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デジタル広告はアカウントエグゼクティブの“質”を低下させた


■今、「広告主」と「AE」とのコミュニケーションが希薄化している


 2021年、ネット広告がマス広告(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)を初めて上回り、話題を集めた。ここからもわかる通り、今はデジタル広告が主流の時代だ。

 デジタル広告によって、広告の効果は数字で可視化できるようになった。これは素晴らしいことだ。だが、それによる弊害も生まれているように思える。

 たとえば、広告主とアカウントエグゼクティブ(AE)とのコミュニケーションの希薄化がその一つだろう。従来に比べて、両者のコミュニケーションに「余白がなくなった」と感じる。

 これまで主流だったマス広告は広告効果があいまいで、その結果を検証するためにアンケート調査やデプス調査が行われていた。ここでは数字で説明できない部分も多く、それゆえ「考える余白」があったと言える。この余白をすり合わせて次の広告に生かす。そのためにAEと広告主は、より密にコミュニケーションを取っていた。

 しかし、デジタル広告が主流になった今、ほぼすべてを数字で語れるようになってしまった。ここには「考える余白」が少なく、それが広告主とAEとの間のコミュニケーションの希薄化につながっているように思えるのだ。

■「課題」よりも「数字」を追いかけるAEたち

 それはつまり、AEが「表面的な数字」にばかり捉われて、「真の課題」を探ろうとしていない状況だとも言える。広告主にとって「誰も課題を見つけ出してくれない世の中」になってきているのではないだろうか。

 本来、AEの仕事とは広告主の要望の「裏側」を読み解くことのはずだ。「なぜその広告を打つ必要があるのか」「そもそもなぜその商品は売れてないのか」。私のまわりのAEを見ていても、こうした課題抽出に目が向かなくなってきているように感じている。

■「課題」を考えられる企業が“広告勝ち組”になれる

 AEはもちろん、広告主もこの状況になれてきてしまっているのかもしれない。広告主サイドも「ホームページのアクセスが増えた」「ツイート数が増えた」など、数字の結果に一喜一憂していないだろうか。

 でも、考えてみてほしい。ツイート数が増えれば本当に商品が売れるのか? ホームページのPVが少ないからその商品は売れないのか? そもそも売上が10%足りないという問題がある場合、その商品が10%の人々の課題を解決できていないということなのだ。 

 本来なら、「本当の課題とは何なのか? そのためにメディアをどう使うべきなのか?」と考えるべきなのに、AEも広告主も目先の数字に捉われてしまっている。

 これは、数字化による弊害とも言える。AEはもちろん、広告主側も、この弊害を踏まえ、より自社広告の課題について真摯に向き合うべきだろう。「PVが増えた」「商品のツイート数が増えた」といった数字の効果は社内評価にも直結しやすくわかりやすいが、その上流には「真の課題」が必ずあるはずだ。それをしっかりと考えられる企業が、広告で成果を出せる時代になってきているように思える。


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