳内で再現する類の──を端子に繋いだ直後、肢体を痙攣させて倒れた。 何故だ。JDAなど無害な旧世代の媒体に過ぎないはずなのに……。 今まで何度となくこの電子媒体を味わってきた。プラグを介することで遺伝子に予測できない影響を与える可能性はあるものの、基本的には大した害はないはず

          Yellow Mellow Magic

          高速道路を走らせる車の中で歌ってた 大声で吐き散らすラップは、まるで鎮魂歌だった クラッシュしても構わないと、アクセルを踏み込めばハンドルを握る手は汗ばんだ まるで往年の総合格闘家 ピッタリケツに張り付くバカ野郎、モーテルの看板を横目にスピードはピーク、さっき抱いたばかりの女郎の匂いを置いていく 「『十分』と『充分』の違いは分かるか? 分かんねェのか? 知らねェなら、勉強が必要だ」 上司は臭い息を撒き散らしながら、と言っても、リモートでやってるんで臭いなんて嗅げや

          Yellow Mellow Magic

          *arionette

          金縛りのように少女のダンスが目に焼き付いた。 タネダは楽器を弾かない。弾かずに弾いているように見せ掛ける事にかけては、習熟の度合いを日増しに増している。 今池の夜に、まだ平日だというのに、ヤスオは錠剤など齧っていた。 「おい、ヤスオ君はよォ、そういうのもうやめんじゃねェのかよ。ポリポリリーマンが食ってるヤツじゃねェんだからよ」 「何だよ、それ、コーラと混ぜたらシュワッてなるヤツかよ」 「違うよ。飲むと痩せるみたいなヤツ」 ヤスオが齧っていたのはカフェインの錠剤でし

          I.P.A.

          スマートフォンから流れている鳥の鳴き声は地下で聴くのにも関わらず本当の鳥が鳴いているかのような錯覚をもたらした。 ヤスオは噛み砕いた錠剤の安寧の中にあって、光る画面をタップする。 酔い潰れたヨウジの嗚咽、ぬるくなってしまったハイネケンをヤスオは飲み下す。 どうしてクラブに売っているビールはハイネケンと決まっているのだろうか。 先週、クラフトビール専門店で飲んだIPAは西海岸から輸入したと店員から聞いたが、とても美味くて西海岸の暮らしというものを羨ましく思ったのだけど。

          AVENGER

          やべェ、ひどい寝坊をしてしまった。 赤青白のストライプの歯磨き粉が宙を飛ぶ。焦るあまりにチューブを力一杯握り締めてしまった。 片手に歯磨き粉、もう一方の手に髭剃り。乱雑に滑らせた髭剃りの刃が頬の肉を削いで、鏡の前の顔は血だらけ。 髭剃りを放り、咄嗟に歯ブラシに持ち替え、宙を舞う赤青白のストライプの歯磨き粉を素早くキャッチする。まるでプロボクサーのジャブみたいに的確。 安堵した瞬間、頭上の棚からカミソリが落ちてきた。眉間を掠めたが、皮一枚を見切って避けてみせる。

          GO

          「あんたんとこのさァ、家の角のトタン屋根のとこあるじゃない。あそこにおっきな蜂の巣ができとるよ。今度会った時に教えようと思ってな」 同じ町内に住むおじさんにそう言われ、次の日の朝に自宅の裏に回って見てみると、確かに人間の脳味噌ぐらいの大きさの蜂の巣がぶら下がっていた。 近寄ってみると、蜂の巣にはスズメバチほどではないものの、大ぶりな蜂がビッシリとたかっており、寒くなってきたからかいずれも微動だにせずにいる。 おじさんは、「強力な殺虫剤で皆殺しにするんだなァ。それも夜にさ

          温泉ハウス

          町の集会場の向かいにあるアパートの窓から、大きな音量でボン・ジョヴィの音楽が聴こえてきた。 古いアパートはアジアからの若い出稼ぎ労働者の巣窟になっているらしく、外から見える部屋の扉一面に黒いペンキで外国語のメッセージが書き殴られていた。 開け放たれた窓に張り付いた網戸は派手に破れており、子どもの頃に家族で旅行した、シンガポールの夜市で見たようなTシャツが枠にかけて干されている。 3ヶ月前に引越したばかりの町は大きな川に挟まれた輪中地帯にあり、海抜0m以下の土地に家が建っ

          温泉ハウス

          [ 俳句 140629 ]

          [ 俳句 140629 ]

          [ 俳句 140627 ]

          [ 俳句 140627 ]

          Infinite reproduction

          受話器を放り投げた途端に変容。赤い受話器は放物線を描いて落ちていく、捻るような力で回転するため、背面がのぞく、プラスチックの表面に朝日が反射して光ってみえる、コードがらせん状に動いているのが意識される。 配管勤務に日々の明け暮れ、自分が或る通過儀礼をクリアしてないんじゃないか、と思って、思い返してみたりする。 概念的に三人いる自分が悪意を持った存在に接触、しないように、暫定的に制限された行動のなかで、いかに楽しいと思えるか、思わせられるか、だとか、疑問に思うとそこからキノ

          Infinite reproduction

          [ 俳句 140619 ]

          [ 俳句 140619 ]

          [ 俳句 140618 ]

          [ 俳句 140618 ]