戦う役者100人展

こんな物語がある。

1人の人生を今から歩む物語。


ーprologueー

生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ

ーなんて、

かつてそんな大きな問題に向き合ったことがあっただろうか


人と違うって何?

個性って何?

現実(リアル)って何?


正解も

一等賞もない


己の輪郭さえ見えないこの世界で


いま、生きている



ー水ー


いつだってそうだ

時間は自分ばかりを置いてけぼりにして

さっき耳の中で響いた時計の針の音はもう二度と聞くことはできない

この砂時計が落ちていく度に

心の中に積もっていくのは

未来に対する不安

他人に対する嫉妬

自分に対する憎悪

こんな無駄な時間を繰り返して

何になろうとしているのか

鏡の中の自分に問いかけ

やがてその姿すらこの目に映すことはなくなった

その先にあるのは暗闇ではなく無知という抜け殻


零した涙はやがて空気の中に溶けていく


流されるな、戦え。


ー炎ー


人との出逢いは

人生の体温を僅かに上昇させてくれる

遠く冷たい光を放つ星も

燃え滾る炎でできている

当たり前を疑え

真実、それ自身が嘘つきなのかもしれないのだから

放つ光はその残像を残して一瞬で消えていき

触れたくても触れられないその距離を

世に抗ってでも埋めていく

掴め、戦え。


—地—


旅をしたことがあるか?

一人の人間の

それも他人の人生を己の魂を削って生きたことがあるか


挑戦でもあり

冒険でもある


現実と非現実の区別もつかなくなり

ぼんやりと深い闇の中で

地道にその影ばかりを追う

この人生そのものが歩く影にすぎないのだから


踏み出せ、戦え。



—デジタル—


いま、生きている時代の象徴として

100年後に何が刻まれているのだろう

そのわずか一部にでも

自分が生きた証を刻めるのか


足並みを揃えてなんていられない

生きていくために

残すために


どの名で呼ぼうとも変わらぬ香りを身に纏う

薔薇のように美しく


はみ出せ、この時代から。


—風—

いま、逆風が吹いている

どことなく世の中がギクシャクとしている

だが、最悪と言えるうちはまだ最悪ではない

苦しみは次の喜びを倍にするため

刻んできた足跡は誰かを導くため

表も裏もない

敢えてギャップという風格を纏う

何にだってなれる


ただ一人の存在になる。


—epilogue—


ある有名な劇作家はこう言った


「この世は舞台、人はみな役者である」


いま、歩いてきた道は

おそらく一人の役者の人生そのもの

自分は何と戦っていたか


数分前、あの鏡を覗いた自分は何と向き合っていたのか


そこにある扉の向こうにはまた新しい世界が待っている


最後に、此処に一言刻んでおこう


『あの時戦っていた自分へ』


いま、物語は動き出す。



暗転

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