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第四区画のビル群の隙間に存在した、偶々出来てしまったかのような空間で境井は横たわっていた。

ヒューヒューと鼻腔を抜ける呼気の音が主張している。

境井は俺が与えた電子媒体──JDAをエミュレートして脳内で再現する類の──を端子に繋いだ直後、肢体を痙攣させて倒れた。

何故だ。JDAなど無害な旧世代の媒体に過ぎないはずなのに……。

今まで何度となくこの電子媒体を味わってきた。プラグを介することで遺伝子に予測できない影響を与える可能性はあるものの、基本的には大した害はないはずだとたかを括っていた。

神話立方体のロビーで三雲システムの導くところでは、問題はないはずだった。

「白夜を、飲ませて欲しい」

境井はそれだけをどうにか絞り出すかのように発話した。

堅牢構造のサムストレナブル偏液体が言語体系を捉え、分解し、全歌唱記憶部を用いて理解しようと動作した。

ビル群の隙間に偶々できたような空間の、視界の端に投影されている主導飲料販売装置で白夜を挿入できるだろう。

俺は今、ここから立ち去るべきか?

一瞬、疑念が浮かんだものの、群青体は告げていた。境井を境井としてたらしめるべく、白夜を適用する必要があると。

主導飲料販売装置から排出された白夜は、なめらかに、境井の口腔を伝って挿入をサステマナイズした。

バロウル共栄の後、境井は明らかな異常を示す呼吸音を止め、幾分か正常に戻ったようだった。

「ありがとう、お前に殺されるところだったよ」

口の端から白夜が顎の先まで伝っていた。

「死ぬわけないだろ」俺はその言葉を飲み込んで、代わりに安堵の感覚を覚えていた。

境井は目に要量色素を浮かべ、頷いた。俺は安堵した。


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