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『Darwin Project』は自然淘汰できるのだろうか~今後のバトロワのあり方を考える~

バトロワの新たな顔になれるか

 今や新たなゲームジャンルとして日々ゲーム業界や、配信業界を盛り上げているバトルロワイヤル系ゲーム、通称『バトロワ』は今やシューターのジャンルに囚われず、多くのゲームジャンルと融合された作品を作っている。

 何故、そこまでバトロワの需要が一気に高まったのかというと、『PUBG』で肥えたPCシュータープレイヤーの舌を満足させ、『Fortnite』や『APEX Legends』で一般的なコンシューマープレイヤーに多く浸透したからだろう。

 では、今後のバトロワの在り方はどうだろうか、ここ2年程で一気にプレイヤー層を拡大、そしてEsportsにも採用されるほど市民権を得たこのジャンルは、果たして次にどういう一手を出せば、プレイヤーを満足させられるのだろうか。
 

 そんな「バトロワの顔」を取る為に色んなクリエイターが日々新作バトロワを出している。

 ルールもある程度決まっているゲームジャンルの為、個人スタジオの開発が多く、コンスタントに様々な作品が出される。極端な話、マップと武器だけおいとけば、あとは指定された人数が最後の一人になるまで戦うだけのゲームであり、そこに開発者の一ひねりさえあれば、もうそれは独自性のあるバトロワになる。

 今回紹介する『Darwin Project』もその一つだ。

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"名倉やないかい!"と言いたくなる紹介画像。

 このゲームを作っているのは、Scavengers Studioという30人ほどのチームで開発しているスタジオ。

 先日早期アクセスを終え、無事正式リリース、同時にコンシューマーでの配信も始め、一気にプレイヤー層の拡大を狙っている作品だ。

 このゲームは俗に言う近接バトロワ、というもので、プレイヤーに持たされるのは斧と、弓のみ。プレイヤーは戦いの中で、弓矢や、罠、防具をクラフト、固有スキルのレベルアップをし、最後の一人を目指すゲームである。

 プレイヤー数も10人と少なく、近接攻撃がメインになる為、一人一人との戦いをじっくり楽しめるようなゲームデザインになっている。

 そんなこのゲーム、『Fortnite』以降に出たバトロワ作品の中ではかなりクオリティが高く、正式リリースもあってかアクティブユーザーも比較的安定している作品になる。

 だが、このゲームはまだバトロワの顔になるには難しいだろう。

入れすぎた独自性とかみ合わないゲーム性

  近接バトロワという発想は非常に面白い、過去ゲーム界で一世を風靡した『The Culling』のような駆け引きの面白さと、アビリティや罠の要素でさらに戦いに緊迫感を生み出し、一対一の勝負が盛り上がると思わず高揚し、声が漏れだす。

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 さらに最近のアップデートで、クラス制を導入、空を自由に移動できるジェットウイング、早い速度で高速移動が可能のグラップルガントレット、索敵や、遠くのアイテムを取ることができるドローンなど、戦いの多様化もされていて非常に面白い。

  だがそんな近接バトロワにも難点がある。それは、プレイスキルを必要とする点だ。このゲームは近接戦闘がメインの為、相手に接近をして攻撃を当てるのが戦い方だ。なのでPUBGのように地の利を得ることができず、Fortniteのように、建設で自分の土俵に持ち込んで逆転することはできないのである。

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  こんな建築をバトル中に行えるこのゲームのカジュアルさには驚く。

 このようなデザインになると、どうしても上級者に対して初心者は勝てないし、逃げて態勢を立て直しても、ゲームスキルで結局負けてしまい歯がゆい思いをしてしまう。

 そんなマンネリを解決させるために用意された弓も、早い移動速度の前では、よっぽどAIMに自信がある人でない限りは当てることはできない。
 そんな弓矢も最大8本しか持てなかったり、外した弓矢は再度拾うことが出来るため、相手を有利にしてしまう可能性があったりと、難点が多い。

 そんなこのゲームにも逆転の要素がある。それは11人目のプレイヤーであるディレクターの存在だ。

 ディレクターは常にゲームを観戦者側で見ており、ボイスチャットでプレイヤーと会話、エリア収縮する場所を決めたり、特定のプレイヤーにアイテムをプレゼントしたり、回復したり、逆に"賞金首"のようにみんなから場所が見れるようにすることもできる。

 プレイヤーはそんな神のような存在であるディレクターにVCで会話をし、施しを得て戦いで強くなるというものなのだが、簡単に言えば神に命乞いさえすれば初心者も勝てるよ!というもので、一対一で戦う真剣勝負を楽しむゲーム性にあまりかみ合っていない。

 さらにこのディレクター、チーミング(仲間うちでの贔屓行為)やゴースティング(嫌いなプレイヤーへの嫌がらせ)が多く、だいぶ機能を制限されたものの未だにそのような事をするプレイヤーはいる。

  このように、様々な独自性を持っているもののあまりうまくゲーム内で噛み合っていないのだ。

 プレイヤースキルの問題は個々であげるしかないものの、ディレクターのチーミングやゴースティングなどでやられたらたまったものじゃない、仮にディレクターがこっちの味方をして大逆転!というのも、何か自分のプレイヤースキルで勝ったような感じがしない。

 独自性があるからこそ面白いゲームがその独自性のせいで互いの魅力を殺しあっているのだ。

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マップ内に点々とあるデバイスで、敵の位置が表示されるシステムは非常にいいと感じた。

  "奇跡"がこのジャンルの一つのキー

 バトロワにとって、逆転というのは非常に重要な要素である。PUBGでは、終盤の収縮ポイント合戦に勝ち、一気に地の利を得られた瞬間や、Fortniteの横にも縦にも広い戦闘範囲での機転を利かせた逆転などと、プレイヤーはその瞬間に天にも昇るような高揚感を得るだろう。

 そして、プレイヤー数が多いこのゲームでは、他プレイヤーの参入によって一気に戦況が変わるという事も少なくない、戦闘中背面からも敵が来て焦ったり、一つの建物に複数のプレイヤーが集まりしっちゃかめっちゃかになる瞬間など、このジャンルは様々な"奇跡"によって出来ているといっても過言ではない。

 では、このゲームはどうだろうか、人数は少なく、混戦する事もあまりない、というかゲーム時間のほとんどは採取やクラフトであり、終盤になるか賞金首イベントでも起こらない限りは混戦になるのはなかなかないだろう。

 肝心の戦闘もプレイヤースキルにかなり左右され、ここで言われている奇跡の要素に最も近しいディレクター要素も、プレイヤーが介入している為、人為的に作用することがほとんどだ。

 奇跡というのは、誰しもが思わず惹かれてしまうだろう、絶対に勝てないだろうと言われていた2015年のラグビーワールドカップでは、日本人選手の懸命なプレイにより、南アフリカに勝ち、ラグビーという競技を日本人に強く浸透させた。

 奇跡は人を惹きつける一つの魔法なのである。

 そんな奇跡になりうる要素を『Darwin Project』は一気に削って独自性を優先してしまった。

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ロビーでみんなで殴り合いしてる時の方が楽しかったりする瞬間もある。

 アイテムクラフトした場所や、自分が切った木から敵の場所がわかるシステムや、近接という硬派な内容から、非常にカジュアルなゲームデザインは非常に魅力的であるが、二つの大きい独自性がうまくかみ合わず、このゲームの問題点になっているのは非常に残念で仕方がない。

 今はまだ正式リリース直後なので非常に盛り上がっているが、このシステムが改善されない限り、このゲームが新しいバトロワの顔になることは非常に難しいだろう。

  Scavengers Studioは今後どのようにこのゲームに肉付けをし、このゲームを自然淘汰させれるのだろうか、非常に気になる所である。

 

 


 

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はらう/Tamio Kimura
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